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宇宙少女ソニア第三話 洗脳宗教ブロスの会 前編

   前編
 ある日、ソニアとマイは、散歩していると、ピエロメイクをした一人の少女が奇妙なレオタード姿で、チラシを配っていた。今日中に配らないと、上司に怒られると言って、大変、困った様子であった。
 見かねて、優しいソニアは、そのチラシを受け取ったところ、ブロス仮装芸術祭と書いていた。参加は無料であり、飲食屋台もあるというので、見に行くことにした。ただ、参加資格は、何らかのコスプレをすることであった。
 マイは、セミプロのコスプレイヤーだったので、自らのコスプレ力を見せつけるためにも、乗り気だった。ソニアは、イカ焼きの屋台があるかもしれないとワクワクしていた。結局、ソニアがイカ娘、マイがエビ娘のコスプレで参加することになった。


 ブロス仮装芸術祭の日になった。地元のプロ野球チームの球場が貸し切られ、大勢の仮装した人たちが集まっていた。お面をつけたり、顔面をメイクして、全身タイツやボディペイティングで仮装をしている10代から40代くらいまでの人たちが集まっていた。エグイ格好をしている、モテないオタク系の男女が多く、怪しい雰囲気だった。中には、オタク系のコスプレ眼鏡女子や冴えない地下アイドル系女子たちもいた。
 設置された舞台から、一人の女性が現れた。女性はタイトミニスカートに光沢ストクッキングを履いた30代前半のOL風の女性であった。マイクを握り、司会者の進藤礼子と名乗った。そして、イベントの内容を説明した。
 まず、オープニングセレモニーが開催された。数十人の女性と男性のヘンテコな舞踏である。片手に異様な赤い札を持ち、全身ドーランで白色、青色、緑色、黒色、黄色、紫色、桃色などに塗られた女性たち、全身緑に塗られてカエルの仮装をしたぽっちり男性たちによる前衛舞踏である。「トラウマ、トラウマ、トラウマなくせば、みな幸せ。ブロス、ブロス、ブロス樣だけが叶えてくれる。」と歌い出し、とても不気味なダンスが始まった。
 すると、参加者全体もその唄を歌い出した。ソニアもマイも、その不気味さに圧倒された。それが終わると、司会者の進藤が次のセッションに入ることを告げた。次は、トラウマ体験談の自己開示セッションである。ヒヨコの仮装をした30代の男性が現れ、舞台に上がった。泣きながら親からの宗教虐待で自殺を考えていたという話を告白した。語り終わると、進藤がトラウマ除去儀式開始と号令を出すと、ヘリコプターで吊るされた15メートルもある大きな像が空から降り立ち、舞台の後方に着地した。土偶にも似た不気味な像であった。ブロス神像である。真丸の顔に大きな目が付いてた。進藤は、唱え始めた。「マムブロス、マムブロス、マムブロスサーム、サトラーム・・・。トラウマを取り去れたまえ!!  ブロス神よ!」
 すると、ブロス神像の目から光線がその男の頭に向けて発射された、10秒間ほど光線を受けた男は、徐々に微笑みを浮かべだした。同時に、ブロス神の目から涙が流れ出した。ブロス神は、男の心のトラウマを吸収し、男の身代わりとして涙を流したのである。進藤は、ブロン神像から流れ出す涙を指差しながら、そのように説明し、ブロス神はトラウマハンターであると参加者たちに豪語した。すると、次々と参加者がトラウマを自己開示せんがために舞台に上がっていったのである。
 そして、残ったのは、ソニアとマイだけになった。疑問に思ったソニアは、進藤に質問した。トラウマがなくなったら、それに関連する記憶も無くなるのかと質問したのである。進藤は、人が真に生まれ変わり、幸福になるためには、トラウマと関係する全ての過去の記憶は捨てなければならないと答えた。一方、ソニアは、自分の大切な記憶が無くなるのなら、トラウマをとってほしくないと言い返した。すると、眉毛のない狂信男性信者みぜらんが、「冒涜者だ! こいつはブロス様を汚す冒涜者だ!!」と叫び散らし出した。危険な雰囲気を悟り、ソニアとマイは、逃げるために、一目散に会場から走り去った。
 その後、近所の空地で営業していた、てどろのB級グルメ屋台で一息つき、ソニアはイカ焼き、マイはエビ焼きを食べながら、てどろに今日の出来事を聴いてもらった。
 すると、突然、店の端に座っていた一人の20代前半の女性客が口を開いた。彼女は、名前はセイワと言い、児童福祉司をしていると自己紹介した。そして、切り出した。今、ブロスの会という怪しい宗教が流行っており、若者に対する宗教虐待が横行しているというのである。信者は、教団に洗脳されたり、酷い場合は人体改造を強制されるという。さらに、セイワが児童相談所で担当していた虐待女子であるミリが家出し、ブロスの会に勧誘され、洗脳を受け、人体改造されてしまったという。セイワは、ソニアに宇宙心理学の力を使って信者たちの洗脳を解いてほしいと依頼した。実は、厚生労働大臣からの指令を受けて、セイワはソニアに会いにきたというのだ。
 そういうと、セイワは、店を出て、河川敷を素早く笑顔で走って帰った。ジョギング中とのことであった。ただ、セイワは、昭和レトロ主義者であり、毎日、ブルマ姿で河川敷をジョギングをしているとのことであった。
(中編に続く)


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