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砂漠で見つけたオアシスのコップは永遠に満たされない 〜双極性障害の頭の中 59

みなさん、こんにちは。
双極性障害2型(双極症)のフツーの会社員、パピヨンです。

相変わらず、気分は低空飛行。
平日5日間の仕事を何とか乗り切り、やっと辿り着いた土曜日です。
もう夕方だというのに、朝からずっとパジャマです。ベッドからほとんど動いてません。

まぁ、そんな日もありますよね。

最近やっと、こんな風にダメな自分を『まぁ良し』と許せるようになってきました。
昔の私だったら、無駄な過ごし方をしてしまった!どうしよう!と不安になっていたと思います。
双極性障害の診断が降りる少し前に、診察室で主治医と話した“コップの水”についての話を思い出したので記します。



◾️半分入ったコップの水

よくネタになる話ですよね。
半分入ったコップの水。

『半分“しか”入ってない』と捉えるか?
『半分“は”入ってる』と捉えるか?

私は圧倒的に前者です。
極度の心配性と不安症なので、コップに半分しか入ってないなんて、絶対に“足りなくなったらどうしよう”と思ってしまいます。

この不安が、性格によるものなのか、病気によるものなのか知りたくて、ある日の診察で主治医に聞いてみることにしました。


◾️オアシスの前のコップの水は永遠に満たされない

私は主治医に、

「例えば砂漠にいて、目の前に半分水が入ったコップがあったとして、“半分しか入っていない”という不安からどうしても逃れられないんです。昔からです。これは性格の問題ですか?病気からですか?」

と聞いてみました。
すると主治医は少し笑って、

「おそらく今の物事の捉え方のままでは、たとえコップの後ろに広大なオアシスが広がっていたとしても、“コップに半分しか入ってないんです!”って訴えるでしょうね」

と切り出し、

「つまり、コップしか見ていないんですよ。その後ろにたくさん水はあるのに。コップに半分しか水が入ってないことに囚われて、後ろにオアシスがあるという“現実”に目が向いてないんです。今の状態では、たとえ後ろにオアシスよりもっと広大な湖があろうが海があろうが、“半分のコップ”しか見えないでしょうね」

と言われました。
この主治医の解説はとても印象に残っています。

主治医が治療で用いる森田療法には「気分本位」と「目的本位」という考え方があります。
不安の強い人はどうしてもその不安から逃れることを行動の中心にしてしまいます。これが「気分本位」です。その行動がさらに不安に対して自らを過敏にさせ、自分で自分に暗示をかけてしまうのです。
しかし森田療法では、“その時達成すべき事柄を中心に行動する”「目的本位」をアドバイスされます。
つまり「半分では足りないなら、もっと別のところに水はあるのでは?」と周囲に目を向けることです。

なるほど。
もっと引いて、俯瞰で見れば。
オアシスの目の前で『コップに半分しか入ってない!』と騒ぐ私の行動は、滑稽そのものです。
『砂漠にいる』という不安と、『半分しか水が入っていないコップ』という不安に苛まれ、コップの水を目の前でガン見していたのが当時の私です。

後ろにあるオアシスに全く気付いていませんでした。

元々の性格もあるのかもしれませんが、思考のクセは治療で治せるものなのかもしれないと、初めて気づいた診察でした。




◾️コップの水は半分のままで

あの“コップの水”診察から3年ほど経ちました。
相変わらず、“コップの水が半分しかない”という事実は私を不安にさせます。

しかし、“周りを見渡せば、オアシスはあるかもしれない”という学びは、あの頃よりも少々得た気がします。

コップだけをガン見しないこと。
現実は“コップの中だけ”じゃないこと。

まだまだ忘れがちではありますが、少しずつ習得していきたいと思います。

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