情報惑星 三  鬼りんご


情報惑星 三

      或ひは非螺旋展開の根拠

この吹雪が私の慟哭の記憶乱射でないのは不思議な静けさだ われわれが極微領域の瑣末な記述に憂き身を窶すのは精緻な解析が知を完うするとの妄想ゆゑではなく まして高精度測定が利を齎すがゆゑではない 全ての攷究は知の盲点を探査し信号化不能の非界の相を示顕する般若の自由要請の舞に過ぎぬ われわれが過度の抽象に奔るのは究極の知が超越的真理に照応するとの信仰ゆゑではなく 況や普遍化が象徴効果を高めるがゆゑではない 抽象の抽象化にねぢれる言語の正当な自己亀裂の裂け目から噴き上げる非情報の逆風に靡きちぎれることが知の存立条件なるがゆゑに過ぎぬ 逃げるな愚か者そこに留まれ 第1次情報が第n次情報にまで瞬間機能消費されるきらびやかな不連続循環連鎖界で情報の情報が情報に情報される 言の葉散り絶えたこの大夕暮れに化身し損ねはげしく髪を靡かせるとき誰が愛しい名を呼ばはずにゐられよう 何のために君は耳を有つか 信号とノイズと無音との錯綜様式を聴き取り無知体系の情報生産構造を仕留めるためではなかったのか げにこそこの深過ぎるあをぞらのゆがみが私の眼差しの重層記憶でないのは不思議なときめきだ おそらくは人として訪れた固有界をせめては人に似て旅しおほせたかつたものを 利用も所有も不器用なみぢかいステイの刻刻に発いては消えやまぬ色無き花火の静寂は さらば耀きの情報惑星 さらば欲望の刺青あでやかな情報族 さらば 胸痛む美しいひと



(「こどもだま詩宣言」対応  原文縦書き)


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