子育ての隣に本⑤ わかった気になるのが一番怖い。『「発達障害」と間違われる子どもたち』
『発達障害と間違われる子どもたち』(成田奈緒子、青春新書)という本のことは、新聞広告で知りました。そこには次のような惹句が踊っていました。
落ち着きのなさ、偏食、パニック、かんしゃく、強いこだわり…
もしかすると、発達障害ではなく「発達障害もどき」かもしれません。
……うーむ、これはアレなんじゃない?
「近頃の親は、子どもに問題行動が見られたら何でも『発達障害』に結びつけたがる! けしからん!」的な論調の本?
そう思ってしばらくの間は遠ざけていたのですが、たまたまAmazonのポイントが余っていたので、気になって買ってみました。
読んでみて、わが子の発達に思い悩む人たちを責めることが目的じゃないと知り、安心しました(むしろ、良心的な内容だったと思います)。
個人的に刺さったポイントをピックアップしつつ、感想を書きたいと思います。
発達障害とされる子どもの数が増えている理由とは
第1章の冒頭では、発達障害とされる日本の子どもの数が、2006年と2020年で比べると10倍近くも増えているといったニュースが紹介されています。
……しかし、実はその中には、本当は発達障害ではないのに発達障害の子と似た傾向が見られる子ども、つまり著者が言うところの「発達障害もどき」の子が少なからず含まれているのではないか、という問題が提起されています。
ちなみに、この「発達障害もどき」とは、不規則な生活(特に睡眠時間の少なさや睡眠の質の低さ)が原因で多動や癇癪、集中力の低下、強いこだわり……など、発達障害特性に似た特徴が見られやすくなる状態を指しています。
で、そうした人たちなら、手始めに睡眠の習慣を継続的に変えるだけで、気になる行動を軽減できる場合もあるのだそうです。
「発達障害」という言葉が広く知られるようになった一方で、このことは意外と知られていないのではないか。
本書が生まれる背景には、このような問題意識があったようです。
睡眠大事! 7歳の子の理想的な睡眠時間は10.5時間
じゃあ、どんな風に睡眠を変えればいいかですが、特にポイントとなるのは次の2つのようです(「発達障害もどき」の人だけじゃなく、すべての人の健康に良さそうです)。
①まずは早起きを死守(朝日をたっぷり浴びるのが大事なので、6時30分までに起きる)
②すると、夜には自然と眠くなるので、本能に合わせて早寝する!
このやり方で、睡眠時間をしっかり取れるようにしていくといいそうですが、本書で併せて紹介されている「理想的な睡眠時間」が意外と長いことにも驚きました。
例えば、17歳なら8時間15分、7歳なら10時間30分。
大人でも最低7時間は必要とのことでした。
……実は、私は昔から「人より睡眠時間が長い」ことがコンプレックスで、「最低でも7時間半は寝たい!」と公言して笑われた経験もあるのですが、そこまでおかしなことを言っていたわけではないとわかり、なんだかホッとしました。
でも、早起きは苦手です(何の告白?)。
早起きができると、自己肯定感が上がりそうでいいなぁと思うのですが。
あと、睡眠の質向上という観点から考えると、お風呂のタイミングも大事みたいです。
寝る前よりも夕食前に入るか、朝風呂にするのがいいそうです(入浴によって交感神経の働きが高まると、目がさえてしまうので)。
夕食前か朝風呂って、旅館じゃないんだから!!
ドキッとさせられた「発達障害の素人判断」の話
……と、自分の意識の低さをムダに露呈させてしまった今回の感想ですが、この本でもう一つ、はっとさせられたポイントについて書こうと思います。
本書では、発達障害の子どもが増えているもう一つの背景として「発達障害という言葉の浸透」を挙げています。
発達障害という概念がメジャーになったことで、昔より多くの人が「もしやわが子も」と思ったり、他人からその可能性を指摘されたり。
そういう機会が増えた結果、発達障害の子どもも増えたのではないかというわけです。
発達っ子の親として、それ自体は決して悪いことではないと思っています。
必要な情報や支援につながりやすくなった結果だと思うので。
一方で、どきりとしたのは「発達障害の診断はすごく難しい」という話でした。
だから素人判断などできるものではなく、身近な人からその可能性を示唆されただけの場合は、そこで決めつけてしまわないように、とのことでした。
ちなみに、発達障害の診断が難しい理由は、ざっとこんな感じです。
①チェック項目がすごく多い
②チェック項目に対する回答は回答者―親とか学校の先生とか―の主観によって内容が変わりやすい
③だからこそ、医師が確かな見立てをできるかどうかが超大事
④診断時期によっても結果が流動的なので、1回の診断結果が絶対ではない
……など
これ、一見当たり前のようでいて、発達障害に関する情報が以前より簡単に得やすくなった今、大事なポイントなんじゃないかと思いました(特に④は覚えておきたい)。
かく言う私も、息子に発達の遅れがあるとわかってから、通信教育で発達障害に関する勉強をしたり、いろんな関連書籍を読んできたりしたのですが、こうした知識が増えると、これまで見えていなかったものが見えてくることがあります。
例えば「息子は服が濡れるのや、初めての場所に出かけるのを極端に嫌がるけど、あれは自閉症スペクトラムの特性だったのかもしれないな」といったことから、「昔悩まされた、あの人のあの行動はもしかしたら……」といったことまで。
それで発達障害についてわかった気になっていた自分に気づきました。
でも、本来はそんな簡単なものじゃないんですよね。
発達障害に関する知識や情報が昔より得やすくなったこと自体はいいことだけど、それらは当事者や当事者と関わる人たちの困難を軽くしたり、必要な支援につながるために使うものであって、安易に他者をカテゴライズするために使っていいわけじゃない。
自分は得た知識を雑に扱って、「素人判断」したがっていなかっただろうか?と反省しました。
あの本を再読しようかな~
というわけで、いろんな気づきが得られた本でした。
本書を読んでいると、
「あ、ここに書かれていることは、モンテッソーリ教育で言われていることと似てるかも」
「この話は、昔、子どもの教育で言われてた『早寝早起き朝ごはん』ってやつ?(蔭山英男先生だっけ?)」
などと、別の場所で見聞きした情報が思い出されることがしばしばありました。
大事なことは、どこかでつながっているのかもしれませんね。
あと、本書で取り上げられている、現代の不規則なライフスタイルで「発達障害もどき」の子どもが増えているといった話と切り離せないのは、「スマホやタブレットとの付き合い方問題」なんじゃないかと思います。
『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン、新潮新書)も読み返そうかな~。
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