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【エッセイ】『魔法使いになる私へ』第4回「街コンは地雷密集地帯」

第4回「街コンは地雷密集地帯」

街コンの8割は地雷である。
そもそも街コンの料金設定に無理がある。
男性参加費5000〜1万円に対して、女性は無料のところが多い。金銭面でアンフェアどころか、「女性無料」という立場を利用してネットワークビジネスが紛れてるくらいだ。
経験上、街コンは玉石混交だから絶対に利用しないと決めている。

悪徳恋愛カウンセラーの蝶野に呼ばれた僕は、渋谷のハイスペック街コンへたどり着いた。
若い男女が大勢集まっていた。
当時は緊急事態宣言の真っ只中で、自粛生活が続いていたからみんな精神的に参っていたのだろう。
非モテっぽい男性が多い反面、女性はきらびやかな人たちが多かった。
わかりやすくいうと、いいね1000くらい貰ってるような人たち。
その時点でちょっと胡散臭い感じもするのだが。

連絡先を交換できた女性は5人。
その内のひとりとは、今月末に行われる麻布十番でのホームパーティーで会うこととなった。
もうひとりは音信不通。
残りの2、3人とはデートすることに。
早速、蝶野にお礼LINEを送った。
「よかったですね! しかも5人も!! 楽しんできてくださいね〜」

だが実際に女性と会ってみると、これはデートではなく商談だった。
たとえばある女性とデートした時、
「今コロナで大変じゃないですか? 副業興味ありません? ネットワークビジネスは最高ですよ」
「……」
「わたしアトピーだったんです。だけど、オーガニックにしてから完全に治ったんです! やっぱ健康大事ですよね。英二郎さんも始めてみませんか?」
「はあ……」
試しにスマホでそのオーガニックを調べてみると、なんと「○○オーガニック健康被害」という信じられない項目を発見した。
「これ、同業者の人間が嫌がらせで書いてるだけなんです。どこでもそうですけど、やっぱり競争社会じゃないですか? 相手の会社を叩き潰すためにこういうデマを流す人がいるんです。気にしないでください」
「俺がアンタを叩き潰しましょうか??」

結局、全員ビジネス系だった。
中でも衝撃的だったのが「風の時代の女」だ。
30代半ばくらいの女性。霊感があり、大安吉日は稼働できるが、友引・仏滅は外出できない能力の持ち主。
僕がデートできた日は幸いなことに大安だった。

店に着くや否や、風の時代の女はタロットカードをテーブルに出してこう囁いた。

「コロナ前は土の時代だったの。我慢しろとか根性論とかがまかり通ってた時代だったの。でも今は……、風の時代! 風の時代がやって来たの。自分のやりたいことができる時代になったの。風の時代はワタシの時代!」
「あの……、オムライス食べてもいいですか?」

地獄の占いは2時間にも及んだ。
見切りをつけて帰ればよかったのだが、当時は女性慣れしていなかったから、「デートの練習のつもりでもう少し付き合うか……!」と思い直し、2軒目は池袋サンシャインシティ展望台の喫茶店へ行くことにした。

店に着くや否や、風の時代の女は実母との確執を打ち明けるようになった。

「母とはうまくいってなかったんです」
「いつ頃からですか?」
「子供の頃からずっと」
「なるほどなるほど」
「でも最近、母が病気になりまして」
「まあ」
「ちょっと心変わりしてきたんです」
「そうだったんですか」
「母も体が弱ってきているので、私もちゃんと面倒みていこうかなと」
「ご立派ですね」

地獄の占いから今度はケアマネジャーの面談になってしまった。
家に帰ってから今日一日を振り返る。
「マジで時間と金の無駄だった〜!! しかもアイツなんなんだよ? 30分も遅刻してきたくせに謝りもしないで、自分の食べた分だけ払って帰りやがって! 結局アイツなんだったんだよッ!!」

とは言いつつ、僕には切り札があった。
それは月末に開かれる麻布十番でのホームパーティーだッ!!!
そしてこのホームパーティーで事件が起きた。
(次回へつづく)

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