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閉鎖病棟より


 今、精神科の閉鎖病棟にいます。
 事前に「入院しましょう」とは聞いていたが、閉鎖病棟とは思っていなかった。
 靴紐もストールも物差しもピアスも油性ボールペンもあらゆる危険物を取り上げられた。スマホはその日のうちに返ってきた。

 働きたくなくて死にたくて、働けない自分が情けなくてさらに死にたくて、なにもない、幸も不幸もないまっさらなところに行きたかった。
 あの世はそういう無の世界だと思っていた。

 入院生活は朝起きて飯を食い薬を飲み、また飯を食い薬を飲んで寝る。レクリエーションはないが前後の部屋の住人が叫ぶ系で、何を叫んでいるのかつらつらと考察して暇を潰している。
 退屈で苦しみのない、この世の地獄であり天国だった。

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