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【不思議な体験】地元で有名な底なし沼からあがったものの正体



オレの地元にはちょっと、いや、かなり不気味な沼がある。

赤と黒と緑がめちゃくちゃに混ざったドロドロ沼で、中の様子は見えない。
でもって入ったが最後、二度と上がることはできないらしい。

いわゆる〝底なし沼〟ってやつだ。

「沼に近づくな、〝主〟に引き込まれるぞ」

これはもう一種の合い言葉だった。
両親、祖父母、学校の先生、近所のおじちゃん、おばちゃん・・・・・・
地元の大人という大人から、耳がタコになるほど聞かされた。

沼の主ったって、昔話みたいに生け贄を差し出せとも言わないし、
実際に子どもが引き込まれた事件があったわけでもない。

それでも物心ついたときには、オレたちガキは沼を心底恐れるようになってたし、間違っても沼でイタズラしようなんて言い出すヤツはいなかった。

そんな状況が変わったのはオレが小学6年のときだ。

しょうもないことで友達とケンカして一人で帰ってたら、沼の方から不審な音がきこえてきた。
おそらく山から下りてきたサルか何かだろうと思った。

おそるおそる沼に近づくと、見知らぬ男がいた。
足下にはケースが置かれていて、なにかの作業をしていた。
釣り? こんなドロ沼で? オレの頭に?が飛び交った。

なぜかここで記憶がぶっ飛んでる。

あとから聞いた話によると男はあっさり捕まって追い出されたらしい。
あれだけ沼に入るなって言ってたのに、それだけかよって思ったよ。

けど、そのあとすぐ中学入ってやれ部活だ、試験だ、恋だなんだって、思春期突入して、沼のことなんてすっかり忘れちまった。


それがつい最近、十数年ぶりに沼のこと思い出した。

オレは初めてできた彼女と潮干狩りに来てた。
アウトドアなデートで一気に距離縮めてそれから・・・って下心いっぱいだったんだが、泥ん中でうごめく生き物を見てたら、雷に打たれたみたいにあの日の記憶が蘇ってきた。
まあ雷に打たれたことはないんだけど。

結論から言うと、あの日あの沼であの男は釣りなんかしてなかった。
逆にケースから何かを入れてたんだ。

何かっていうと・・・・。

グロい話は無理ってヤツはここで止めておくことをオススメする。

男が沼に入れていたのは、切断された手首、それから目・・・・・・
泥浜の魚と目が合って、オレは盛大にゲロって彼女にフラれた。


寝ても覚めても沼のことで頭がいっぱいになってしまったオレは、地元に舞い戻った。
記憶がぶっ飛んでたわけだし、勘違いって線もあり得る。
でも確認せずにはいられなかった。

人目を盗んで沼に来たオレは、金属製のメジャーを沼に投入した。
ホームセンターで買ってきた一番長い10mのメジャーだが、底なし沼だからな、途中で足りなくなることは想定済みだ。

でも、予想に反してメジャーは2mの手前で止まった。

底なし沼? 沼の主に引き込まれる? 全部大嘘だった。

シャベルで沼をさらってみたら、まあ出るわ出るわ。古いものから新しいものまで、人骨の山がね。

真相はなんていうことはない。
さびれた町の運営に困った町長が裏社会の人らと契約して、沼を死体処理場にしていたんだ。地元の大人たちも薄々気づいてたんだ。

だから沼を怖がらせて、近づけさせないようにしてたってわけ。


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