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写真:殷王朝時代 (紀元前17世紀頃 - 紀元前1046年) 
大理石虎首人身立雕(河南省安陽市出土)
台湾 中央研究院歷史語言研究所歷史文物陳列館収蔵
筆者撮影(於 台北 故宮博物院)

前書き 

私は忖度しない

今回は連載マガジンにトライしてみたいと考えています。マガジンの内容は、中国起源のヒトと動物への感染症についての歴史と、感染症への対応に関する記録、そして私なりの分析と考察です。

書くにあたっては多少困惑したところがありました。なにしろ中国に忖度せずに本当の事を書くと、たとえ悪意がない文章だとしても、私が中国や香港に入ったとたんに拘束されるかもしれないからです。現在は、中国の国家機密保護法によって国内外を問わず、言論の自由が封殺されているからです。

中国に拠点を持ち、そこで働く人々を考慮してせざるを得ない方々や、日本の言論機関で働く中国人たちは、中国に忖度した記事を書かざるを得ないはずです。従って、中国専門家の多くは、当たり障りのない記事やレポートにせざるを得ない事は理解できます。私は改革開放後の中国や自由だったころの香港へは仕事の関係で何度も訪問しました。たぶん日本人としては中国が好きな部類の人間かと思います。

しかしながら、このような毛沢東時代に戻ったような中国や香港に、今後行くことはやめました。残念ですが少しでもリスクを冒す事はできません。 私は、これからも忖度をせずに自由に「良いものは良い、悪いものは悪い」と書いていきたいと考えています。

中国から始まった疫病のアウトブレイク

2019年、新型コロナが世界的に大流行した主要因が武漢での疫病発生から始まったことは、良く知られた話です。 歴史上、ペスト、インフルエンザ、サーズそして新型コロナなど人獣共通感染症と呼ばれる中国を起源とする悪疫が、中世からシルクロードや貿易船によって世界中に広がり人類に大厄災をもたらして来ました。

新型コロナウイルスの起源については、さまざまな憶測や陰謀説などが見られています。それは中国が初期段階での情報を隠匿し、海外の専門家による調査も拒絶したことによって、真相は霧の中に消えていることによって生まれています。 時間が経てば経つほど、噂が広がり、起源や原因の調査は難しくなるのは明らかです。 

人獣共通感染症:ブルセラ菌感染症

知らない方も大勢いると思いますが、2019年7月に中国甘粛省蘭州市で動物薬工場からの汚染した空気の漏洩によって、ブタやペットに感染しヒトにも感染する人獣共通感染症であるブルセラ菌による感染症が大発生しました。

この被害の拡大についても、当初の市政府の発表では200人の感染者とされていましたが、1年以上過ぎた2020年9月に3000人、ついで11月に当初から6000人が感染被災していたと判明し、大騒ぎになるまで情報は隠蔽されていました。 

ブルセラ症は、関節炎や心内膜炎などを発症し死に至ることもある恐ろしい感染症で、過去に米国やソ連が、ブルセラ菌を利用して細菌兵器を開発したこともありました。コロナ問題もブルセラ問題も中国の隠蔽体質を物語っています。

家畜伝染病アフリカ豚熱のアウトブレイクとミートショック

これらは、ヒトに感染する病原体ですが、さらに本稿では2018年遼寧省で感染が確認され、中国・アジアで大流行中の家畜伝染病であるアフリカ豚熱(ASF:旧名アフリカ豚コレラ)を取り上げました。中国は世界一の養豚大国で、世界全体の8億頭の半分、4億頭の豚が飼育されています。中国での防疫体制の不備によって、ASFは陸続きの東南アジアや朝鮮半島にも感染を広げ、いまやアジアでは日本と台湾だけがASF清浄国となっています。

ASFは、ヒトには感染せず豚や猪にしか感染しませんが、感染した豚は100%死亡するという恐ろしい病気です。治療薬もワクチンもありません。 そのASFが原因で2019年から20年までの間に、一時的に中国の豚飼育頭数4億頭の内1億頭、すなわち世界の豚8億頭の8分の1が食肉処理されて消えてしまいました。

このASFの広がりについても2019年10月以降、一時期、豚の飼育頭数などのデータは発表されなくなりました。中国政府はASFの重要なデータも隠蔽しました。

このASFの問題は、当時食肉の争奪戦のはじまりとともに世界の食糧資源に大きな影響をもたらしつつあることです。 何しろ世界の8分の1の豚が消えたわけですから、不足する豚肉をめぐって中国が世界の生産国から豚肉を爆買いし、ミートショックと呼ばれ、豚肉価格の高騰の要因となりました。そして今、中国の豚肉増産政策によって穀物価格の高騰になっています。

食料資源戦争の時代の主役

人類の誕生以来、過去の戦争は大なり小なり続いてきました。これらはそのほとんどが土地や水そして食糧を獲得するための争いでした。20世紀に入ると、世界中の多くの地域で、農業生産技術が発展し食糧確保を争う必要性が薄れましたが、新たに石炭や鉄、石油などのエネルギー(化石燃料)・鉱物資源を巡る紛争が戦争の主たる要因となり、それらをコントロールするアメリカの時代となりました。

しかしながら、21世紀に入り、伝染病の蔓延(ヒトや動物)、地球温暖化に伴う異常気象、戦争や国際紛争、化石燃料(石油など)の高騰、水産資源の乱獲などによって、将来には、新たな食糧資源戦争の時代が来るのではないかと筆者は予想しています。 そして、好むと好まざるにかかわらず、その主役として登場するのが中国なのです。(続く) 目次を作成中です。

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