キミはバーミヤン少女合唱団を知っているか?
僕がまだ若かりし頃、横浜のみなとみらいで同伴のキャバ嬢の女の子と映画を観た後、近くのバーミヤンでディナーを共にしたときの話だ。
僕にとってのバーミヤンといえばまずはチャーハンなんだけど、その日もご多聞に漏れず僕たちはチャーハンと餃子とビールで楽しくやっていた。
そんないろんな意味で弛緩した状態なときに、突然、隣の席から女の子の歌声というか雄叫びが聞こえてきたものだから、僕は思わずズッコケそうになった。
そして、慌てて体制を整えて、その雄叫びの方角に目をやると、茶髪で明らかに体育会系じゃない方のジャージ(赤くて背中にKANIとか書いているタイプ)を羽織った、割と当時の横浜によくいるタイプのやんちゃ女子高生3名の姿があった。
つくづく困った若者だと苦虫をかみつぶそうとしたのだけど、よくよく聴いたその歌がなんだかとても良い曲だったのだ。
そして、歌っている彼女たちの表情もまた本当にキラキラと輝いていていたから、先程までのありがちな不良少女から一転、
バーミヤン少女合唱団(衣装はジャージ)
と化した彼女たちは本当によく通るダミ声でこんな歌詞を合唱していた。
不覚にもいたく感動してしまった僕は、矢も盾もたまらなくなって、結局、同伴の女の子と一緒にお店にも寄らず、そのまま自宅に直帰して、忘れないうちにとパソコンでこの歌詞をググって、この歌の素性を見事、突き止めた。
それは
銀杏BOYZというバンドの
「BABY BABY」
という曲だった。
・・とまぁ、これがその後、あしかけ10年くらい自分のカラオケの十八番となった青春パンクとの中々ドラマチックな?出会いのエピソードである。
というか、こんな出会いでもなければ30過ぎてこんな青臭い歌、歌わないよね。
しかし、それにしても
バーミヤンとジャージ女子高生と青春パンク
という今回の組み合わせは、個人的には
あの
部屋とYシャツと私
を越えるくらいのリアリティがあったなあ。
確かに僕らを取り巻く世界は安価な中華ファミレスの床のごとくギトギトに脂ぎっていて、しかし、そんな安くて決してきれいとは言えない世界にだって、ちゃんと人生の美しさは宿るのだ、
とまるで少女たちは僕に教えてくれたような気がした。
おそらく当時、社会人としてうまくやればやるほど、自分がどんどん薄汚れていくような気持ちを抱いていた僕だったからこそ、それはまるで福音のように鳴り響いたのかもしれない。
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