介護現場でのプライバシーについて
プライバシーとは
個人や家庭内の私事・私生活、個人の秘密、また、それらが他者から干渉・侵害を受けない権利の事です。
・個人的な日常生活や社会活動を他人に興味本位に見られたり、干渉されたりする事なく、安心して過ごすことが出来る自由
・自分が望む生き方を自由に選択し、他からの支配や干渉を受けず、自分の考え方で行動し、その行動の結果に責任を持つ事。
・個人の容姿、人格、性別、考え方、宗教、思想、生き方、病歴、経歴、前科等が国家や他人に否定や干渉される等、差別や誤った印象を受けない権利
・個人の情報を自己でコントロールする事が出来る、もしくは事業者に提供した個人情報が、法律に則り保護される権利
・個人の顔や体等を許可なく撮影や、公開されない権利
・個人が開示した情報を公衆へ、誤認されるような印象操作を受けない権利
プライバシーの侵害とは
・私生活を興味本位で探ったり、覗こうとしたり、住居等に侵入したりする事
・他人に知られたくない個人の秘密や私生活について、公開したり、噂を流したり、干渉する事
・個人情報の公開により、他人に事故の真の姿と異なる誤った印象を与える事
・氏名や肖像を、他人が自分の利得の為に流用する事
・自分の姿が写り込んだ写真を許可なく、テレビやインターネット上等に公開される事
・個人情報が流失した事により、日常生活や精神的に支障をきたす事。
・自分の望み道理に選択する事が出来ず、行動が他人の裁量に委ねられる状態。
・容姿、人格、性別、考え方、宗教、思想、生き方、病歴、経歴、前科等を理由として、差別や偏見を持たれる等、社会性活において否定や干渉を受ける事。
介護施設には介護施設のルールがある
当たり前ですが、在宅で自立した生活を送る事が出来れば、自分の思い通りに生活する事が出来ます。好きな時間にお風呂に入り、好きな時間に外出し、好きな時間に食事をとることが出来ます。しかし、介護施設で介護サービスを受けると、施設のタイムスケジュールに合わせた生活を送らなければなりません。介護サービスでは、入浴日が定められ、毎日お風呂に入る事が出来なかったり、施設の都合により、午前や午後に入浴時間が割り振られたりします。
また、食事においても、同じ空間に居る他人と同じ物を食べる等、バリエーションが少なく、同一の事を強いられる環境です。自分の望み通りに行動を選択する事が出来ず、自己決定権がありません。それは、介護サービスを受ける入居者のプライバシーが守られていない事を意味しています。プライバシーの概念が変化し、多様な価値観や個人の自由が尊重される社会において、残念ながら介護サービスでは、業務の都合により真逆の事が行われている現状です。
介護を受ける側の気持ち
入居者が直面するプライバシー侵害について、介護を受ける側に立って想像してみましょう。
ポイント
① 事故防止を目的に様々な行動を監視、もしくは禁止される
② 入浴の際に裸を、介護職員に見られる。業務の時間後都合で丸洗いにされる
③ 食事やレクリエーションのバリエーションが少ない
④ 排尿や排便をしている姿を、安全の為に介護職員に監視される
⑤ 排尿や排便を失敗すする姿を、多くの介護職員に見られる
⑥ 生活全般の行動を、介護職員に見られる
⑦ 個人の自由な行動が制限される
⑧ 要求や要望が多いと、あの人はワガママでうるさい人という印象を付けられる。
入居者は日常生活において、自分の事が自分で出来なくなり、やむなく介護を必要とする状態に陥ります。介護をお願いするという事は、自分の身体や生活の場を他人に見られ、干渉される事で、精神的な苦痛を味わう事や、介護を受ける入居者が職員に気を遣い、我慢をする状況が発生するという事です。
介護に携わる職員は、そのことを理解し必要以上に、入居者のプライバシーが侵害され、人としての尊厳が失われないように注意が必要です。
介護サービスを利用されている方は、下記のように感じる方もおられます。
・入浴では身体を見られ、他人に身体を洗われる
・日中はオムツの着用により、排尿や排便の自由がなく、その排泄物を職員に見られる
・ポータブルトイレがベッドの側に設置され、室内の環境が介護優先となる
・食事はミキサー食等に限定され、自分の好きなものを食べる楽しみは失われる
・他人との共同生活を送り、時間の区切られた自由の少ない環境で過ごす
この様に自由な選択による活動はほとんど失われます。また、自分の恥ずかしい姿を職員に委ねる必要があります。この様なことから、私たちは普段から入居者の声に耳を傾け、馴染みの人間関係を築く事が必要です。入居者の方が、精神的に苦しむ事の無いよう心がけましょう。
〈問題点〉
要介護度が高くなると、プライバシーを侵害しない事が難しい状況となります。介護職員は、その状況を理解した上で、対応しない場合、介護を受ける入居者は、訴える事が出来ない立場であり、「恥ずかしい」「我慢している」「苦しい」という、精神的な苦痛を強いられる状況に陥り、人としての尊厳が失われてしまいます。
介護職員が入居者に対し、上手に声をかけ、入居者の要望が聞き出し、丁寧な介護を提供し、信頼される人関係を築く事で、不穏や問題行動を減らし、介護事故やトラブルを防ぐことができます。
入居者に求められる介護とは、自分の家庭で過ごす様な、自由や安心感を提供する事です。
まとめ
介護の仕事は、入居者のプライバシーへ職員が介入しているという自覚が必要です。施設の職員に頼らざるを得ない入居者は、弱い立場にある為、もしかすると職員の顔色を窺い、我慢をしているかもしれません。
入居者に「出来ないから」「あぶないから」「分からないから」等と決めつけ、強い口調で注意をする事や、介護をしてやっているといった感覚や態度を見せてはいけません。
入居者のプライバシーが無くなるという事は、人としての尊厳が失われる事を意味しています。私たち職員は、介護を提供する事で、サービス料を頂いているという事を忘れず、仕事として入居者の尊厳が守られた介護を提供しなければなりません。
自分がされたくない、見られたくない、言われたくない、望まない事は子供も大人も高齢者も同様です。
信頼関係がない新人職員が「空気が読めず」「間合いが読めず」入居者のプライバシーを侵害し、怒鳴られる事や、介護拒否をされる事はあたり前の事です。
ベテラン職員はその点もしっかり配慮しておく必要があります。
職員の個人情報とプライバシー
一緒に働く職員にもプライバシーがあり、個人情報を守る必要があります。どの会社でも、職員の個人情報は円滑な業務運営を目的として、管理されています。しかし、それらの事や業務中に知りえた情報は、必要目的以外で使用する事は禁止されています。
また、職員同士で人の噂を流したり、悪口を言ったりするのはマナー違反になります。
自分が陰で言われたら嫌なことは、みんな同じです。自分の口から余計な個人情報を垂れ流すと、尾ひれがついた噂が流れるかもしれません。
人の批判ばかりをして、口が軽いと信用を失い、誰も本音を話してくれなくなり、孤立してしまいます。
介護の仕事は、チームワークが必要な為、円滑なコミュニケーションが必要不可欠です。しかし、人間関係が崩れると、職場の雰囲気が悪くなり、仕事が苦痛になります。また、その影響は介護の質を低下させ、入居者の方に現れてしまいます。
働きやすい職場を目指すなら、施設で働く職員の個人情報とプライバシーが守られ、良識のあるコミュニケーションにより、良好な人間関係を築く事で、互いに協力しながら介護の業務に当たる事が出来る職場を作ることが必要です。
介護施設では「絶対に入居者のプライバシーを守りなさい」と言われても、非常に難しいです。職員は、入居者の安全や見守りを優先される為に、プライバシーを侵害してしまうケースは生じます。
よって、介護を受ける入居者にどれだけ精神的苦痛を与えず、施設に居ながらも、家庭で過ごしているような、自由で安心した気持ちで過ごしてもらえるかが、重要な課題となります。
入居者としっかりとした、人間関係を築く事で、要望を聞き出し、プライベートゾーンを縮め、恥ずかしいという気持ちを和らげ、上手に対応が出来るよう心がけていきましょう。
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