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Google Arts&Culture でブリッジやカードゲームの様子を描いた作品を検索してみた

2019年秋から2020年春にかけて、全国3カ所で「コートールド美術館展 魅惑の印象派」という展覧会が開催されました。この展覧会のオリジナルグッズである2020年カレンダーが我が家にあるのですが、11月のカレンダーの絵柄を見ると、そこにはカードゲームに興ずる紳士が描かれているではありませんか!

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ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》
1892-96年頃/油彩、カンヴァス
© Courtauld Gallery (The Samuel Courtauld Trust)

この作品で描かれているのは2人組のカードプレイヤーですから、遊んでいるゲームはブリッジではないと思われますが、この作品を見て「カードゲームの様子を描いた美術作品って探せば他にもあるんじゃないかな?」と思いつき、Google Arts&Cultureで探してみることにしました。

Google Arts&Cultureとは?

このサービスは、Google Cultural Instituteと連携している2000以上の美術館や博物館等の施設が所蔵する美術作品や歴史的資料をオンライン上で公開しているものです。また、Googleマップのストリートビューを使った登録施設のバーチャルツアーも体験することができ、おうちにいながら美術鑑賞や博物館の見学体験ができる、ステイホームにもぴったりなサービスです。

例えば、ブリッジで一番強い数字のカード「Ace」というキーワードで作品を検索すると、こんな作品がヒットします。

ジョルジュ・ド・ラ・トゥールという17世紀の画家が描いた"The Cheat with the Ace of Clubs"という作品です。何のカードゲームをしているかまでは分かりませんが、左の人物が背中にクラブのエースを隠し持ってニヤッとこちらに笑みを送っています。そう、カードゲームでイカサマをしているんですね。この作品は有名なので教科書などで見たことがある人も多いでしょう。

また、「card player」というキーワードで検索すると、冒頭のカレンダーの絵柄によく似た作品がヒットしました。実は、ポール・セザンヌはカードゲームを題材にした作品を複数手掛けていたのです。ちなみにこちらはフランスのオルセー美術館が所蔵しています。

さらに、同じキーワードで別の作品もヒットしました。こちらの作品も先ほどのジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品同様、イカサマカードゲームの様子が描かれています。

ギャンブルにはイカサマがつきものなのでしょうか…絵画にするにはドラマチックな場面ではありますけれども。

こんな感じで、ブリッジやカードゲームに関するキーワードで検索をしてみたら、興味深い作品をいくつか見つけたのでご紹介しますー。

18世紀 〜カードゲームに興じる貴族たち

18世紀の作品で多く見かけたのは「カードゲームをする貴族たち」を描いたものです。美しく着飾った貴族たちがお屋敷の中でカードテーブルを囲んでいます。

こちらの作品のタイトルになっている「カドリールのゲーム」とは、ウィキペディアによるとブリッジと同じようにペア戦でプレイするトリックテイキングゲームの一種で、18〜19世紀に遊ばれていたカードゲームなんだそう。(ウィキペディアの「カドリーユ」のページを参照)

また、こちらの作品もカドリールに興じるフランス貴族たちを描いた作品のようです。

その他、カードゲームの種類までは特定できませんが、イギリスの貴族がカードゲームをしているティーパーティーの様子を描いた作品もありました。


19世紀 〜絵画・挿絵・写真に見る社交のカードゲーム

今回Google Arts&Cultureで検索した中で、ブリッジらしい場面を描いた作品として優れていると思ったのは、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレイが描いた「Hearts are Trumps」という作品です。タイトルも「ハートが切り札」という実にブリッジらしいもの。カードテーブルを見るとダミーの手札が置かれているようにも見えます。そして、こちらを見つめる右端の女性の手札を見るとハートのカードが…

この作品はイギリス貴族の娘たちを描いたものだそうですが、服装や室内の調度品なども相まって画面全体に優美な雰囲気が醸し出されています。個人的にミレイは好きな画家でもあったので、ミレイがブリッジを描いた作品を残していたと知ることができ、嬉しい収穫でした。

さて、これまで見てきた作品は絵画ばかりでしたが、カードゲームをする人々を描いた作品は印刷物にも見られます。こちらの作品はブリッジの祖先にあたるゲームであるホイストをしている人々の様子が描かれています。ゲームのミスをしたパートナーの女性に怒っている男性の表情がコミカルです。

さらに、この時代になると写真も撮影されるようになっています。こちらの写真はアメリカの家族がカードゲームをしている様子だそうです。部屋の家具や調度品を見ると暮らし向きが良さそうな家庭ですが、この写真の裏面には「1891年10月5日に購入したピアノ〜(略)〜1896年3月20日に支払い完了」と書かれていたそうで。


20世紀 〜モダンな表現と記録写真

20世紀に入ると、絵画の表現は写実性に囚われない、自由な表現が生まれていきます。オランダの画家、テオ・ファン・ドゥースブルフの「Card players」はテーブルを囲む4人の人物の様子が見て取れますが、図形のように単純化した表現で描かれています。何のカードゲームをしているかは分かりませんが、4人のうち1人が見学していたり、画面上部に4枚のカードが示されていたりするところを見ると、ブリッジっぽさを感じなくもないですね。

次の作品は1953年に描かれた「The Card Game」という作品です。アフリカ系アメリカ人の主題を描いたことで知られるジェイコブ・ローレンスという作家によるものです。こちらも何のカードゲームをしているかは特定できませんが、細部の表現に拘らず、勢いのある筆致でゲームの様子が描かれています。


また、20世紀は写真が普及し、カードゲームの様子を撮影した写真も数多く残されています。Google Arts&Cultureでは、写真を構成の中心に据えた「グラフ雑誌」として有名な「LIFE」誌のフォトコレクションを見ることができます。その中に、ブリッジをしている人々の写真がいろいろあったのでご紹介します。

まずは、リゾートホテルを訪れた宿泊客たちがブリッジをしている様子。

こちらはアメリカ人のご婦人が難しい顔をしてブリッジをしているところ。

長距離鉄道の座席でブリッジに興ずる紳士たち。

アパートの一室でカードゲームをする奥様の集まり。

様々な場面でブリッジが行われていたんですねー。

そして、これまでの写真とは異なるタイプの写真もあったのでご紹介。「Dallas Aces-Champion Bridge Players」というタイトルの写真です。何かの記念写真のようですが、タイトルといいカードの並べ方といい、明らかにブリッジに関する写真のよう。

調べてみると「Dallas Aces」とは、1968年に世界で初めて結成されたブリッジのプロチームなんだとか。LIFE誌が彼らを取材したときの写真が残っていたのかもしれませんね。

まとめ

今回はGoogle Arts&Cultureでブリッジやカードゲームの様子を描いた作品をいろいろ探してみましたが、思った以上にヒットしてとても面白かったです。何百年も前の時代の人たちと、現代を生きる私たちが同じカードを使って同じようにゲームをしていると思うと感慨深いですね。また、今回の調査を通じて自分が知らない作品やブリッジの歴史を知ることができたのも楽しかったです。

しかし、Google Arts&Cultureに掲載されていないブリッジに関する作品もあるかもしれないので、新たな作品との出会いも期待したいところです。調査の旅はまだまだ続く…ではー。


サポートはコントラクトブリッジに関する記事執筆のための調査費用、コーヒー代として活用させていただきますー。