キュッ
靴紐を結び直している間に、瑞希が少し先を歩いていた。
後ろ姿を見つめていたい衝動を抑え、駆け足で追いつく。
「ねぇ、最近日が落ちるの早くなったよね。あっちの木の間なんか、もう真っ暗でちょっと怖いもん」
「もう9月も終わりだしな。まぁこの公園、夜は人通り少ないから余計だよ」
いつからだろう。
ボブを後ろでキュッと1つで結った髪型。
僕より20センチ小さい背丈。
テニスラケットを胸の前で抱える癖。
ぴょんぴょん飛び跳ねるような歩き方。
瑞希のすべてが僕の胸の奥をキュッとさせる。
幼稚園の頃は何にも思わなかった。
なのに14歳秋の今はもう、瑞希のことで頭がいっぱい。
「わぁーキレイ」
「おぉーすげー」
突然、公園の長い直線歩道に、等間隔に立っている電灯に灯がついた。
僕たちはふわっとオレンジの暖色ライトに優しく包まれていく。
「夜の公園も悪くないね」
そう言った瑞希の笑顔がはっきりと見え、思わず目をそらしてしまう。
「あのさ、今年のクリスマスはここの噴水広場のイルミネーション復活するんだって」
朝からずっと唱えていたセリフは案の定、声が上擦ってしまった。
「ホント?やったじゃん。じゃあ一緒に行こうよ」
瑞希が飛び跳ねる。
僕の胸もキュッと跳ねる。
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