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コミックの電子書籍化が進んだ理由を考察する


史上最高の売り上げ

2023年のコミック市場は過去最大でした。出版不況と言われている中で、バブル期よりも売り上げが大きかったのです。
好調の原因は、グラフを見れば一目瞭然で電子コミックの隆盛です。

出典『出版指標 年報 2023年版』

紙のコミックとコミック誌は大幅に減少しているのに、それを補ってあまりあるほどに電子コミックが伸びているのです。
今の子供達は、週刊誌を買うのではなく、スマホで電子版を読んでいます。アニメや映画とのメディアミックスの影響もあり、累積販売冊数が1000万部を超えるメガヒットのコミックも続出しています。
小説業界から見ると羨ましい話ですが、電子化へ市場を移行するのに痛みが伴わなかったわけではないと思います。
「紙の方がマンガは迫力がある」「雑誌を販売している書店やコンビニに迷惑がかかる」など社内で葛藤があったはずです。
いろいろ調べて、気づいた点をいくつか記します。個人的な見解ですので、違っている点があったら教えてくださいませ。

場所を取らない

コミックはシリーズものが多く、紙の本で集めると結構かさばります。小説よりも早く読み終えるので、外で読むにはコミックは持ち運びが大変です。
可搬性の問題を解消するのが、電子書籍です。どんなにコミックを買っても、部屋が狭くなることはありませんし、何千冊でも持ち運びができます。
場所の制限がなく購入できる電子書籍化がコミックの売り上げを後押ししたと思われます。

無料アプリの充実

一部無料のコミックアプリを使っている人は多いと思います。「ピッコマ」や「LINEマンガ」「Kindleストア」がシェアを握っていて、アプリ利用者の多くはスマホでマンガを読んでいます。
通勤通学中に、スマホでコミックを読む風景は完全に定着しました。期間限定で無料にしたり、広告を見たら続きが読めるなどの仕掛けで多くの読者を集め、購買に繋げる手法がコミックの電子書籍化を加速させたと言って良いとでしょう。

スマホ・スマホ・スマホ

コミックの電子書籍化が進んだもっとも大きな理由はスマホにあると思います。指で画面をタップするスマホのインターフェイスがコミックのページを捲る動作と絶妙にマッチしています。
さらにスマホでマンガを読みやすくするウェブトゥーンと呼ばれる縦スクロールマンガが発明され、スマホ向けにマンガが作られるようになってきました。
メインターゲットである学生の生活が、自宅でも学校でもタブレットとスマホ中心に変わり、紙の本を読む習慣が急速に失われていきました。
スマホに対応できなければ、市場を全て失うほどに追い詰められた結果、好むと好まざるに関わらず、電子書籍に移行したというのが実情だったのではないでしょうか。
書店とのお付き合いや過去の商習慣を変えるのは大変だったと思いますが、そうするしかないほどに切羽詰まっていたのだと思います。

詳しい人がいましたら

商業デビューしたことをきっかけに、出版業界について調べてわからなかったことのひとつが、「どうしてコミックは電子書籍化が進んだのに、小説は進んでいないのか」ということでした。
今回は、小説が紙の本のままである理由ではなく、コミックで電子書籍化が進んだ理由を考察してみました。
僕が調べた限りの考察ですので、詳しい方がいましたら、ぜひ教えてください。

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