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何をもってお肉?具体⇔抽象を考察 #6

先日、仕事の関係で米国出張をしました。その際、事前に話には聞いていたプラントベースの食品や無人店舗を実際に目にし、いわゆるフードテックに興味を持ちました。そこで、関連書籍を読んでみると、食に対するテクノロジーのアプローチに関する考察が興味深く、あらためて思考においては具体と抽象の往復が重要だという点が見えてきました。そこで、この点について書きました。

下記投稿記事の内容が私の学びにおける考え方です。

【引用・参考文献】
田中宏隆 (著), 岡田亜希子 (著), 瀬川明秀 (著), 外村 仁 (監修) フードテック革命 世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義 日経BP社

米国企業が積極的に参入している代替プロテイン市場ですが、日本でも大手CVSチェーンのセブンイレブンが「みらいデリ」として豆類(えんどう豆や大豆)を原料にしたお肉を提供しています。その背景には、持続可能な社会の実現へ向けどのように食料を確保するかという全人類が抱える問題があります。一部の富裕層や食にこだわりを持つ人々へ向けた商品と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、待ったなしの案件です。現在の食生活を維持しようとするのであれば、近い将来に多くの家庭の食卓のメインとしてフードテックを活用した代替肉やその他食品が並ぶことになります。

今回は代替肉に絞って書いていきます。みなさんは、どのようにお肉以外の材料でお肉を作ろうと各企業がしのぎを削っているか想像できますか?
【私のこれまでのイメージ】
・お肉に近い食感の素材をパティのように固めて
・お肉に近い味がする調味料を混ぜ込んで
・焼いたあとの色にして完成!

米国企業「インポッシブルフーズ」の取り組みを紹介します。
"同社の取り組みで興味深いのが、脳科学を用いて「人間は何を見て肉と思うか?」を解明しようとしていることだ。例えば、最初は赤くて加熱とともに茶色になるプロセスを見せる視覚効果や、様々なフレーバーが混じり合った嗅覚情報によって、人間は今見えているものが「肉」であると認知する。この視覚効果や人間が感じるフレーバーを実現するために重要なのが「ヘム」という化合物で、これがインポッシブルフーズの食物性代替肉を「肉」たらしめているコア中のコア技術だ。"

Google Bardへ「肉の定義を教えてください」と質問すると下記の通り回答が返ってきました。"肉の定義は、大きく分けて2つあります。1つは、動物の、主に筋肉からなる部分を指す定義です。この定義では、魚肉も肉に含まれます。もう1つは、食用とされる動物の筋肉、臓器、脂肪の総称を指す定義です。この定義では、魚肉は一般的に肉とはみなされません。日本語では、単に「肉」と言うと、この2つのうちの2番目の定義を指すことが多いです。つまり、食用とされる動物の筋肉、臓器、脂肪の総称を指します。"

当然、インポッシブルフーズが探索するような、人が肉を食すシーンを想定した定義はされていません。科学技術の進歩により踏み込めるようになった、未知の領域に踏み込んでいるわけです。

既存領域にテクノロジーが掛け合わさると、既存領域にはタッチせず、プラスオンで効率化や利便性向上を含めた機能拡張をする流れが多いというのが個人的なイメージでした。しかし、それでは通用しないということを米国出張で目の当たりにしています。それは、レジなしコンビニエンスストアとしてかつて話題になっていた「アマゾンゴー(Amazon Go)」です。こちら、すでに閉鎖による店舗の絞り込みに動いている状況です。苦境の背景には様々な要因があると言われていますが、個人的に代替肉の事例で紹介したような「買い物とは何か?」という本質へ切り込む考察なく、テクノロジーを掛け合わせてしまったことが大きかったのではと考えています。

「買い物とは何か?」と問われると、必要なものを買う行為というのがまず頭に浮かぶと思います。でも、本当にそれだけでしょうか?店頭で偶然発見した未知商品を買うことや、店員さんとのちょっとしたコミュニケーションから得られる楽しさも内包されているのでは無いでしょうか。ネットショッピングですべてを済ませられる環境が整っているにも関わらず、時間をかけて実店舗で買い物する背景には、そのような顕在化されていない価値を感じている事実があると考えています。アマゾンゴーは、一見合理的な店舗作りをしたつもりでも、そのような買い物における大事な要素まで削ぎ落としてしまったのではないでしょうか。

同じような事例で、家庭での料理があります。家族に手料理を振る舞う時間はなかなか確保できないけど、でも完全に外注してしまうのには罪悪感がある、また材料を買ったりするのは面倒だけど、最後のひと手間だけは自分でできるのが楽しいなど、一見非効率に見えるようなニーズではありますが、それらを本質として捉えミールキットなどのプロダクトが支持されているというわけです。

今後、各種既存領域でテクノロジーと掛け合わせた新しいサービスが検討されていくのは間違いありません。その際、既存領域が持つコアを理解しなければニーズを捉えたサービスにはなりません。よく重要と言われる、具体⇔抽象の往復が必要ということです。具体⇒具体では、アマゾンゴーのような事態になりかねません。個人的にふと不思議に思ったのは、シヤチハタ株式会社が運用する電子捺印システムです。なぜ電子化までした捺印なのか?(承認のログさえ残れば良いのに、あえてカーソルをPDFの捺印欄に合わせクリックする動作が必要なのか?)も思ったりしますが、これも日本社会が慣れ親しんできた、承認フローはかくあるべきという行動様式のコアを捉えたサービスだからこそ普及しているのでしょう。私もお世話になっています。

何がコアなのかを捉えるスキルの重要性は、今後より高まりそうです。イノベーションのきっかけもそこにあると思いますので、日々考えてみます!また何か見つけたら投稿しますね。

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