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今すぐ試せるIPアドレス追跡法|ネットワークセキュリティの裏技

ネットワークの世界は、見えない戦場です。あなたのパソコンやスマートフォンがインターネットに接続されている間、無数のデータが飛び交い、誰がどこからアクセスしているのかを瞬時に判断する能力が求められています。

そんな中、IPアドレスという小さな数字の組み合わせが、驚くほど強力な武器であることを知っていましたか?悪意ある攻撃者を追跡し、ネットワークを守るための鍵が、実はこのIPアドレスに隠されているのです。

この記事では、IPアドレスの基礎から、プロが実践する具体的な追跡方法までを網羅的に解説します。もしあなたがサイバーセキュリティを強化したい、もしくはその背後にある仕組みを深く理解したいと思っているなら、この知識は必須です。未知の脅威にどう立ち向かうのか、その答えがここにあります。

IPアドレスの探知は、ネットワークの世界で誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。しかし、その技術がどれほど奥深いかを知っている人は少ないかもしれません。ネットワークセキュリティやサイバー攻撃が日常茶飯事となる現代において、IPアドレスの特定や追跡は、まさにサイバー防衛の最前線に立つ技術です。

ホワイトハッカーやサイバーセキュリティの専門家は、このIPアドレス探知の技術を駆使し、ネットワークに潜む悪意あるアクターを合法的かつ倫理的に追跡し、サイバー攻撃を未然に防いでいます。今回は、そうした専門家たちがどのような方法でIPアドレスを解析し、犯人を追い詰めていくのか、その高度なテクニックを紹介しましょう。

1. WHOISルックアップ

インターネット上に存在する全てのIPアドレスには、その管理者や所有者がいます。WHOISルックアップは、IPアドレスの持ち主を調べる最初の一歩です。これにより、そのIPがどのインターネットサービスプロバイダ(ISP)や組織に属しているのか、そしてそのIPがどのように割り当てられているのかを知ることができます。

手順はシンプルです。コマンドラインで whois コマンドを使うか、オンラインのWHOISサービスを使って調べるだけ。そこで得られる情報は、IPの登録者やプロバイダ、さらにはASN(自律システム番号)と呼ばれるネットワーク情報。これで、IPアドレスの出所が明確になります。ターミナルコマンドは以下のように書きます。

whois 8.8.8.8

「8.8.8.8」の部分に調査したいIPアドレスを書きます。

2. GeoIPトラッキングで物理的な場所を突き止める

IPアドレスがわかっても、それだけではどこからアクセスしているのかを特定するのは難しいです。そこで役立つのがGeoIPトラッキング技術です。GeoIPデータベースを使えば、そのIPアドレスがどの国、さらにはどの都市からアクセスしているのか、物理的な位置情報を手に入れることができます。

例えば、MaxMindやIPinfo.ioのようなサービスを使えば、IPアドレスの背後にある位置情報を簡単に取得できます。精度は100%ではないにせよ、特定の地域やプロバイダを割り出すには十分です。これにより、攻撃者が世界のどこに潜んでいるかの手がかりが得られるでしょう。

3. リバースDNSルックアップでIPアドレスの正体を探る

次に重要なのは、IPアドレスがどのドメインやホストに関連しているかを特定することです。リバースDNSルックアップを行うことで、そのIPがどのサーバに関連付けられているか、さらにはどのウェブサイトがそのIPから運営されているかが分かります。

たとえば、攻撃者が使っているサーバがリバースDNSで明らかになれば、そのサーバをさらに調査し、悪意のある活動の全容が見えてくるかもしれません。

4. ASNトラッキングでネットワーク全体を分析

ASN(自律システム番号)は、インターネット上でネットワーク間のルーティングを行うために使用される識別子です。IPアドレスがどのASNに属しているかを確認すれば、そのIPがどのネットワークを通じて運用されているのか、そしてどのプロバイダがそのネットワークを管理しているのかを知ることができます。

BGPViewやHurricane ElectricのBGP Toolkitを使えば、IPアドレスがどのネットワーク経路を通っているかを可視化することが可能です。攻撃者が使っているネットワークを特定することで、どのプロバイダを通じて不正アクセスが行われているのかを確認し、さらなる対策を講じることができます。

5. パケットキャプチャとネットワークトレースで攻撃の痕跡を追う

時には、ネットワーク上のパケットそのものを解析する必要があります。Wiresharkのようなツールを使ってネットワークトラフィックをキャプチャし、攻撃者のIPアドレスや通信経路を追跡します。

加えて、Tracerouteコマンドを使えば、通信がどのルートを通じて行われたのかを可視化できます。これにより、攻撃者がどのルーターやネットワークを経由してあなたのシステムにアクセスしてきたかを正確に追跡することができるのです。

6. DNSキャッシュスヌーピングで見えない履歴を調べる

攻撃者がアクセスしていたドメインを知ることができれば、その活動を追跡しやすくなります。DNSキャッシュスヌーピングを使えば、攻撃者が使用したドメインに関する情報をキャッシュされたDNSクエリから得ることが可能です。

これにより、攻撃者がどのサイトにアクセスし、どのサーバにデータを送信していたかを探る手がかりが得られます。

7. IPスプーフィングの検出で偽装された攻撃を見破る

攻撃者はIPスプーフィングを使って、偽のIPアドレスを使って攻撃を仕掛けてくることがあります。こうした不正アクセスを見破るためには、ファイアウォールやIPS(侵入防止システム)を使って不審なトラフィックをフィルタリングし、トラフィックパターンを詳細に解析します。

TTL(Time to Live)やTCPシーケンス番号の異常な変動を検出することによって、スプーフィングされたパケットを見破り、攻撃者を特定することができるのです。

8. システムログとアプリケーションログの解析で痕跡を見逃さない

最終的には、システムログやアプリケーションログの精査も欠かせません。これらのログファイルには、誰がいつどこからアクセスしたかの情報が詳細に記録されています。これを丹念に調べることで、攻撃者の足跡を見つけることができるのです。

サーバログやOSのシステムログには、異常なログイン試行や不審なファイルアクセスが記録されていることが多く、これを基に攻撃の全容を把握することが可能です。

”whois”

ターミナルコマンドで "whois" を実行すると以下のような結果が出ます。

Last login: Fri Sep 27 14:24:17
[USERNAME]@[DEVICE] ~ % whois 54.199.248.22
% IANA WHOIS server
% for more information on IANA, visit http://www.iana.org
% This query returned 1 object

refer:        whois.arin.net

inetnum:      54.0.0.0 - 54.255.255.255
organisation: Administered by ARIN
status:       LEGACY

whois:        whois.arin.net

changed:      1992-03
source:       IANA

# whois.arin.net

NetRange:       54.144.0.0 - 54.221.255.255
CIDR:           54.216.0.0/14, 54.220.0.0/15, 54.192.0.0/12, 54.144.0.0/12, 54.208.0.0/13, 54.160.0.0/11
NetName:        AMAZON
NetHandle:      NET-54-144-0-0-1
Parent:         NET54 (NET-54-0-0-0-0)
NetType:        Direct Allocation
OriginAS:       
Organization:   Amazon Technologies Inc. (AT-88-Z)
RegDate:        2014-10-23
Updated:        2021-02-10
Ref:            https://rdap.arin.net/registry/ip/54.144.0.0

OrgName:        Amazon Technologies Inc.
OrgId:          AT-88-Z
Address:        410 Terry Ave N.
City:           Seattle
StateProv:      WA
PostalCode:     98109
Country:        US
RegDate:        2011-12-08
Updated:        2024-01-24
Comment:        All abuse reports MUST include:
Comment:        * src IP
Comment:        * dest IP (your IP)
Comment:        * dest port
Comment:        * Accurate date/timestamp and timezone of activity
Comment:        * Intensity/frequency (short log extracts)
Comment:        * Your contact details (phone and email) Without these we will be unable to identify the correct owner of the IP address at that point in time.
Ref:            https://rdap.arin.net/registry/entity/AT-88-Z

OrgRoutingHandle: IPROU3-ARIN
OrgRoutingName:   IP Routing
OrgRoutingPhone:  +1-206-555-XXXX 
OrgRoutingEmail:  aws-routing-poc@amazon.com
OrgRoutingRef:    https://rdap.arin.net/registry/entity/IPROU3-ARIN

OrgAbuseHandle: AEA8-ARIN
OrgAbuseName:   Amazon EC2 Abuse
OrgAbusePhone:  +1-206-555-XXXX 
OrgAbuseEmail:  trustandsafety@support.aws.com
OrgAbuseRef:    https://rdap.arin.net/registry/entity/AEA8-ARIN

OrgTechHandle: ANO24-ARIN
OrgTechName:   Amazon EC2 Network Operations
OrgTechPhone:  +1-206-555-XXXX 
OrgTechEmail:  amzn-noc-contact@amazon.com
OrgTechRef:    https://rdap.arin.net/registry/entity/ANO24-ARIN

OrgRoutingHandle: ARMP-ARIN
OrgRoutingName:   AWS RPKI Management POC
OrgRoutingPhone:  +1-206-555-XXXX 
OrgRoutingEmail:  aws-rpki-routing-poc@amazon.com
OrgRoutingRef:    https://rdap.arin.net/registry/entity/ARMP-ARIN

OrgNOCHandle: AANO1-ARIN
OrgNOCName:   Amazon AWS Network Operations
OrgNOCPhone:  +1-206-555-XXXX 
OrgNOCEmail:  amzn-noc-contact@amazon.com
OrgNOCRef:    https://rdap.arin.net/registry/entity/AANO1-ARIN

まあ何書いてるかわかんないですよね…なので意味を解説します。

この「WHOIS」クエリ結果をもとに、IPアドレス「54.199.248.22」がどのようにAmazon Web Services (AWS) の一部として使われているかを解説します。情報を詳しく紐解いていきましょう。

1. 「Last login」の意味

Last login: Fri Sep 27 14:24:17 on ttys004

この行は、実行したユーザーが最後にシステムにログインした日時を示しています。端末名(ttys004)が表示されていますが、これはシステム内の仮想端末の一つを表しており、コマンド操作の一環です。

2. WHOISクエリ実行

whois 54.199.248.22

このコマンドは、IPアドレス「54.199.248.22」に関する情報を取得するためのものです。WHOISとは、インターネット上で使用されているIPアドレスやドメインの所有者情報を検索できるサービスのことです。

3. IANA WHOISサーバーの返答

% IANA WHOIS server % for more information on IANA, visit http://www.iana.org % This query returned 1 object

IANA(Internet Assigned Numbers Authority)は、インターネットプロトコル(IP)アドレスの割り当てを管理する世界的な機関です。この結果から、このIPアドレスの詳細情報はARIN(American Registry for Internet Numbers)という機関が管理していることがわかります。

4. ARINへのリファー

refer: whois.arin.net

ここでは、IANAがARINのサーバーに情報を照会するよう指示しています。ARINは、北米地域のIPアドレスの割り当てを担当する機関です。

5. IPアドレスの範囲と管理者

inetnum: 54.0.0.0 - 54.255.255.255 organisation: Administered by ARIN status: LEGACY

このIPアドレスは、クラスAに属し、「54.0.0.0」から「54.255.255.255」までの広範な範囲をカバーしています。「LEGACY」とは、このIPアドレス範囲が古い制度のもとで割り当てられたことを意味し、現在の割り当てルールとは異なる形式で管理されています。

6. IPアドレスの詳細情報

NetRange: 54.144.0.0 - 54.221.255.255 NetName: AMAZON

ここから、IPアドレス「54.199.248.22」は、Amazon Technologies Inc.に割り当てられていることがわかります。このIP範囲は、Amazonが提供するクラウドサービスであるAWSに関連しています。CIDR(クラスレス・インタードメイン・ルーティング)は、効率的なアドレス管理を実現するための技術で、このIP範囲を効果的に管理しています。

7. Amazon Technologies Inc.の登録情報

OrgName: Amazon Technologies Inc. Address: 410 Terry Ave N., Seattle, WA, US

このセクションでは、Amazon Technologies Inc.の企業情報が表示されています。シアトルに本社を構えるこの企業が、このIPアドレスブロックを管理しています。

8. 不正行為の報告に関するコメント

Comment: All abuse reports MUST include:

Amazonがネットワーク不正行為を報告する際に必要な情報の詳細です。報告には、送信元および受信先のIPアドレス、ポート番号、正確なタイムスタンプ、ログの抜粋など、具体的なデータが求められます。

9. 問い合わせ先の技術サポート情報

OrgRoutingHandle: IPROU3-ARIN OrgRoutingEmail: aws-routing-poc@amazon.com

ここでは、Amazonのネットワークルーティングに関する問い合わせ先が提供されています。ルーティングの問題や技術サポートが必要な場合には、ここに連絡することが推奨されています。

10. 不正行為とネットワークオペレーション

OrgAbuseName: Amazon EC2 Abuse OrgAbuseEmail: trustandsafety@support.aws.com

Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)の不正行為に関する問い合わせ先です。不正行為や疑わしいアクセスが発見された場合、ここに報告できます。

このWHOISクエリの結果から、IPアドレス「54.199.248.22」がAmazon Technologies Inc.(AWS)に割り当てられていることが確認できます。AWSは、世界中で多くの企業や個人が利用するクラウドサービスであり、このIPアドレスはそのインフラの一部です。もし不正アクセスやネットワークの問題が発生した場合、Amazonの指定された窓口に連絡を取ることができます。

ネットワークセキュリティにおけるIPアドレスの探知と追跡は、決して単なる技術的な作業ではありません。それは、私たちのオンライン生活やビジネスの安全を守るための「目」と「耳」であり、悪意ある行為を早期に発見し防ぐための強力なツールです。この記事を通じて紹介した各種テクニックや手法は、サイバー攻撃や不正アクセスを防ぐために、日常的に役立つスキルです。

日々進化するサイバー脅威に対抗するためには、基礎をしっかりと押さえつつ、常に新しい技術や知識を学び続けることが重要です。IPアドレスを理解し、追跡する能力は、その第一歩です。ぜひこの記事の情報を参考に、日常のネットワーク管理やセキュリティ対策に役立ててください。小さな積み重ねが、大きな防御力を生み出すはずです。

ネットの世界は広大ですが、しっかりとした知識と適切なツールを使うことで、その脅威に立ち向かうことができるのです。


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