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17 見てはいけなかったもの・・・飛行機は悩ましい 追記(パキスタン)

 飛行機といえば、もうひとつ。

 中国からパキスタン北西部に抜け、シャンドール峠を越えるルートでチトラールへ、さらにペシャワールからラワールピンディ(イスラマバードの隣街)まで南下した。
 そこから今度は北東部へ行ってみたいという欲が湧いてきたのだけれど、道のりを考えると躊躇する。
 コーチ(小型のバス或いは大型のワゴン)なら、まずイスラマバードからギルギットまで、おそらく悪路を最短で一昼夜、疲労困憊してギルギットで1泊、で、そこからスカルドゥまでおそらくもっと悪路を最短で一昼夜。
 でも、飛行機だとたった45分。
 逡巡の末、空路を選んだ。わたしを飛行機に乗せるほどパキスタン山間部の道は険しい。
 
 PIA、パキスタン航空の国内線は粛々と、定刻にイスラマバードを離陸した。通路側の席から、ちらちらと、高度が上がっていくのを確かめる。
 と、雪の山々が見えてきた。7月のイスラマバードは連日40度を越えていて、雪のことなどまったく忘れていたけれど、そういえば北西部でも、真っ白なラカポシやティルチミール、ほかにも名前はないけど美しい山々がずっと視界にあったではないか。

 窓からはもう雪山の連なりしか見えなかった。
 うつくしい、と言ってしまっていいのだろうか。言葉にならなかった。
 (カミサマがつくって、カミサマが棲んでいる場所だ。)
 こんなふうに、上空から見下ろしたりしたら駄目なんじゃないか。ひんやり、汗が滲んだ。
 空路を選んだことを後悔した。やっぱり山道を苦労してコーチで行くべきだったんじゃないか。こんなにラクしてものすごい景色を見て、バチが当たるんじゃないか・・・・。

 乗り合わせた旅行者たちが、あれはナンガパルパットか、K2はどれだ、と、ざわざわしているうちに、バチは当たらず、飛行機はインダス川の上をくるりと回って、砂丘のような滑走路にするんと着陸した。

 帰路は予算の関係でコーチを予約した。
 まずスカルドゥからギルギットまで、まる一日。ギルギットに1泊して、翌日の夜行コーチでカラコルム・ハイウェイを、ラワールピンディまで帰ってきた。
 ハイウェイだが道はぼこぼこで、崖の下に転落してるトラックを何台か目撃し、コーチの窓を開けたら熱風と砂埃が入ってきて泣けた。くーーっ もちろん何度も故障して、パンクして、修理しながらの道のりだった。

 まあでも無事に、屋根に積まれたバックパックも落とされずに帰ってきたので良しとする。いろんな人に親切にしてもらったし。そのことはまた別の項で書きたい。
 カミサマの山々を飛行機から見下ろしてしまったことを、わたしは今でもちょっと反省しています。

プロフェッショナル

 
シャンドール峠のエピソードはこちらです。



 


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