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ベストエフォートの哲学を実践することの意義・豊かな経験をおくるために


ベストエフォートの哲学。
それを最初に知ったのは、茂木健一郎博士のYouTubeチャンネルでだった。茂木先生は、確か人生がかなり改善する認知ハックだとして、紹介されていた。
とても大切な考え方だと感じ、心に残っている。今回書いてみることにした。
このアイデアを、簡単に要約すると、
「世界は、コントロールすることができないことに満ちている。その上で、さまざまな環境的・状況的な制約のなかで、最後まで最善の努力を尽くすこと。」というものである。
例えば、試験で調子が出ず、失敗やアクシデントが発覚した際に、途中であきらめずに最後まで最善を尽くすというシーンや仕事などで、他人とのやりとりが上手くいかず、途中で投げ出したい気持ちになりかけても、誠心誠意相手に伝えたいことを最後まで伝えようとするといった例がある。
また、学校や生まれた地域、場所、個性、時代、リソース、状況などといった、自分のコントロール外にある環境的・状況的制約の中で、目の前のことに最善の努力を尽くすように心がけることを意味する。

ロルフ・ドべリ著『Think clearly』で、ジョン・ウッデンのすてきな言葉が紹介されている。それは、「その日その日を人生最高傑作にしよう」という言葉である。これは、ベストエフォートの哲学に通じるものがある。
 
ベストエフォートの哲学は、古代のストア派哲学とも共通点がある。
例えば、ストア派哲学者のセネカに、『生の短さについて』という著作があるが、有限の人生で、いかによりよく生きるかを考えることが大切であるというメッセージが込められているのだという。(この本をまだ読んだことがなく、近いうちにぜひ読みたいと思っている。)

有限の短い人生をいかによりよく生きるか。それを、日常で具体的に実践する発想法がある。それは、自分の残りの人生を日数でカウントするというものである。これは、ワイアード創刊編集長のK・ケリーさんの著作で知ったのだけれども、最初に読んだときは正直やってみようとは思わなかった。

でも、最近は考えが変わって、やってみるのもいいかなと考え、計算してみたのである。厚労省が公開している統計を調べ、簡単に計算できる。

ケヴィン・ケリーさんによると、この発想法をすることで、「本当にしたいことを選べ、今日は良い日にしなくては。今日は素晴らしい日だった。ありがとう。」と感謝する気持ちになるのだという。

私自身の話をすると、小学校低学年のことだったかと思うのだが、人の一生がだいたい百年が上限であることを知って、かなりショックを受けたことを記憶している。その時私は、100年とは、一年がたった100回くるだけで終わってしまうというような単純な計算を頭の中でしていたのだけれど、そのショックに長く向き合うことはなく、すぐに小学生らしい日常に戻っていった。

人生は有限である。このことは、誰もが遅くとも早くとも、生きているうちに認識する事実であり、その有限の人生をいかに生きるか、という問いは、古代から、古今東西の哲学者が、思索をめぐらせてきた普遍的テーマである。
限りある人生をいかによりよく生きるか。この問いは、豊かな経験とは何か?を考えて人生をおくること。このように私は最近認識した。
(ちなみにこの言葉は、知人が教えてくれた。)

そして、豊かな経験について、大事なポイントがある。それは、楽しさとやりがいのよいバランスを考えて、行動したり、実践するという発想である。
これは、ロルフ・ドべリ著『Think clearly』で紹介されている考え方で、とても大事だと感じたのである。
なぜか。それは、従来、意義と快楽は分けて考えるのが常識的に当然のようになされてきたからである。
例えば、勉強や仕事について。
勉強は遊びではなく、意義のある義務である、とか、仕事は遊びではなく、意義のある行為である、とか。
意義の要素しか見ず、楽しさ、つまり快楽の要素を無視している視点や態度はまだだまだある。
この意義と快楽のバランス思考は、あらゆる行為に適用可能である。と同時に、視点を変えて捉えることもできる。
友達と遊んでいる小学生(中学生や高校生でもいい)がいるとする。その子は、楽しさと意義の両方を感じているはずである。それでいいのである。遊びだから意義の要素は少ない、とか、勉強だから快楽の要素は少ない、と考えるのではなく、個々人がよいバランスを考えて行動すること。これが豊かな経験のシンプルな定義である。もちろん、世の中の現実はそう単純ではないかもしれない。しかし、このバランス思考は、豊かな経験、よりよい人生の鍵である。

参考文献は以下。


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