サザエピソード、ふたたび
いつだったか忘れてしまったけど、今日は割と鮮やかに僕の記憶に刻まれたサザエピソードをひとつ紹介したい。
ある日のこと、リビングで僕がひとりくつろいでいると、台所からまさにツカツカという感じで、妻がこちらに向かって直進してきた、と思ったら、藪から棒に僕の目の前に小さなアルミパウチをぶらさげて、一言
「これ、何だか分かる?」
と尋ねてきた。
それは明らかにペットフードの袋だったから、
僕が
「ああ、(飼い猫)のマルのエサだよね?」
と答えると、妻は、ここをよく見てとイワンの馬鹿りに、今度はパウチの下あたりに写っている動物たちの写真を指指した。
なので、いつものかわいい猫ちゃんの写真だよね、と思って覗いてみたら、そこには、なんといるはずのない
トイプードル、豆柴、チワワなど
かわいいワンちゃんたちが大集合していて、これでもかとばかりに愛嬌を振るまいているではあ〜りませんか(ここチャーリー浜の言い方でお読みください)
まあ要するに猫のエサだと思って買ったら犬のエサだった、ということのようだった。
しかし、もともと彼女がリアルサザエな人なのは僕も百も承知していたから、この手のうっかりは、たとえそれが14袋まとめ買いだったとしても、まあ想定の範囲内ではあった。
だから、
「まあもったいないけど、全部ワンちゃん飼っている友達にでもあげるしかないよね」
と僕が言ったら、ここからが彼女の面目躍如というか、こちらの想像の斜め上を行く衝撃の真相が告白されたのだった。
というのも、あの萩尾望都先生の傑作SF漫画
「11人いる!」
は本来10人しかいないはずの宇宙船の乗組員がなぜか一人多いという主人公たちの困惑を表していたけど、それにならうと、今回は
13袋しかない!
だったからだ。
ここで賢明な読者諸兄ならすぐに理解されたと思うが、要するにサザエ以上にサザエな妻は、購入後もそれがドックフードだと全く気づかないまま、すでに一袋、マルに与えてしまっていたのだった。
しかし、当然ながら、マルの食いつきが明らかに悪くて、その彼の様子を見て、あれ?と思った彼女が初めて(!)その袋をきちんと確認したところ、そこには先ほどもお伝えしたとおり
トイプードル、豆柴、チワワなど
本来、そこにいるはずのないワンちゃんたちがこれでもかとばかりに愛嬌を振るまいていたので、ここでようやく彼女の心の中の鈴木雅之が
「違う、違う、そうじゃ、そうじゃな〜い!」
と歌い始めたそうだ。
……。(あ然)
というか、
「あれ?なんかいつもと違うなあ」
と首をかしげながらドッグフードを食べているマルの姿を想像して、本当に
彼のことが不憫で仕方なかった。
しかし、当の本人はと言うと、
「まあこれってよくある話だよね」
とまったく悪びれる様子を見せていなかったので(よくある話なわけあるか〜い!)、おそらく
またきっとそのうち同じ過ちを繰り返すだろう。
そして、今度はおそらく間違えてカブトムシのエサあたりを買うのではないかと僕は予想している。
ちなみに、前回のはこちら
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