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ポルトガルの田舎でのオーガニックな暮らし

先週から、ポルトでの都会的な生活に一旦区切りをつけて、ポルトガル中部にある小さな村”Brunhós村”の外れにあるエコファーム”Quinta de são mateus”に滞在している。

2週間ほど前にコインブラを旅した後、このエコファームのゲストハウスを訪れたのだけど、美しい自然とのどかな時間の流れがあまりにも心地よくて、一瞬にしてこの場所が大好きになってしまったことがきっかけ。オーナーのアニュータさんにお願いして、ここにしばらく滞在して畑仕事やオーガニックな暮らしを学ばせてもらうことになった。


ワイン農家を改修したエコファーム


この農園は、30年前に日本人の旦那さんとその奥さん、娘さんが移住してきて、オーガニックワインを作っていた場所。美しく大切にリノベーションされた17世紀の建物に、今は、ベルギー人の奥さん、アニュータさんが一人で住んでいる。アニュータさんはここのことをいつも"キンタ"と呼んでいて、キンタは、ポルトガル語で"農園"を意味する言葉。以前、ガイドブックの片隅に載っているのを見つけて、一度訪れてみたいと思っていた。

ゲストとしての滞在ももちろん素晴らしかったので、noteに書き留めておきたいのだけど、ここでの毎日は充実していて時間があっという間に過ぎてしまって記録が追いついていない。記憶が新鮮なうちに、この1週間の出来事を綴りたい。


オーガニックな畑仕事


ここでのメインの仕事は、畑を耕すこと。そのほかにも、庭仕事をしたり、建物を手入れしたり、自然の中で心地よく生活をするためにしなければならない身の回りのことを日中の時間を使って手伝っている。その中で、農薬に頼らない畑の耕し方や、半自給自足的なエネルギーを活用した住まい方、オーガニックに暮らすための生活の知恵を、アニュータさんから教わっている。

建築を仕事にする自分には、一見、田舎での生活や畑仕事は無関係にも思えるけれど、私はここで経験できることは貴重な財産になると思っている。理由を書き始めると長くなってしまいそうなので別の機会に綴りたいと思うけれど、テクノロジーにあまりにも頼りすぎる現代の生活や、それが原因とも言える頻繁に起こるようになった自然災害に、以前から少なからず不安を抱いていた。人間の暮らしの根本である自然と向き合って、地に足のついた生活をする中で、私自身の建築や住まいへの考えを深めたいと、ずっと思っていた。

でも、最初の1週間で感じたことは、オーガニックな暮らしは響きはいいけれど、とても大変。農薬や除草剤を使わない代わりに、雑草が我先にと言わんばかりに伸びてくる。畑にどんどん生えて栄養を吸収してしまうのはもちろん、古い建物の石積みの間にも、もの凄い力で割って入ってくる。高齢のアニュータさん一人ではとても手入れしきれないので、畑や建物の伸び放題の雑草を地道に抜いていく作業をこの1週間続けた。黙々と畑を耕し、建物の周りに生える雑草を抜く時間は、意外と無心になれて頭の中がスッキリするときもあれば、機械や農薬でこの短調な作業を一気に終わらせられたらどんなに効率的だろう…という思いが頭をよぎってしまうこともある。

石積みの建物は雑草が割り込んできて傷んでいる

今までほとんど考えることのなかった、健康的な食べ物を作ることがどれだけ大変かを身をもって体験している。でも、土をいじっていると、たくさんの生き物たちと出会って、忘れかけていた子どもの頃に公園で遊んでいた記憶が蘇ってくる。花の近くには蜂がいるし、土の中にはミミズもムカデもアリもいる。都会育ちの私には分からない名前の虫もいる。たまに、ネズミが畑に侵入した穴を見つけることもある。この自然は人間だけのものじゃないんだなー、と気付かされる。だから、大変だけど、できるだけ生き物たちとこの自然を共有しよう思うようになる。

畑の様子

お昼ごはん


毎日のお昼ごはんは、料理がとても得意なアニュータさんが用意してくれる。今日は、自家製のピザを頂いた。畑で採れたトマトで作ったソースをたっぷり使ったピザはとても美味しかった。

手作りピザ

この民家は30haの敷地の中に建っていて、周りには広大な自然があるけれど、近隣の家までは車を乗って行かなければならない。ほとんどの人生を都会で過ごした私にとって、ここまで人里離れた場所で過ごすのは初めてだったので、滞在し始めた時は寂しくならないか少し心配していた。けれど、遠くに見える村の教会の鐘の音、風が吹いて木の葉が揺れる音や鳥の鳴き声、ちょっと厄介な虫のブンブン言う音、ここならではの色んな刺激があるし、今のところ毎日新しい発見があって、寂しい思いをする暇もなく時間が過ぎていく。昼は畑仕事、夜は建築の勉強。ポルトガルの田舎の村はずれで、予想外だったけどオーガニックな新しい生活が始まった。





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