娘と二人で過ごす最後の夏
朝9時に、娘とともに公園へ向かった。夏の日照時間が長いイギリスは朝9時でも十分に早朝のような、朝特有のツンとした澄んだ空気が流れる。
その空気を味わえただけで、「ああ、外にでてよかった。」と思った。
公園もまだ人は少なく、のびのびと遊べる。夏休み中、イギリスの子供たちはサマーキャンプと呼ばれる、サッカーやテニスなどのスポーツクラブに入ったり、アートやドラマ(演劇)、乗馬など子供の得意を伸ばすようなアクティビティに参加して夏を過ごすことが多い。もちろん日本と同様、帰省や旅行にも行くだろう。
だがそのようなアクティビティに参加できるのは大抵4歳からで、3歳の娘はなかなか参加できるサマープログラムがない。
というわけでこの夏は毎日私と過ごす日々が続く。嬉しいような、ちょっと自分の時間もほしいようなそんないろんな意味でのセルフマネジメントが必要になりそうな夏だ。
朝9時の公園スタートは正解だった。まず空気が気持ちよかったことで私は気分が良くなった。娘も公園に向かうと聞いて嬉しそうだ。滑り台をしたりお店屋さんごっこをしたり、長い棒にぶら下がったり、いつものように楽しく過ごした。
1時間半ほど遊んでから、少し小腹が減ってきたのでカフェで涼んで休もうと思った。
近くにメイズオブオナーという、おいしいタルトの焼き菓子があるお店がある。そこでちょっとお茶をしよう。
娘とカフェなんて、なんか夏休みっぽい企画ではないか。私の提案にすぐ乗ってきた。
最近お店に行くと美味しいものが出てくるとわかってきたのか、結構ちゃんと座っていてくれる。家とはちがう壁の絵やインテリア、レトロな電球に興味津々の様子だ。
昼前なのにそのレトロな電球がパッとついて、娘は少し驚き、「こわいねえ」と言った。
イギリスにはどこのカフェでもベビチーノという子供用の生温かいミルクを頼むことができる。今回もそれと紅茶と、クランペットという朝食によく食べられるパンを注文した。
厚さ2−3センチほどの、丸い平べったいパンだ。表面に大きめの気泡のようなポツポツがある。イギリスに住む前までこの食べ物の存在は知らなかった。
食感はもちもちと弾力がある。気泡がある表面部分にバターを塗るとよく染み渡り、風味が口全体に広がる。こんな見た目だがきちんと美味しい。
バターはイギリスに来てから摂取量が爆発的に増えた。パンが身近でバターも安いとなったら誰でも自然とそうなってしまうだろう(と信じたい)。
そんな風にゆっくりと過ごしながら、あっという間に1時間くらいがたった。最後にタルトを持ち帰り用に一つ買って、店をあとにした。
午前中こんなにも娘と穏やかに過ごせるんだなと正直思った。それと同時に娘の成長もしみじみ感じた。
※
思えば秋に第二子が生まれる。この夏は娘と二人きりで過ごす最後の夏ということだ。
娘がサマーキャンプに行けない3歳でよかった。この夏は自分を甘やかしてでもいいから毎日ご機嫌に過ごして公園も水遊びもピクニックも、思い切り楽しんで過ごそう。
心に余裕を持つことは、たぶん自分が思っている以上に、周囲や子育てにも影響する。
そんなスケールの大きな話ではないのだけど、1日の小さな始まりから、そんなことに気付いたのだった。
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