イギリスで水中出産というナチュラルな選択をした結果

夜中、胸の痛みで目が覚めた。

一昨日、私はイギリスで第二子となる次女を出産した。自分でいうのもなんだがとても安産で、病院に着いてから1時間半、プールに入ってからは20分で我が子は出てきてくれた。

イギリスではスタンダードな水中出産

プールというのは”水中出産”のこと。イギリスにある病院の分娩室(バースセンター)には大抵お風呂より少し大きいくらいの温水プールが必ずついていて、自然分娩を希望する人は利用することが多い。いや、利用するかわからないけどかなり浸透している選択肢の一つだ。

イギリスで産むからにはイギリスらしいお産がしたい。妊娠した当初からその想いはあった。
周りの噂によれば、バースセンターではほぼ医者は未介入で、ミッドワイフと呼ばれる助産師が中心となって出産をサポートしてくれる。
”自分の好きなように産む”というスタンスが基本なので、何か問題がなければほとんど放っておかれるのが常だし、臨界点でも「いきんで!」という声掛けもないらしい。

言うなれば超ナチュラル。好きなように、自分のタイミングで、産みたい時に産む。二人目ならまだしも、初産だったらいきむタイミングも分からないだろうし、それが本当ならかなり酷なことになりそうだなと思った。

ドゥーラとの出会い

後期に入りいよいよバースプランを考えるとなったタイミングで(バースプランとはどんなお産がしたいか医者やミッドワイフに伝えるためのもの)、本当に水中出産で良いのか改めて考え始めた。

だってコロナもあって親はこっちにこれないし、退院は翌日だし、3歳の上の子だっている。産後夫婦二人でやれるのか、不安が募った。
だったら産後の回復が早いと言われている無痛の方がいいのではないか。日本と違って、無痛も無料だし。

そんな風に頭を悩ませている中、近所に住むママたちとお茶をするタイミングがあった。ある先輩ママが「私はドゥーラを頼んだよ。」と教えてくれた。
ドゥーラってなんだろう?以前夫がそんなことをチラッと言っていた気がするけど、なんなのか分からなくてスルーしてしまっていた。

家に帰って改めて調べてみると、ドゥーラとは”出産付添人”のこと。産前産後の精神的なサポートをしてくれる人だ。出産時には夜中でも駆けつけてくれて、身の回りのお世話や有事の時に自分にどんな選択肢があるのかアドバイスをくれたりと、妊婦が安心して出産できるようなんでもやってくれる。
ロンドンにいるたった一人の日本人ドゥーラ。日本語も英語もできるからもちろん通訳もしてくれるし、異国で右も左も分からない出産だから、付き添ってくれるだけでとても安心できそうだ。

気になった私はその日のうちにドゥーラさんに連絡してみた。
幸い私の出産予定日付近には重なっている妊婦さんはいなく付き添い可能という返事が来た。
一度ズームでお話して、親しみやすい雰囲気がとても素敵だったので夫に相談してお願いすることにした。

じゅんこさんというドゥーラは産前からまめに連絡をとってくれ、一度うちに来てくれて夫婦揃って産前学級も受けた。
赤ちゃんを産むときのホルモンの働きとか、どうやって赤ちゃんが産道を通って生まれてくるのか模型や資料を使って説明してくれたり(イメージしやすいから夫にとってもありがたかったと思う)、日本とイギリスのお産の考え方の違い、病院の仕組みなどこっち特有の事情もお話してくれた。

産前にコンタクトをとってくれるのはとてもありがたく、相談しやすい雰囲気づくりと関係構築が心地よくて信頼感が高まった。

冒頭の胸の痛みっていうのは母乳が軌道にのるまでのおっぱいの痛み。
なんだこれっていうほどガチガチに張って、少しでも赤ちゃんに飲んでもらわなきゃ楽にならない。
かといって飲ませるのも一苦労で赤ん坊も不慣れだから、乳首から血も出る。
出産も大仕事だけど、産後も母は至るところに痛みは続く。

それでも、産まれてきた我が子はこの上なく愛おしい。
しかも自分の望むかたちで幸せな出産を経験することができたから、今の私にはなんでもできる気がする。(髪はぼさぼさ一日中パジャマで眠けと闘う三十路女だけれど)

イギリスでの出産

イギリスでの出産は、私に母としての自信のような、肯定感のような、表現しにくいけどそんな強さを与えてくれた。

その出産を全力でサポートしてくれたドゥーラさんに感謝したいし、陣痛から出産までスムーズに頑張って下りてきてくれた娘にもありがとうと言いたい。
妊娠中から支えてくれた夫とまだまだ甘えん坊盛りな長女にも。

極度な心配性の母をはじめとする日本にいる家族、当日退院した産後にごはんの差し入れをたくさん持ってきてくれた近所の友人たち、みんなに支えられてあなたは産まれてきた。

異国での出産は、私ひとりじゃないという周りの温かさも感じられる、かけがえのない経験となった。

(補足:実際に生まれたのは先月ですが書き始めたのが産後すぐだったため冒頭の部分はそのままにしています)

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