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12歳のノースリーブ

 小学校5年生のとき、クラス替えを機に最高の友達ができた。彼のことは、小学校3年生のときからお互い知っていたがちゃんと話したのは5年生になってからだったと記憶している。何で知っていたかって、簡単。彼は小学校3年生のある日からノースリーブしか着なくなったから(以下その彼の名前はノース)。確かにいつもノースリーブ着てるなぁ〜とは思っていた。学校指定の体操服も彼のためと言っても良い、Tシャツタイプの他にノースリーブタイプが選べるようになっていて彼は当然ノースリーブタイプだったし、これが彼にとってどれだけ追い風だったことだろうか。
 
 彼を有名にしたのは、4年生の雪が舞う寒い日だった。
隣のクラスのリーダー格が授業中にもかかわらず私のクラスに入ってきた。というより乗り込んできた。そうルーキーズみたいに。

「先生!体温計を貸してください!」

 そこはいかにも小学4年生。ルーキーズだったら「体温計貸せよ!」ぐらいは当たり前だろう。ちゃんとした言葉遣いだったが、とにかく焦った様子だった。
「ノースが震え出した!」
 おいおい嘘だろ。寒さの限界が来たってことか。確かに冬でもノースリーブだけどいつも元気そうだったし、むしろ寒い日の方が逆にあったかいとか訳わからないこと言ってなかったか。
 体温計を持ってうちの担任が隣の教室に向かう。私たちは自習になった。
 
「34.2℃」

 休み時間になって隣のクラスに話を聞きに行ったら教えてくれた。
震え出したノースの体温を測ったら明らかに低い体温が出たらしい。あの店先とかで検温される簡易的なやつじゃないからね。まじの体温計のしかも脇に挟んで34.2℃は相当寒かったんだと思う。

 彼とはその後、5年生になるときのクラス替えで同じクラスになった。
私とノースは、気が合うみたいで、休み時間になると『学校の階段』の読まれた文章を聴いて題名を答えるって言うナゾの遊びにめちゃくちゃ没頭してた。
 そんな私たちも6年生になってさ、中学校の話とかも出てくるのよ、そうするとノースが制服をどうするのか問題。袖をカットして着る?とか真面目に話してたもん。
 でもその前に6年生になったら一大イベントの修学旅行があって、しおりを見ながらながら部屋割とか当日の行き先を確認をしているときね、戦場ヶ原に行くことがわかった。当日の服装の欄に「長袖着用。」ってあった時は、笑ったね。ノースはどうするんだ?っていう空気がクラス中に流れた。まさかの中学校に上がる前にノースリーブ連続着用記録が途切れることになるとは誰も思わなかったと思う。
当日ノースはちゃんと長袖のシャツを着てきたし、戦場ヶ原の写真よりも写真撮られまくってたし、最高の修学旅行だった。
 彼は馬鹿なことやっているように見えるけど実際は、頭がものすごくよかったし、大学に入ってからはちゃんと有名人になってたし、最後は、雨水ためてそれを凍らしてかき氷作ったっていうブログを書いてすぐに封鎖したし、とにかく最高のエンターテイナーだよ。最近は連絡を取ってないけど元気にしてるかな。うん、元気だよね。


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