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「地方創生」案件について

どうも!株式会社DELTA-V代表取締役の上杉です。
今日は昨日の寄稿に引き続き「メタバース」関連のお話をさせて頂きます。

■よくある「地方メタバース」「ご当地メタバース」
VTuberやバーチャルタレント/バーチャルキャラクターを追っている人はXのタイムラインにVR系やメタバース系のポストがしばしば流れてくると思います。メディアで云ったらPANORAとかが日々扱うニュースの中によくあるのが「地方メタバース」や「ご当地メタバース」です。VRchatやclusterといったVRプラットフォームで地方のどこどこをワールド作成しました的なニュースです。公官庁や自治体なんかは年度予算なので、地方メタバースの多くはおそらくは今発表されているものはおよそ1年前ぐらいから企画~制作されているプロダクトだと予測できます。ああいったもののほとんどは結局は東京の会社が主導していることが多く、地方の公官庁や代理店的な所から助成金や受託費を頂きながら制作運用していくケースがほとんどだと思われます。該当の事業やコンテンツを行う際に、一応の事業目的は「地方創生」という大義があり、割と2~3年前から動いている企業が多いなという印象です。

■自治体目線で目的の達成が可能なのか?
前述でも触れたように自治体等に地方メタバースの話を持ち込む際に自治体が費用を自治体予算から出すわけですから、それなりの目的と大義が必要になってきます。大体は目的大項目が「地方創生」で、中項目にて「観光PR」「若者へのアプローチ」「移住人口増加」等が考えられます。自治体はこの目的を持って予算を通すのですが、果たして地方メタバース案件は上記の目的をクリアできるのだろうか…という疑問、疑問というより現状課題だと思われますが、必ずぶつかる壁があります。その答えとしては「否」としか答えようがなく、地方メタバースの制作主体を結局は東京の会社が行うことが多いので、地方自治体において上記手法で達成できるのは「観光PR」ぐらいでしょうか。基本的にはVRメタバース自体が全体のエンタメ界においてはシェアが少ないので、少ない場所へリーチしても意味無いでしょうという事実をここに投下しておきます。普通にその地方出身の芸能人やインフルエンサーにギャランティを支払ってPRした方が全然効果が高いと思います。

■「地方創生」に絶対に必要なもの
現状の日本の地方というのはざっくり言うと「人口」が欲しいのです。もう少し具体的なことを述べると「労働できる若者の人口」が欲しいのです。それが未来を想定した際の自治体の税収や資産となるからです。地方に若者を残留させたり東京に行ってしまった若者がUターンという形で戻るには絶対的に「雇用」が必要になります。それもただの「雇用」ではなく「若者が希望する種の雇用」です。それはこの10年程においては若者はエンタメ関連の仕事への就職(正社員雇用)を希望する人が増加し、逆に1次産業やサービス業んて働くことを嫌がる傾向にあります。故に東京都心のコンビニエンスストアとかも日本人の若者の採用が来ないのでほぼ外国人の方が就業する状態になっています。エンタメに限らずとも若者は就業の選択肢を求めて東京に集まってしまう、それが現在の日本のサイクルの起因となっています。少し遠回りをしましたが、地方に若者を定着させるには就業の選択肢を作れる程に多様な職種の企業誘致や企業設立を行う必要があり、更には若者が好むエンタメ系の企業(=箱)を置く必要があるのです。"従業員"は1~3名みたいな箱ではなく、最低でも30~50名ぐらいの箱です。

昨日のnote寄稿でも触れましたがVRメタバースはほぼ企業が提供する「人工的メタバース」でして、VRメタバースは地方やとんでもない田舎に住んでいてもインターネットと機材環境さえあればどこからでもセントラルコンテンツにアクセスできるので「地方創生」とは逆の潮流を生んでしまうと考えます。現状の地方メタバースは地方における雇用に寄与していないので、かなり厳しいものがあると見ています。地方創生に必要なのはリアルな"箱"であって、箱をおいて雇用創出しないと若者は結局東京に流れてしまいます。企業が理想的には本社を地方に移すのか、地方で0から企業を立ち上げるのか…そして、その企業が若者を中心に従業員雇用を行えるのかが重要になってきます。

■地方で雇用を創出する際にぶつかる壁
私は愛知県在住のスタッフを取りまとめてDELTA-VのV事業で稼働させたりしているのですが、では名古屋で起業もしくはどこかの会社を名古屋に移転させてエンタメ事業を名古屋でやろう!…という流れに簡単にならないのが、地方でエンタメ事業を行おうとした際に確実に当たる壁があります。それは「地方ではエンタメ事業において十分な能力を持った人材の採用はほぼ不可能」だからです。これは誤解が生まれると良くないので、先に前提を記載させて頂きます。

・エンタメ業界の消費市場の6割が東京を中心とした関東圏
・エンタメ業界の提供側の8割が東京にある企業やクリエイター
・地方にはゲームやアニメを中心としたエンタメ事業の商業実績のある"経験者"がいない
・ワンチャン、Uターン勢がいるがUターン勢は何らか事情でUターンしているのでエンタメ界前線の人材では無い。
・事業というのは事業をリードする「コアスタッフ」が居て初めて成立する。
・コアスタッフの周囲に個人事業主や外注の取引企業がいて、エンタメ事業というのは回る。
・個人事業主や外注がいてもコアスタッフがいなければ、誰も責任を取らないし「生産」自体を行えない。創出者や生産者ではなくただ仕事欲しい人達の集まりになってしまう。餌を求める雛鳥がいる巣のような状況。

上記前提があり、エンタメ業種に限って言えば地方で優秀…いや並の能力の人材でさえコアスタッフとして従業員採用するのはかなり難しい現状があります。別にただキャラ絵を描けます、動画を作れます…という人は全国地方に津々浦々在住されていて、皆それぞれオンラインで仕事をしているのです。ただ事業を起こしたり運営していく際にはそういう外郭の人員では何もできない。重要なのは事業を主体的に進行して責任を持って取り組める役員やコアスタッフ(従業員)の体制を企業が構築できるかどうか…ここに地方でエンタメ企業を行うには難しい理由が壁として絶対的に出てきます。私も現状でリアルタイムに苦労している部分です。

これは逆に地方(イメージでは地方都市)に東京の規模まではいかずとも複数のエンタメ企業が在り、若者にとって就業の選択肢がある程度担保された状態や環境を構築できれば、10年ぐらいかけて経験者が生まれてゆき地方でも一定の能力があるエンタメ経験者の採用が行えるようになっていくわけです。名古屋はそういう意味では他地方よりも条件は良く、ゲーム会社を見てもエイチーム社/ワンダープラネット社/スーパーアプリ社…等があり、ゲーム会社の範囲で言えば経験者を雇用できる可能性があります。例えば、直近で震災に見舞われた石川県もアイレム社やグランゼーラ社、本社ではありませんが、DMM社やブシロード社も拠点があったはず。ただし、私もDELTA-V社で取り組んでいるようなバーチャル事業のような比較的エンタメとしては新しい類の事業は当然地方にはほぼ経験者が存在しておらず、事業履行が非常に難しいと考えています。

■まとめ
「地方創生」にはエンタメ企業を地方で運営することが非常に重要であり、そこで若者を雇用して人材を育てるしかないのです。その育成コストは膨大。ただ、地方自治体がそういった企業に対して助成金も出して頂けるので可能性は有るのかなと考えています。私自身が未だに挑戦中なのですが、バーチャル事業に関して言えば、やはりバーチャルに対してアンテナ感度が高い/コミット率が高いのは愛知県なのです。理由は愛知県民の可処分所得は実質で全国1位だから。故にバーチャル事業は愛知県を中心に行うのが一番良いと考えていて、むしろ東京の事業者ではバーチャル事業はコスト/従業員属性…等の観点から相性が良くないと考えています。DELTA-V社はアニメーション事業部も立ち上げる予定なのでまたそれは別の話で…。ちなみに県民は気付いてないかもしれませんが、バーチャル感度の高い地方県は愛知県の次は広島県だと考えています。私の論調って私の勘だけで言っているのではなく、一応DELTA-V社はバーチャル業界において実行した公開オーディション件数がNo.1の会社でして、それなりのデータを基に述べています。重要なのはデータに基づく県民性とその県の「局」の動き。今、私が注目しているのは…

・愛知県の名古屋市
・広島県の広島市
・熊本県の熊本市
・北海道の旭川市
・福井県の福井市

…エンタメ事業で企業を運営するのであれば上記の辺りかな。バーチャルに限れば名古屋と広島の2択。しかしどちらにしろ人材採用の面で苦労するのでハードルは高いと思います。以上長文でしたが御静聴ありがとうございました。

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