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UNDERGROUND BAKERY 神戸

神戸の焼き菓子屋さんUNDERGROUND BAKERYへ。
大雨の平日にもかかわらず、11時の開店10分前にはすでに5人ほど並んでいる。

上部の看板も可愛いのだけど
傘をさしながらじゃないと無理な大雨の日で撮影が難しく
ピンク?とミントグリーンのコントラストが印象的

店内には2人ずつ入り、見本を見ながら注文するスタイル。

開店直前に見本を設置していた

店主は大学の2つ下の女性で、今回サプライズ訪問。

彼女の今を知ったのは、この本の告知を見て。

(前略)好みは人の趣向によってそれぞれなので、全員がおいしいと思うものってないと思うんです。だから私は自分が見つけた好きな味を、頑固に貫いている。伝統的なお菓子だから作ろうとか、イギリスのお菓子屋さんならこれを作らないと、という気持ちではやっていません。本当に自分が食べたい味、自分が好きなものだけを作って、それを気に入っていただける。共感してもらえる。おいしいというのは作り手と食べ手が心で語り合うことだと思っています

『私と世界をつなぐ、料理の旅路』p113

本の内容を彼女の声で再生しながら、やさしさの中にある芯の強さを懐かしく思い出し、その後の人生の歩みの素晴らしさに感嘆した。そして粉と一緒にふるいにかけられたなめらかなセンスとともに食べ手になってみたいと思った。

外国語学部の子が多かったからか、単身海外旅行や留学を次々に実現していく2つ下の子たちはとてもまぶしく、私も遅まきながら大学4年の時に一人での海外旅行を決意した。自分より若い人の力を素直に認めて見習うことを20台そこそこでできたことは後の自分にとても良い影響を与えてくれたと思う。

本を読んでから1年かかり、さて行こうという時に連絡するかどうか迷ったけれど、日常の彼女、店主としての素の彼女を見てみたいと思い何も言わずに訪問した。

開店を待つ間、見本を並べる手だけが見える。ほどなくして笑顔とともに最初のお客さんを迎え入れ、そのうち順番が回ってきて入店。
店内は香ばしい匂い、ラジオからはBeckのLoserが流れていた。
私たちが同じ時間を過ごした90年代の空気を思い出させてくれるなかなかオツな選曲だ。ローファイ、無力感を覚える歌詞、GENUINE90'sだ。

気づかれない(10年以上会っていないしマスクもしている)のも仕方なしで「Rちゃん」と声をかけ名乗る。
接客用ではなく素の声に戻って、私もやっと本当に本人だと確認できた。

レジ前も絶妙なディスプレイ

本でも言及されていたウェルシュケーキ、他にティールームスコーンブラウニーを選ぶ。
常温だと日持ちしないので、旅を続ける私は欲張るのはやめて、この3点とオリジナルコースターを購入。
どれも彼女の心意気を感じる、本当に美味しい一品たちだった。

旅先のお部屋にて
TeaではなくCoffeeにて失礼!
ほどよくしっとり、サクサクしたスコーンは絶品

雨の中待つお客さんが後にもいて長居はよくないと、バタバタとその場を去ったけど、お菓子を渡してくれる時に両手でぎゅっと手を握ってくれた
思わず「あったかーい!」と声に出してしまう。
人の手ってあったかい
母の手から温もりがなくなっていくことを知ってしまった自分の手の記憶を、今たくさんの人から支持されるお菓子を生み出している彼女の手の温もりで溶かしてくれた気がした。

それぞれの年次で大学を卒業し四半世紀ほど、歳を重ね、共通の友も失っている。
これからあと何回会えるのだろう?
こうして雨の神戸を、きっと忘れないと思った。


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