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食肉には優れた成分がいっぱい。その2 健康と滋養強壮

日本で生まれた造語「医食同源・薬食同源」

従来、我国には“医食同源”とか“薬食同源”という言葉がある。この言葉の印象から、一般には中国由来の熟語の様に思われているが、意外にも日本で生まれた造語なのである。 

やや説明を加えると、我国の高度成長で庶民の所得が増え、食事内容が大幅に改善された1970年代。肥満、糖尿病、心臓病などの成人病が社会問題となり始め、その主因と思われた西洋流の栄養第一主義への反省から、東洋流の「食による養生」という考え方がでてきた。
 
すなわち“日頃から身体に良い食事をバランス良く取って、身体の内側から健康になり、病気を予防したり、治したりしよう”という考え方がこの医食同源という言葉に込められるようになったのである。
 
特に、非常に健康志向が強い団塊の世代(1947~49年生 一年の出生数が260万人以上)の人々が70歳を超えたことから、食肉業界や食肉を主食材にする外食業界のビジネスとして、“医食同源”がこの人口が多い年齢層の市場に対してますます重要なキーワードになって来たのである。

そこで前号の1、ダイエット効果、2、美容効果、アンチエイジング効果に続いて、元気で健康的な身体を維持するために、食肉の素晴らしい機能性について更に解説を試みたい。

食肉の機能成分 その2

抗ストレス効果、血圧抑制効果、貧血防止効果、成長促進効果、滋養強壮効果など

 3、抗ストレス効果(幸福感、うつ病抑制、健脳効果など)

①     トリプトファン、フェニルアラニン(必須アミノ酸): 牛肉、豚肉(解説)ヒトの体の中で、トリプトファンから、脳内で働く神経伝達物質である“セロトニン”が生合成され、フェニルアラニンからは“ドーパミン”が生合成される。これらは別名“幸せホルモン”と呼ばれる“セロトニン”や“ドーパミン”には、精神安定、うつ病抑制、リラックス効果などの健脳効果や幸福感、学習意欲強化などの効果がある。

②     アラキドン酸(必須脂肪酸): 牛肉 豚肉
(解説)牛肉や豚肉に多く含まれるアラキドン酸は、ヒトの脳内でアナンダマイド(アナンダミド)と呼ばれる物質に生合成される。このアナンダマイドが発見され命名されたのは、比較的新しく1992年の事であった。その名の由来は、サンスクリット語のアーナンダ(法悦、歓喜の意)とアミドを合わせた造語であり、別名「至福物質」と呼ばれている。牛肉や豚肉を食べるとアナンダマイドの作用によって、不安が軽くなり、幸福感、満足感が増加すると言われている。

 私には、焼肉やすき焼き、ステーキなどを食べている人は皆一様に幸せそうに見える。ガックリと落ち込んで食べている人を見たことが無い。「肉を食べると幸せに感じる」という事は、今まで述べたように、実は科学的な事象であったのである。

 4、 血圧抑制、動脈硬化予防効果

① タウリン: 牛肉
(解説)タウリンは硫黄を含む含硫アミノ酸の一種で、魚介類に多く、牛肉にも比較的多く含まれるが、植物には微量しか含まれない。タウリンは、栄養ドリンクなどでもおなじみだが、肝機能を高め、体の細胞を正常に保つ働きとともにコレステロールの上昇を抑え、動脈硬化を抑制するために高血圧の予防にも効果があるとされている。

 オレイン酸、 リノール酸: 牛肉 豚肉 鶏肉
(解説)ヒトの体温で溶ける口溶けの良い和牛や豚肉の脂肪には、オレイン酸という脂肪酸が多く含まれる事が知られている。 また、鶏肉の脂肪には、オレイン酸に加えてリノール酸という脂肪酸が多く含まれている。オレイン酸やリノール酸には動脈硬化の原因の一つである悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を減らす働きがあり、高血圧を予防する。

5、 貧血防止効果

 ヘム鉄(鉄分): 牛肉
(解説)貧血とは、赤血球に含まれる赤い色素であるヘモグロビンが不足している状態で、めまい、頭痛、食欲不振、疲労など様々な症状が現れる。この貧血を改善するには、赤身肉やレバーに多く含まれるヘム鉄と呼ばれる成分の摂取が効果的である。ヘム鉄には、筋肉に含まれるミオグロビンと、主として血液やレバーに含まれるヘモグロビンがある。 食肉に含まれるヘム鉄は、野菜などに含まれる鉄分の5倍以上吸収率が良く効果的である。

 6、成長促進、肝機能保護、脂肪肝防止

トレオニン(必須アミノ酸): 豚肉
解説)トレオニンはスレオニンとも呼ばれ、必須アミノ酸のうちで最後に発見されたもので、動物の成長に関わるとともに肝臓に脂肪が蓄積するのを阻害する働きが知られている。トレオニンが不足した場合には、食欲不振、貧血、成長阻害、体重減少などの症状があらわるが、豚肉をはじめ、多くのタンパク質を含む食品に含まれているため、通常の食生活では欠乏することはほとんど無い。

 7、 滋養強壮 (疲労回復、精力増強、血流改善など)

 アルギニン(準必須アミノ酸): 鶏肉
解説)アルギニンは、成長ホルモンの分泌を促進し、筋肉組織を増強する効果があるため、ボディビルダーの補助栄養食品として利用されている。アルギニンを多く含む鶏スープは、滋養強壮の効果があるため、病後の食べ物として珍重されてきた。 

(必須アミノ酸とは)

体を作るタンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、体内で合成することができない9種類のアミノ酸、トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンが必須アミノ酸である。 
 これらは、食品から摂取しなければならないアミノ酸で、通常のバランスも良い食生活をしていると大丈夫と言われている。しかしながら、もし一部の必須アミノ酸でも欠乏するとタンパク質が生合成できないために筋肉、血液、皮膚、骨などを作ることができずに体中に様々な症状(脱毛、皺、蕁麻疹、湿疹、疲労、骨折、記憶力の低下、生理不順など)があらわれる。食肉にはこれら必須アミノ酸がバランス良く含まれている。 

おわりに

過去には、食肉はコレステロール値を上昇させ、心臓疾患や動脈硬化など健康に悪いと誤解されていた時期もあったが、逆に肉類が身体にとって重要な栄養素を多く含んでおり、健康的な生活を送るためには必要不可欠な食べ物であることをご理解いただけたら幸甚である。

とはいえ、好物だからと言って肉類のみに偏った食事も当然お勧めできない。食事は穀類、野菜果物、乳製品、魚介類、そして食肉や鶏卵などとバランスよく摂取する事が重要なのは、きわめて当然である。

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