食を取り巻く社会問題 調べた内容

この春に相席食堂チームは新メンバー10人を迎えた。新メンバーが興味のある食問題を相席食堂の企画に組み込むことができたら企画の内容が更に深まり、今後のメンバーのモチベーション向上にもつながるのではないかと考えた。そのため6月中旬頃から、メンバーにはそれぞれ興味のある食問題を1つ選び調べてもらった。6月25日のミーティングまでに各自で調べたことをまとめてもらった。以下がその内容だ。

家畜×環境、たんぱく質危機
家畜を取り巻く社会問題として、環境問題(地球温暖化と排泄物による環境汚濁)とたんぱく質危機が挙げられる。

・環境問題
①地球温暖化
◎そもそも地球温暖化とは?
 地球温暖化とは、温室効果ガスの増加によって本来宇宙に逃げるはずの熱が地表に過剰にたまり、地球の平均気温が上昇することである。
地球温暖化の原因となっている温室効果ガスは、大気中にある二酸化炭素(CO2)やメタン、フロンなどをさす。これらは地球の温度を温かく保つためになくてはならないものである(ゼロだと地球の平均気温は氷点下19度まで下がる!?)。しかし近年は、人間の産業活動によって温室効果ガスが過剰に増加し、短期間で地球の温度が上昇している。このまま地球温暖化が進行した場合、気候変動による異常気象の発生、海面上昇、自然環境・生態系の破壊、伝染病の拡大など多くの問題が懸念される。

◎地球温暖化と家畜の関係
 この地球温暖化の原因である温室効果ガス排出に畜産業が関係している。実は、家畜を育てるうえで、「メタンガス」という温室効果ガスが発生するのだ。日本国内の温室効果ガスの排出量のなかで、メタンガスが占める割合は2.3%ほどであるが(2021年)、メタンガスはCO₂の約25倍の強力な温暖化効果があるため、メタンガスの地球温暖化に対する影響は決して無視することは出来ない。
 畜産業のなかで、家畜の排せつ物、家畜の消化管内発酵(げっぷ)からメタンガスが発生する。特に家畜のげっぷは、国内農林水産業におけるメタンガスの約15.9%を占めている。

◎なぜ「げっぷ」からメタンガスが出るの?
 家畜のげっぷからメタンガスが発生する理由として、反芻動物であることが挙げられる。例えば、牛は、4つの胃袋をもつ反芻動物である。反芻とは、食べたものを咀嚼して胃に送り、また口に戻して咀嚼することを指す。牛が反芻して食べたものを消化している間、胃の中では微生物の働きによって食べたエサが発酵しメタンガスが発生するため、牛はメタンガスをげっぷとして体外に放出している。

②家畜排せつ物による環境汚濁
  また、家畜排せつ物の問題も深刻である。家畜は、1日あたり牛は約38人分、豚は4人分という大量の糞尿を排せつする。家畜の糞尿は量が多いうえに、汚濁による環境負荷も高くなっている。具体的には、豚の家畜糞尿をBOD(生物化学的酸素要求量)で換算した汚濁負荷量は、人間の10倍という高い数値を示している。家畜排せつ物が環境に悪影響を与えるのは、積み上げて放置する「野積み」や穴を掘り貯めておく「素掘り」などの、不適切な処理や保管などが原因である。一方、家畜糞尿は土壌開発のための堆肥や肥料として使える貴重なバイオマス資源であるため、家畜排出物の適切な処理と利用が環境保全にとって重要である。

・たんぱく質危機
 2024年の世界人口は約81億人であるが、2050年には90億人に到達すると予測されている。この人口増加に伴い、懸念されているのが「たんぱく質源の供給不足」である。
 これは、単純な人口増加によりたんぱく質需要が増加するだけではない。加えて、経済発展や食生活の変化から低・中所得国での動物性食品需要が拡大すると予測されており、今後のたんぱく質源供給不足の要因になると考えられる。

動物性タンパク質を代替するタンパク質への注目
 上記で述べたような家畜がもたらす環境への負荷を抑えて、世界的な人口増加によるたんぱく質不足へ対応できることから、植物性や昆虫性タンパク質などを使用した食品が注目されるようになった。大豆由来の植物肉や昆虫食、培養肉などの代替たんぱくの開発が進められているが、味や食感の再現性、コスト、安全性などの課題がある。
◎地球温暖化による穀物生産への影響は?
 植物性食品は大豆を主な原料とした物が多い。とはいえ、地球温暖化が進めば穀物生産に影響がでるのではないかと考え調べてみると、実は大豆は地球温暖化による収穫量の減少の影響が一番少ないことが分かった。
国立環境研究所(2021)によると、主要生産地域が多い中緯度地域では、小麦は2020年代後半から、トウモロコシは2030年代後半、米は2090年代から収穫量の減少が顕在化すると予測された。一方で、中緯度地域のダイズについては今世紀中(2000年-2099年には顕在化しないとの予測結果が発表された。
 このように、大豆は最も地球温暖化による収穫量の変動が少ないと考えられる。一方で、家畜の飼料となる穀物は収穫量の変動が予測されることにも注目しなければならない。
引用元:
国立研究開発法人国立環境研究所、最新の予測では世界の穀物終了に対する気候変動影響の将来見通しが顕著に悪化~気候変動適応の正念場、従来の想定より早い時期に~、最新の予測では世界の穀物収量に対する気候変動影響の将来見通しが顕著に悪化 ~気候変動適応の正念場、従来の想定より早い時期に~|2021年度|国立環境研究所 (nies.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

参考文献
WWF ジャパン、地球温暖化とは?温暖化の原因と仕組みを解説、地球温暖化とは?温暖化の原因と仕組みを解説 |WWFジャパン〈最終閲覧日2024年6月21日〉

Spaceship Earth、畜産問題とSDGsの関係|牛のゲップが環境問題の原因?日本の取り組みを解説、畜産問題とSDGsの関係|牛のゲップが環境問題の原因?日本の取り組みを解説 - SDGsメディア『Spaceship Earth(スペースシップ・アース)』〈最終閲覧日2024年6月21日〉

Re+、【家畜化向け】牛のメタンガスが環境に与える影響|対策と貢献が必要、【畜産家向け】牛のメタンガスが環境に与える影響|対策と貢献が必要 – Re+ │ 地域と楽しむ、挑戦する。新しい農業のカタチをつくるメディア「リプラス」 (shizenenergy.net)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

UP FOOD PROJECT、ー食に関する社会問題一覧、食に関する社会問題一覧 | UP FOOD PROJECT〈最終閲覧日2024年6月21日〉

ソーシャルグッドCatalyst、代替プロテイン(タンパク質)が注目される背景・市場規模・国内企業一覧、代替プロテイン(タンパク質)が注目される背景・市場規模・国内企業一覧 | ソーシャルグッドCatalyst (socialgood.earth)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

世界の食肉需要の行方

JIRCAS国際農研、247.低・中所得国における急激に変化する食の選択、247. 低・中所得国における急激に変化する食の選択〈最終閲覧日2024年6月21日〉

Utopia Agrivulture、2050年、お肉の未来はどうなっているか、2050年、お肉の未来はどうなっているか | Utopia Agriculture〈最終閲覧日2024年6月21日〉

国立研究開発法人国立環境研究所、最新の予測では世界の穀物終了に対する気候変動影響の将来見通しが顕著に悪化~気候変動適応の正念場、従来の想定より早い時期に~、最新の予測では世界の穀物収量に対する気候変動影響の将来見通しが顕著に悪化 ~気候変動適応の正念場、従来の想定より早い時期に~|2021年度|国立環境研究所 (nies.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

◎自分なりのまとめ
・将来、世界的に人口が増加するのは確実。人口増加に伴うたんぱく質源である食肉需要の増加は必至。
・人口が増える一方で、農地は足りていない。例えば、畜産をする農地、畜産のための飼料(エサ)を作る農地も足りない。かといって、森林を切って農地を確保すれば、二酸化炭素を吸収してくれる森林がなくなるため地球温暖化はますます加速していく。家畜の生産が増えれば、牛のげっぷからメタンガスが発生するため、地球温暖化の進行につながる(げっぷからメタンガスを発生させない飼料の開発が取り組まれている例もあり)。
・このままの畜産でいけば、限られた国で生産されるお肉に需要が集中し、価格高騰を引き起こすのでは?これが将来「普通にお肉が食べられなくなる」と言われてる理由の一つかも。低所得・中所得国の人はもっとお肉食べられないかも。
・今後自分が生きていくうえでお肉を食べ続けたいからこそ、普段の食生活の中に一人一人が少しの菜食を取り入れることで、食肉の需要と供給のバランスを整えられるかも?
けど、「お肉を食べ続けるために我慢して菜食をとる」のは嫌だと思った。あくまで、おいしいプラントベース、自分から進んで食べるような、お肉と何の遜色もないようなものがいい。

環境×農業
現状の課題
若者の農業離れと高齢化: 若者が農業に従事しなくなり、農業従事者の高齢化が進行中。農業の持続可能性が危ぶまれる。
技術と経済的支援の不足: 農業技術や経済的支援が十分ではない。

将来の課題
1. 人口減少と高齢化: 労働力の減少が農業生産や食料供給に悪影響を与え、地方の過疎化が進むことで農地管理や作物生産に支障が出る。
2. 気候変動: 異常気象や自然災害で農作物の収穫量が減少し、食料供給が不安定になるリスクが高まる。
3. 持続可能な食料供給: 持続可能な農業と食料の無駄削減が重要。地産地消の推進や環境に配慮した農業技術の導入が必要。

解決策
1. 食育の推進: バランスの取れた食生活を促進するために、学校や地域での食育プログラムを強化。
2. 国内農業の支援: 若者の農業離れを防ぎ、持続可能な農業を支えるための政策が必要。農業技術の革新や経済的支援などが挙げられる。

食の単一化とその問題
- 代替食品の利用: タンパク質は大豆、糖質と脂質はトウモロコシ由来の異性化糖やデンプンで補う動きが進行中。
- 生産集中と環境問題: 世界の大豆生産量の38%をブラジルが、トウモロコシの35%をアメリカが占める。ブラジルでは環境破壊の懸念があり、生産の一国集中による供給の不安定さや食の多様性の喪失が課題。

食料自給率の低下
日本の食料自給率は約37%で、主要先進国の中で最も低い。多くの食料を輸入に依存しており、世界的な食料供給の変動に大きな影響を受けやすい。天候の不安定化などによる世界的な食糧危機の際には、他国が自国の食料確保を優先するため、日本の状況は非常に厳しい。

環境×家庭
テーマ:家庭で実践できる環境に負荷をかけない取り組み
食の生産、加工、消費の一連のプロセスにおいてCO2や排水の排出、農薬や化学肥料等の使用、農地への転用に伴う森林開発、食品廃棄物といった様々な問題が生じている。日本の温室効果ガス排出量を消費ベースで見ると約1割は食関連だというデータもあるようだ。平均的な日本人の食事に伴うカーボンフットプリントは年間1,400CO2e/人と試算されており、肉類、穀物、乳製品の順でカーボンフットプリントが高くなっている。
ニュースで地球温暖化に関する話を見聞きする人は沢山いると思うが、具体的に家庭で多なうことができる対策を私自身あまり知らなかった。よって今回は「家庭で実践できる環境に負荷をかけない取り組み」というテーマで調べた。対策として3つ挙げられる。
 
①    地産地消を心がける
食料自給率とは国内の食料供給に対する国内で生産されている食料の割合を示すものである。カロリーに換算する方法「カロリーベース」と、経済的な価値に着目して金額に換算する「生産額ベース」の2種類の計算方法によって算出される。日本は食料自給率が低いのが現状だ。令和4年度における食料自給率は生産額ベースで58%、カロリーベースで38%となっている。図1を見ても、諸外国と比べ日本の自給率はかなり低く、先進国の中で最低水準となっている。家畜の飼料や小麦などを中心に輸入に依存している。そのため日本のフードマイレージは諸外国と比較すると高い水準になっている。フードマイレージとは「食料の量×輸送距離」によって計算され、食糧の輸入が地球環境に与える負荷を知るための数値だ。
フードマイレージを増やさない取り組みとして、国産の商品を選んだり、地産地消を心がけたりする方法が挙げられる。地域で生産された旬の農林水産物を新鮮なうちに消費することは、フードマイレージを減少させるだけでなく、地域内での経済循環を高め、且つ食産業を活性化させることにもつながり一石二鳥だ。

図1

②    有機農産物をはじめとする環境に配慮した食品の購入
有機食品等の環境に配慮した食品を購入することで、農業の自然循環機能を促進し環境負荷を抑えることができる。しかしここでのポイントは有機栽培を行うために森林伐採をすると別の観点で環境に負荷がかかるということだ。需要に応じた供給を実現しようとして耕地面積を広げるため森林伐採を行うと確かに今よりも多くの収穫高を見込むことができる。森林は地球温暖化防止のための様々な機能を持っているため、森林開発をしてしまうと元も子もない。
③    食べ残しを減らすことなどによる食品廃棄物の削減
日本の食品ロスは2017年度の推計で612万トンあり、このうち半分の328万トンは食品関連の事業所から、残る284万トンは家庭から排出されているとされている。多くの食品が廃棄されることでごみ処理費用が増大し、それに伴うCO2排出によって地球温暖化を促進させる。焼却時にCO2が排出される。水分を多く含む食品の焼却には多くのエネルギーが必要だ。もし食品ロスを10トン削減できれば、46トンもの二酸化炭素を削減することができるといわれている。消費者は食品を購入する前に冷蔵庫の在庫確認をおこなったり、食べきれる分だけ調理したり、また食材使い切りの工夫を行うことで食品ロス削減に貢献することができる。
 
参考文献
農林水産省、世界の食料自給率、世界の食料自給率:農林水産省 (maff.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月23日〉

 農林水産省、食糧自給率・食料自給力について、食料自給率・食料自給力について:農林水産省 (maff.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月23日〉 

農林水産省、「フード・マイレージ」について、data2.pdf (maff.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月23日〉

 環境省、サステナブルな食に関する環境省の取組について、000760254.pdf (mhlw.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月23日〉

未来の食
フードテックの可能性/フードテックとは?
フードテックとは、「Food」と「Technology」を組み合わせた言葉で、食の最先端技術のことである。最新のテクノロジーを活用して、食における問題解決や食の新たな可能性の拡充を目指す。

フードテックの事例
フードテックの一例としてパーソナライゼーションがある。自分の体質に合わせたサプリメントが有名だが、スープやスムージーなども登場しており、アプリケーション上で質問に答えていくものや、尿を採取して栄養不足を診断する検査キットを提供するものなどがある。これは「みんなのための完全栄養食」ではなく「あなたのための完全栄養食」をつくろうとする試みで、過剰な栄養素を摂らないことは地球環境を汚さないことにつながる可能性がある。そのほか、「日清の完全栄養食プロジェクト」も興味深いものだ。ここでは、とんかつ定食、カレー、ナポリタンなど、すでに300種類以上のメニューで完全栄養食の開発を進めており、パスタの麺にミネラルを入れ込むなどの工夫がなされ、おいしくて栄養バランスがいいものの開発を試みている。2022年には個人向けや社食・給食などで展開していく予定で、日本企業がWell-beingに直結するものを作り始めたことに対して、「加工食品で完全栄養食を提供できるようになれば、社会的なインパクトも大きい」と高く評価されている。

参考文献
BUSINESS INSIDER JAPAN、未来の食はどうなる?フードテックは人間を幸せにできるのか、未来の食はどうなる?フードテックは人間を幸せにできるのか | Business Insider Japan〈最終閲覧日2024年6月21日〉
 

サステナブルフードの可能性
サステナブルフードとは
「サステナブル」の概念が登場したのは、「環境と開発に関する世界委員会」が1987年に公表した「Our Common Future」という報告書であり、「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発」のことを「持続可能な開発」と表した。サステナブルフードとは、生産過程における環境負荷や、天然自然の浪費、生産者の人権侵害など様々な負の影響を抑えて、持続可能な生産方法で作られた食材のことである。 

サステナブルフードが注目される背景
・食品ロス
世界中では3分の1の食料が本来食べられるのに捨てられている。このことは、食料を生産するために使われた土地やエネルギー、水などの多くの資源の浪費にもつながっている。また、食品ロスから排出される温室効果ガスは8.2%といわれ、自動車からの排出量である10%と肩を並べるほどである。
・人口問題と飢餓
 飢えに苦しむ世界の人々の数は年々増加している。国連経済社会局人口部によると、世界人口は今後30年で20億人増加すると見込まれており、ますます不安が高まる。原因の1つに、世界の食糧が適切に配分されず、先進国に集中していることがあげられ、食料の偏りをなくすためにも、持続的な生産や消費を可能にするサステナブルフードの重要性が高まっている。

サステナブルフードの具体例
代替肉 
→大豆などの植物性由来の加工肉。肥満の軽減や生活習慣病の抑制、動物愛護、土地・水の節約や温室効果ガスの排出抑制への効果が期待されている。

サステナブルシーフード
→水産資源と環境に配慮したMSC認証を取得した漁業で獲られた水産物や、環境と社会への影響を最小限に抑えたASC認証を取得した養殖場で育てられた水産物。これらを積極的に購入することが、海の貴重な資源を守る事に繋がる。

フェアトレード商品
→フェアトレードとは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することにより、立場の弱い開発途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す「貿易のしくみ」のこと。フェアトレード商品を選ぶことは、生産者の労働環境や生活、人権を守ることができ、持続可能な生産へと繋がる。


未来の食 

フードテックやサステナブルフードは、持続可能な生産・消費につながる食品として、世界が今後直面するであろう様々な問題への対策の一つとして期待されている。

フードロス
日本における令和3年度の食品ロスは約523万トンにのぼる(農林水産省及び環境省)。このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万トン(前年度比+4万トン)、家庭から発生する家庭系食品ロス量は244万トン(前年度比ー3万トン)となった。
世界では10人に1人が栄養不足で苦しんでいる一方、大量に食品ロスが発生している状況や、食料の多くを輸入に頼っている日本で大量の食品ロスが発生している状況は解決すべき課題として問題視されている。
フードロスによってもたらされる問題には以下の三点が挙げられる。
①環境汚染
食品ロスがごみとして廃棄されて焼却処理される過程で排出される温室効果ガスのCO2(二酸化炭素)は、世界で排出されるCO2のうち、約10%を占めている(世界自然保護基金)。また焼却の際に発生する灰の埋め立てにも環境負荷がかかると言われており、食品ロスの削減が求められている。
②処理費用の増大
令和3年度のごみ処理事業経費(一般廃棄物処理事業のうち、し尿処理事業経費を除く)は約2.1兆円であった。国民一人あたりに換算すると年間約1万7,000円の負担に相当する額に、税金が使われていることになる。
③貧困や食糧不足
世界では約10人に1人が飢餓で苦しんでおり、日本では9人に1人の子どもが食事に困っていると言われている。その一方で食品ロスの発生量は世界で約13億トン、日本で約523万トンに上る。食料資源が有効活用されていないことや「食の不均衡」が起きていることがうかがえる。
また、将来予測される人口爆発により、先進国でも深刻な食料不足に陥る可能性があるとされている。

フードロスの削減によって以上の問題を解消できるほか、日本では食費は消費支出のうち4分の1以上を占めているため、食品ロスを減らすことで家計の負担軽減が期待されている。

  • 食品が廃棄される過程
    〇フードサプライチェーンにおける背景

  • 製造:需要を上回る製造、パッケージの印字ミスや破損による流通側からの返品などにより廃棄

  • 配送:売れ残り、パッケージの破損などにより、廃棄されたり食品製造業者へ返品

  • 販売等:小売店では、パッケージの破損や売れ残りによる返品・廃棄、飲食店では作りすぎや客の食べ残しにより廃棄

  • 消費:使い忘れや食べ残しなどにより廃棄

〇国ごとの背景
先進国:生鮮食品の外観を重視する「外観品質基準」が強いことや小売店での大量陳列、食品を簡単に捨てる余裕があることなどから加工、卸小売、外食、家庭の段階での食品ロスが多い。
途上国:衛生状態が悪く、不十分な保管施設では害虫やカビが発生し、作物が傷むことで販売不可に。また経済的に貧しい農家は人手や機械が手に入らないため、収穫が間に合わず作物を腐らせてしまう。

フードロス削減に向けた取り組み例
・ドギーバッグ:外食先での食べ残しを自宅へ持ち帰るため行為,またはそのための容器
・10月ロス削減月間:食品ロス削減推進法(正式名称:食品ロスの削減の推進に関する法律)では、毎年10月を食品ロス削減月間、10月30日を食品ロス削減の日と定めており、農林水産省により啓発が行われる。
・食品小売業による食品ロス削減:AIを活用し発注の精度向上させることで、根本的に廃棄される食品を削減したり、期限が迫った商品の値引き、販売促進機関を過ぎた食品をフードバンク団体へ寄付したりする取り組みが行われる。
・フードドライブ:顧客が自宅から余った食品を来店時に寄付してもらう事例も増えている。

参考文献
フードテックWeek、2024、「食品ロス(フ―ドロス)の現状は世界と日本でどう違う?原因や削減への取り組みを紹介」、https://www.foodtechjapan.jp/hub/ja-jp/blog/article_042.html〈最終閲覧日2024年6月21日〉

公益財団法人流通経済研究所 (note.com)、2022、「食品ロスについて考える~季節商品のプロモーション~」、https://note.com/dei_ryuken/n/n16efef0411a1〈最終閲覧日2024年6月21日〉

日本財団ジャーナル、2023、「世界で捨てられる食べ物の量、年間25億トン。食品ロスを減らすためにできること 」、https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2023/84322/food_loss〈最終閲覧日2024年6月21日〉

農林水産省、2020、「食品ロスの現状を知る: (maff.go.jp)」、https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html〈最終閲覧日2024年6月21日〉

World Food Programme (wfp.org)、2020、「飢餓と食品ロスに関する、5つの事実」、https://ja.wfp.org/stories/5factors_for_famine_and_foodloss〈最終閲覧日2024年6月21日〉

食の安全

1. 食品添加物の役割と摂取量

食品添加物の役割
・食品の安全を保持する。
・味や香りを高め、食品のおいしさを演出する。
摂取量の安全基準
・健康に問題がないと認められた食品添加物については、毎日一生食べ続けても悪影響がないと推定される量が定められている。
・例として、薄切りハムに含まれる保存料(ソルビン酸)の場合、健康に害がないとされる量は以下の通り:

  • 大人:ハム48枚相当

  • 子ども:ハム15枚相当

2. 添加物の複合摂取

複合摂取の懸念
・厚生労働省が安全性を認めているテストは単品で行われる。
・複合的に添加物を摂取した場合の安全性についてははっきりしていない。
・例として、以下の食品に含まれる添加物の種類:

  • おにぎり:約10種類

  • お弁当:約20種類

  • カップ麺:20種類以上

3. 食品安全性の懸念と対策

輸入食品の増加による懸念
汚染物質や農薬の問題、食品偽装などが頻繁に報告され、消費者の不安が高まっている。

食品安全基準の強化
輸入食品の検査を厳格化し、食品安全基準を見直すことで消費者の信頼を回復する必要がある。

考えたこと
不安な側面もあるが、正しい知識を知り、本当の食の安全性について考えたい。

参考文献
かんぽ生命 すこやか健康ラボ、vol.4食品添加物は本当に危険?知れば納得の正しい基礎知識教えます、Vol.4 食品添加物は本当に危険? 知れば納得の正しい基礎知識教えます|かんぽ生命保険 (japanpost.jp)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

食物アレルギー
食物アレルギー:特定の食品を摂取した際にアレルギー反応が起こること
(食品が皮膚についたり、空中に浮遊しているものを吸い込んだりすることで起こることも ある。)
・原因物質:主に食品に含まれるたんぱく質の一部
・種類
⇒特定原材料(重篤度・症例数の多い8品目)※表示を義務付けている
⇒推奨20品目(過去に一定の頻度で健康被害が見られた20品目)※表示を推奨


割合
特定8品目(特に、卵、牛乳、小麦、)加えて、木の実類(←近年増加)で7割を占める。

症状
皮膚への症状(蕁麻疹など)が最も多い 
※人によっては消化器や呼吸器に症状が現れる

食物アレルギーの有病率(日本の場合)
⇒全年齢を通しておよそ1~2%と推定
⇒小児、特に乳児(1歳以下)に多い
(↑おおよそ、10人に1人)
◦近年、食物アレルギーを持つ子どもが増加傾向
⇒外食に関して悩みを抱える人が増加している。
飲食店―食物アレルギーの食品を表示する義務はない。
    アレルギー表示をすぐ確かめられるお店が限られている。
    ⇒アレルギーのある方は、特定のお店に頼らざるを得ない。
                ↳アレルギー一覧表を用意しているお店

考えたこと
・食物アレルギーのある人が外食の際、不安を感じる要因の一つとして、店員のアレルギー への理解不足がある。
・今後、アレルギーを意識した食事が求められる。


 

★考えたこと・アレルギーの種類の多さから、完全にアレルギーフリーを実現することが難しい。【どうしていくべきか?】・できる限り多くの人に対応していくと考えると、いばりつの時のように、特定原材料8品 目にフォーカスして考えるのが良い。・人によって、代替の仕方を調整して全員が食べられる形を考える。【課題】・種類が膨大に必要になる。・調理器具等の共有からトラブルが発生する危険がある。

参考文献
【食物アレルギーに関する外食実態調査】外食時に発祥経験があるアレルギー当事者は約7割。原材料とアレルギー表示の有無がお店選びのキーポイント、https://about.caneat.jp/news/20210217/〈最終閲覧日2024年6月21日〉

Medical Note、増え続けている食物アレルギー−食物アレルギーの症状と種類− 、増え続けている食物アレルギー−食物アレルギーの症状と種類− | メディカルノート (medicalnote.jp)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

味の素株式会社、食物アレルギーの仕組みって?発症したらどうする?、食物アレルギーの仕組みって?発症したらどうする? | 味の素株式会社 (ajinomoto.co.jp)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

朝日新聞DEGITAL、食物アレルギーの子ども 52 万人超 前回調査より 12 万人増の原因は、食物アレルギーの子ども52万人超 前回調査より12万人増の原因は:朝日新聞デジタル (asahi.com)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

一般社団法人母子栄養協会、食物アレルギー全国実態調査結果(消費者庁)平成 30 年度 発表 、食物アレルギー全国実態調査結果(消費者庁)平成30年度 発表 - 母子栄養協会 (boshieiyou.org)〈最終閲覧日2024年6月21日〉

消費者庁、食物アレルギーに関する情報、食物アレルギー表示に関する情報 | 消費者庁 (caa.go.jp)〈最終閲覧日2024年6月21日〉



個人×食

生活習慣病
不規則な食生活によって、糖尿病や高血圧などの生活習慣病が増加している。特に若者の間で増加傾向にある。

増加傾向にある原因
加工食品や高カロリー食品の摂取が多い、運動不足、生活習慣の乱れなど
これらはコンビニエンスストアや冷凍食品、ファストフードなど調理工程を省いてある程度美味しいものを手軽に食べることができるようになったこと、運動をする機会の減少、ストレスによる過食や過度な飲酒、睡眠不足などによる生活習慣の乱れによるものであると考える。

予防方法
定期的な運動、年齢や性別に合わせたカロリーを摂取するバランスの良い食事、ストレス発散、十分な睡眠

参考文献
健達ねっと、若者の間で生活習慣病が増加している理由とは?予防方法も紹介、https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/health-care/29446〈最終閲覧日2024年6月21日〉


摂食障害
摂食障害とは食行動に関する重篤な障害のことである。太ることに対して恐れを抱き食事量を制限し極度の低体重となる拒食症、過食衝動をコントロールできず、短期間に大量の食べ物を詰め込むように摂取する過食症に分類される。

現状
もともと若い女性に多かったが、最近では年齢層が広がり男性でも見られる。日本の患者数は2万人以上である。拒食症は10代の女性が最も多く年齢が上がるにつれ発症率は低くなっている。過食症も10代の女性が最も多く発症率は拒食症に比べ高い。

原因
SNSによる不確かなダイエット情報
コロナをはじめとしたストレスが継続的に感じられる環境
自己評価の低下、傷ついた経験、不安、疎外感、孤独感
特にSNS では痩せ体系が可視化されることでやせへの執着心が生まれたり、アルゴリズムによって類似情報が多く目につくことで偏った情報を絶対視したりと、過度なダイエットを生み出しやすい。
摂食障害が進行すると、体調不良や死亡率の増加、精神疾患病などを生み出してしまう。
治療法
身体面と精神面の両方の治療があり、直接治療できる薬はなく、周囲の手助けが必要となる。

参考文献
medilead LABO、摂食障害とは?データから読み取れる現状を解説、https://www.medi-l.com/blog/medileadlabo-article/n0032/〈最終閲覧日2024年6月21日〉

MEDLY、摂食障害、https://medley.life/diseases/54c0fa7d6ef4587302f199e5/〈最終閲覧日2024年6月21日〉

孤食
孤食とは「1人で食事すること」。

・原因
孤食の原因は単身世帯の増加である。日本は2030年までに全世帯の4割に達すると予想されている。なかでも高齢者の単身世帯が増加することが予想される。

・影響
孤食による悪影響は2つある。

 1. 健康面
  栄養の偏りや食生活リズムが崩れる

 2.精神面
  コミュニケーションの欠如、社会性・協調性の低下、精神的不安定

また、孤食は「低栄養」や「うつ病」のきっかけとなり、高齢者の健康寿命を縮めてしまうリスクもある。

・解決策
1.栄養バランスの良い食事
・主食、主菜、副菜、汁物を準備する。主食は白米やパンから炭水化物を摂取できる。
・主菜では肉類や魚類などから炭水化物や脂質を補える。副菜は海藻やきのこ類から
・ビタミンやミネラルを得ることができる。

2.共食の場に参加する
家族と一緒に食べることが難しい人には以下の方法がある。
・友人と食事
・会社や地域のコミュニティ
・こども食堂
・高齢者向けのサロンなどが実施する食事会

まとめ
・孤食は健康面や精神面への悪影響が懸念されている。栄養バランスの良い食事をしたり
・共食の場に参加したりすることで解決できる。

参考文献
アスザックフーズ株式会社.“孤食が何が悪い?原因と問題点について解説”.アスザックフーズ.2024.
https://asuzacfoods.shop/blog/koshoku_column/ 〈最終閲覧日2024年6月25日〉

ニチレイフーズダイレクト.“孤食とは?原因や問題点、解決方法を解説”.ニチレイフーズダイレクト.2023.
https://wellness.nichirei.co.jp/contents/detail/_29 〈最終閲覧日2024年6月25日〉


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