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洗脳と快楽と宗教 悲劇を生まないために

 先日、安倍元首相が応援演説中に襲撃に遭い、惜しくも命を亡くしてしまいました。犯行に至った山上徹也氏は母親の宗教への没頭と過度な献金により、家庭が崩壊した事での恨みを晴らすために、安倍元首相が統一教会と繋がりが深いと判断し、犯行に至ったとされています。

 人の救いとなり、幸福を考えるための宗教がこのような悲劇を生み、結果誰一人、幸せになる者、得をする者が得られない耐え難い悲劇となってしまいました。宗教というものが一人の人を不幸にし、家庭を壊し、最後には日本全体を揺るがす、悲しい出来事を引き起こす事となりました。

現代社会において、宗教と洗脳は切っては切れない関係とイメージが定着されています。元々は信仰という言葉が適切であり、信仰心を基に社会の中で良い行いをするという物が宗教の基本であると思いますが、綺麗事だけでは語れない宗教の怖さという物が人々の中に根付いている事も事実です。

今回は宗教、不幸と快楽をテーマにして、洗脳とは何なのか、信仰との境目を明確にして、今後このような事件が起きないよう警笛と注意喚起をさせて頂けたらと思います。

洗脳とは

洗脳とは人の思考能力を低下させ、盲目な状態に陥れ、自分の思うように人をコントロールする事を指します。

洗脳というものを聞いて世間では、催眠状態や精神異常というイメージを持たれる方も多くいらっしゃると思いますが、洗脳は意外と日常生活の中で身近に存在しているものです。洗脳とは人をロボットのように操縦できるような大それたものではなく、あくまでも人の意思決定を尊重し、自分で選択させたと自覚を持たせる事が常套手段になります。

人は自分の意思決定や行動に矛盾が生じる事を非常に嫌います。例え自分の行動が間違っていたとしても、正しいと思えるような理由を探し、自分を正当化します。いわゆる合理化という防衛機制(適応機制)の一種にも当てはまると思いますが、このような習性は人のコンプレックスと不安といったネガティブな感情に強く結び付きます。

喜怒哀楽といった感情は人の思考能力を鈍らせ、その思考は真っ当なのか、整合性はあるのか、果たして正当化しているだけなのか判断がとても難しくなります。また自分を守ろうとする防衛本能も強く露出するため、人を視野狭窄に陥れるには最高な環境が整ってしまいます。

このような精神状態に陥った人間の不安な感情やコンプレックスに漬け込み、さらに不安を与え、脅し倒した後に救いを与えたり、自分が意図する事に誘導するという事はとても簡単になります。また、あくまで強制ではなく、提案であるというスタンスを貫き、自分が選択し、決定したという責任感と正当性を刺激し、後戻りできない状況に追い込みます。

ここまでの文章を読んで、こんな簡単な法則なら自分も簡単にできるのではないかと考えた方もいらっしゃると思います。

しかし、この思考が一つの落とし穴になります。

洗脳をしようとする人間は、他人をコントロールしようと考えます。要するに人を陥れて、自分の支配下に置こうと潜在意識で勘違いを起こしてしまいますが、この状態を心理学では共依存と呼びます。

洗脳を実行した人たちは他人をコントロールできたのではなく、人を不安にさせて実態のないものに依存させただけです。この事を理解できず、人をコントロールできたと勘違いを起こし飴を与え続けることで負のスパイラルが巻き起こるのです。

飴いずれは溶けてなくなる

他人を支配下に置くために溶ける飴(実体のない快楽)を与え続ける。これ以上、精神的に疲労を感じる事はないと思います。他人に嘘をつくと他人を馬鹿にするという言葉があります。もし、世の中に嘘しか存在せず、事実が誰にも分からない、事象に対して、それが本当か嘘かどうかも分からないという状態に陥ったら、誰が何を基準にして事実を知ることができるでしょうか。洗脳とはまさに他人をそのような状態に陥れ、人をコントロールするために嘘をつき、最終的には自分自身もその世界観に呑まれてしまいます。

宗教とは一つのものを信仰するもの

以上の事を踏まえて、宗教団体が洗脳と言われるものを実行しているのだとしたら、洗脳をしようとしている人間も既に洗脳されているという事が言えるのです。宗教団体の人たちはあくまでも自分のために、自分の意志で一つのものを信仰しています。何かを信じるということは決して間違っているものではありませんが、このような人の信仰心の中に、コンプレックスや不安などと言ったネガティブな感情を混ぜ、その事を補うために救いと快楽を与えて依存を作るという実体のない飴を作り上げ、人の認知の歪みを作り上げるという行いが、既に自分も同じような状況に陥っているという事が言えるでしょう。そのため宗教団体のトップや幹部クラスも同じような状況に無意識に洗脳状態に陥っている可能性は十分に高く、自分達が間違った行動をしているということにすら気付かないでしょう。

要するに悪徳な宗教団体は人のネガティブな感情に漬け込み、実体のない快楽をお互いに与え続け、実体のない飴を追い求める事に特化した、お互いに依存した悲劇の集団と言えると思います。

洗脳する側は、自分は正常だと認識している人も多いでしょうが、結局それすらも思い込みであるという恐ろしい事実が待っています。また宗教団体のトップは金や資産目的で人を騙す詐欺師というような認識でいる人も多いと思いますが、お金を求めるためだけにそのような行いをしているという時点で既に正常ではなくお金に執着、依存していると判断できるのではないでしょうか。また、人は単純にお金だけを目的に活動を続けるということは意外と難しいものです。そこには結局何か動機があり、何かに囚われている物があります。結局、当の本人もネガティブな感情や強いこだわりに思考が支配されているだけであり、そのような人が、伝染したまた同じような人を見つけ、増やしているだけに過ぎないのです。

洗脳を解くためには

この事を理解して、どこかでこの負のスパイラルを打ち止める事が必要になります。そのため、人の洗脳を解くというものは催眠術から解放したり、ロボットの回線やスイッチを繋ぎ直したり、コンピューターを修理するようなものではなく、実体のあるもので事実を受け止めて安心してもらい、新しい体験と価値観を作り上げる、上書きするという考え方がが洗脳を解く方法の最善な方法になります。

この事をメンタルヘルスの言葉で「認知行動療法」と言います。

人の認知と行動にアプローチして、人の過剰なネガティブや不安を取り除く力を本人自身が獲得するという手法になりますが、この事を悪用した物が洗脳に近い行いになるのではないかと思います。

心理学とは応用が効くものがたくさんありますが、迂闊に悪用すると結果的に自分が心理学に使われてしまいます。ミイラ取りがミイラになる。メンタルヘルスを実施している人たちはこの事を常に気をつけて、自分の価値観やこだわりについて、普段からセルフテェックする姿勢が身についています。

これを期に洗脳、マインドコントロール、依存というものを重く受け止め、心理学を悪用する人はいずれ、心理学に飲み込まれるという認識を持ち、心理学の正しい使い方に触れて頂けたらと思います。


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