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初めての恋愛から解けるまで【遠距離】

「好きな人ができた」
約1か月前、もうすぐ3年目になろうとしていた遠距離恋愛が終わった。
更に言うと、振られました。

専門学校の同じ学科で、驚くほど趣味や価値観が似ていて、とにかく居心地が良かった。
こんなに人を好きになったのは初めてで、ドギマギしながらアプローチして、卒業のタイミングで付き合ったため遠距離スタートとなった。
彼とは2年後同棲をする約束をして、当然のように結婚すると思っていた。そんな話も、何回も擦り合わせたっけ。

私達は一週間に1回、日曜日にだらだら電話をしていて、4か月ぶりに再会した日の後から2週間、何かを思い詰めているような呟きを小出しにしてきていた。
最初は仕事の事かなと思っていたけど、いよいよ問いただしたとき「素直な気持ちで話したい」と返信が返ってきて。正直怖くて仕方なくて、きっと私達に関するいい話ではないという事に気づいてしまった。

よりによって月曜の仕事終わり、電話越しに重苦しい空気が流れ込む。沈黙が耐えられなくて、私は1人で最悪な司会者に立ち回る。
「この問題って、話し合って解決できる?」
「…もう、無理かな」
「私の事を好きじゃなくなった?」
否定してほしいと心底願った。でも、沈黙を受け取って出た言葉は「やっぱりそうだったんだね」だった。

ずっとずっとどこかで、こんなに上手く行くわけがないと思っていた。
彼は優しくて誠実で、喧嘩をしたこともなく、それ故にお互いがお互いを想う気持ちに変わりはないと思い込んでいた。
だけどその優しさはいつしか彼氏だから、という義務感から来ていたようで、彼の想いはもうついて行けなくなったらしい。

トドメはこうだ。「好きな人ができた」
これには意外すぎて怒りよりも憎しみよりも、諦めが真っ先に辿り着いた。
過去には人との関係を諦めていたと、そうぽつりとこぼしたあの人が自ら人を好きだと言うなんてよっぽどだと、その時点で勝ち目はないと悟った。

この後2回電話をして、正式に恋人ではなくなった。簡潔に纏めると彼は同じ職場の人に告白され一度は断ったものの色々考えた末、あちらを選んだとのことだ。絵に書いたように遠距離な上で一番恐れていたことが起こってしまった。
最後の最後の電話なんて、別人かと思うほど冷たかった。それほどまでに今はお相手に夢中なんだろう。でもその冷たさが、私を救う手立てとなったことは間違いない。

振り返ると私は彼の事を好きすぎていた、まるで洗脳にかかったかのように。そもそもこの恋は一目惚れから始まっていて、彼にしてみれば友達期間だった時も、恋人になった時も私は『好きな人』としてしか見ていなかった。とにかく強い縁を感じていて、彼氏という肩書が薄っぺらく感じて気に入らないほどだった。
今思えばこれは、『憧れ』が一番近いのだと思う。
もちろん2年の間合わないところも見つけたけど、圧倒的に会って一緒にいれることの幸せや嬉しさの方が勝っていて、嫌いな部分なんて1つも無かった。というか無いと信じ込んでいた。
ここまで来るともう『崇拝』だ。きっとそう。

そこを、あの最後の冷たさが打ち砕いてくれた。少し恨みつらみを言い合ってしまったあの時初めて怒りを見せたあの人に、ああなんだ、こんなに自分勝手なところがあるんだとネガティブな人間的部分をようやく見つけ出した。
2年間で会えたのはただの10回もなくて、実際に隣にいた時間は纏めても1ヶ月ぐらい。
だから、今まで本気で感情をぶつけ合ったことが無かったのだ。きっとこのままぬるぬると交際していてもいつか破綻していた。そう思うと、うやむやにせずこの関係を終わりにしてくれたのは最後の誠実さだろう。

少々後味の悪い最後にはなってしまったけど、その1個前、2回目の電話では朗らかに、まるでエンドロールのような会話ができた。
この2年間が楽しくて大切だったことは間違いない、だから忘れようとは思わないと、そう言ってくれた。それだけで、私は十分満足できた。
初めての恋を実らせた努力は報われたし、最初は付き合うということがよく分からなかったと呟いた彼がそこまで思ってくれたほど、お互いひたむきに過ごせたのだから。私から出来ることは全て全うした、そんな清々しさがあった。

流石に恥ずかしさ、劣等感、憎しみや悔しさなんて黒い感情に支配される時もあったし、辛くてたまらなかったけど、2人ともにとって成長痛を伴う前向きな決断になった事は間違いないでしょう。

だから今は意外と晴ればれとこう言えるかな。
私もこの2年間をきれいにしまっておくね。
楽しかったよ、ありがとう。


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追記:この先に見えた光、これからの私

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