見出し画像

1984年 22歳の地図①

March 1984

僕の周りにいる人々の
僕に対する忠告は
たいていの忠告がそうであるように
最もリスクの少ない生き方を
奨励するものだった。
僕はそのいくつかの忠告に
少なからず影響を受け
今日の僕があり
明日からの人生がある。

「何もできないうちに卒業するなんて
18歳のときには想像していなかった」

————————————————————————

卒業式。語学のクラスの友だちと
原宿の「キーウエストクラブ」に行く。
水着ディスコパーティーで16年間の学生生活を締めくくった。
ディスコチャートNo.1だったボーイズタウンギャングの「君の瞳に恋してる」、ギブソンブラザーズの「恋のチックタック」…
そのあと、テニスサークルの女子メンバーと合流し「ラジャコート」、「TOKIO」、「クレオパラッツィ」と朝までおキマリのコースでカフェバーをめぐった。

僕には自信があった。しかし、
巨大なガリバーみたいなやつが
目の前に立ちはだかっていることに初めて気づいた。
こいつに勝てるか?
大きすぎて、今までこの相手が見えなかった。

「人は孤独でなければやさしきくなれない」
「やさしすぎることはあまさになる」

————————————————————————

April 1984

大学時代の友だちと六本木で一杯。
早朝4:00 原宿でひとりになり
表参道、青山通りを通って渋谷駅に出る。
まだ世は明けていない。
入社してわずか二週間、
学生時代に見た六本木と
今見る六本木では
ネオンサインの色が違って見える。
もう戻れない。

「気を許してはいけない。
   笑顔は戦術でしかない」

戦って勝つよりも人を大切にしたいと思う。
しかしそれは、人の逃げ口上なんだろう。
どちらかが正しいなんてことは、
—— ありえない。

「やりたいことをやるのとメシを食うことは別だ」
と思うようになってしまった。

人は自分を正当化していく。

早稲田の名画座で「イージーライダー」を観た。
—- 自由を論じ叫んでいても 
  本当に自由なやつを見ると
  怖がる

まったくそのとおり。———————————————————
May 1984

5月になった。

会社は結果で人を評価する。
—- 望むところだ。

中島みゆき「キツネ狩りの歌」
〜キツネ狩りにゆくなら気をつけてお行きよ
 きみと駆けたきみの仲間は
 ねぇ、きみの弓で倒れてたりするから〜

「おまえの企画は学生のおもいつき」
聞き飽きたこのセリフ。

「一軍に入りたいならゼロからやり直せ」
言いたいことはよくわかる。
でもね。
ゼロから、普通のフォームを習ったら
普通の人になってしまうかもしれないじゃないか。

「社会」なるものは、
なんて偏っていて
偏った人が多くて、
かつ正しいんだろう。

(つづく)



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?