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『キウイγは時計仕掛け』森博嗣

このタイトルからページを開いてくださった方はきっと森博嗣さんの作品をある程度お読みになっているものと推測します。

以下、ネタバレを含みますので、一連のシリーズその他の作品を未読の方はご注意くださいませ。




【簡単なあらすじ】
建築学会が開催される大学に奇妙な宅配物が届いた。中身は、プルトップが刺さったキウイがひとつ。
そしてキウイには「γガンマ」のギリシャ文字が刻まれていた。
その夜、学長が射殺される。


Gシリーズ第9作。

学会で発表するため現地に滞在していた加部谷恵美と、取材のため行動をともにしていた雨宮純をはじめ、犀川創平、西之園萌絵、山吹早月、海月くらげ及介、国枝桃子たちが総出演です。
あと、島田さんもひさびさの登場です。

事件そのものは、このシリーズ自体の異質さを知る人ならさして驚くようなものではなく。
殺人事件に対してそういう言い方は不謹慎ですけれども。
一般的なミステリーではそこが要となる、いったい誰が、なんのために、どうやって殺人を犯したのか、という謎や推理はこのシリーズではとくに重要視されることはなく(いちおう解決はされますけど)、すっきりしないまま終わるというのがお決まりのパターン。

なんとなくですが、真賀田四季博士が時を経て、百年シリーズの女王として君臨することになった、そこに至るまでの経緯というか移行のようすを、遠目からほんのり補うような、そんな位置付けのシリーズだとわたしは思っています。

事件そのものにはおそらく意味はない。その裏で、人類でもっとも神に近いひとりの天才があらゆる回路を駆使してなにかをしようとしている、そのほんのごく一部を垣間見るだけ。
そんな印象を受けます。


それにしても、みんな成長したなと思います。
かつてはあれほど事件に首を突っ込んでいた西之園萌絵が、おとなになってすっかり落ち着いていて。
犀川先生に似てきたなと、あらためて感じました。

山吹さんの成長っぷりも目を見張るものがあります。国枝先生のもとから独り立ちして、すっかり立派になって。

危なっかしい加部谷さんでさえ、今ではだいぶおとなしくなっているし。

ただひとり、通常運転なのは国枝先生でしょう。まったく変わっていないです。

今回は、珍しく少し不機嫌なようすを見せた犀川先生とは裏腹に、あの国枝先生が終始ご機嫌で。
しつこいようですが、あの国枝先生が。
読み終えたあと、いちばん印象に残っているのが国枝先生というくらい(笑)

加部谷さんは、今も海月くんに気があるのですね。

海月くん、彼はいったい何者なのでしょう。
思考のパターンが犀川先生とよく似ているみたいだし、西之園さんに対してなにか含みがありそうだし、犀川先生の血縁関係でしょうか。
林さんの息子か、保呂草さんと各務さんの息子?
あるいは小鳥遊たかなしくんの関係かもしれないなとも思ったり。

それとも、真賀田四季博士の組織のほうでしょうか。
謎です。


(2013年11/18 読書日記より)

***

【追記】
現在、シリーズ最新作は「WWシリーズ」でいいのでしょうか。
わたしはその前の「Wシリーズ」までしか追えていませんが、どんな展開になっているのでしょう。

Gシリーズラスト三部作のうち二作『Χカイの悲劇』『Ψプサイの悲劇』も衝撃的でした。島田さん……。
(Gシリーズ完結12作めは、現在『メフィスト』にて連載中の『オメガ城の惨劇』になるのでしょうか)

ちなみに、ここまでにすでに海月くんの正体は明かされています。

「Gシリーズ」「Xシリーズ」からの加部谷さんの変遷へんせんぶりがあまりに予想外で、彼女にはどうかしあわせになってほしいと願わずにはいられません。
『馬鹿と嘘の弓』でも切ない思いをしていましたし。
(続編の『歌の終わりは海』は積ん読状態でまだ読めていません。加部谷さん、またつらい目に遭っていないですよね……?)

正体といえば、探偵の赤柳初朗は誰なのか、いまだに謎のままです。
彼(彼女?)はいったい何者なのでしょう。

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