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「ダメ公務員」でもできた取材法

愛媛県西予市の堀内です。
西予と書いて「せいよ」と読みます。
「さいよ」や「にしよ」と読み間違えられることの多い我がまち…。
ぴえん。

「せいよ」なんだよ…

もしよければこの機会に「西予=せいよ」の読み方だけでも覚えていただければ、小躍りするくらいうれしいです。

さて、軽く自己紹介を。

わらマンモスかっこいー


広報係を務めた期間は9年。
H23年4月からR2年3月までです。
当時の「広報せいよ」はこちら


R2年4月からは観光振興係を拝命しています。
観光の仕事も広報と同じくらいやりがいがあって、新しい学びの日々に胸がトゥンク…しています。
好きなものはラーメンと半チャーハン。
最近エガチャンネルを見始めた「あたおか」の1人です。

好きな回は「初めてのモスバーガー」


詳細は割愛しますが、かつて自分は典型的なダメ公務員でした。
やる気も、郷土愛も、向上心も、まちの人への愛も、何もない。
そんな身で広報係となり、多くの人を取材する中でいつしか気付いてしまったことがあります。

それは「このまちは、日本一すてきな人たちが暮らす、日本一良いまちだ」ということ。

気付かせてくれたのは、他ならぬこの地で暮らす人たちです。

秋のひまわり(2019.11月号)


まじで素敵。
まじですごい。
というわけで、今では生粋の西予推しとなった「元ダメ公務員」の自分が当時実践していた取材法をご紹介します。
読めば今日からすぐ実践できるはず。
もしよろしければ、最後までお付き合いください。

1.目的を言語化する

広報って発信することが仕事。
だから「とにかく誰かを取材しなきゃ」「撮影しなきゃ」「発信しなきゃ」と思い込んでいた担当者がいたそうですよ。
どこのどいつだい。

アタイだよっ

発信を「目的」にしていた頃、誰かに「なぜこれを発信するの?」と聞かれたら、迷わずこう答えていたと思います。

「発信するのが広報の仕事だから」

発信自体が目的なので、そこに理由なんてなかったんだよ…。
言うなれば、手あたり次第。
見よう見まねでやることは悪いことじゃない、成長だってする。
けれどそうして発信する情報の力は、とても弱かったです。

蓋を開ければ、自分1人で孤軍奮闘しているだけ。
あったのは自己満足と自己顕示欲だけだったのかもしれないと、当時の自分を苦々しく思います。

着任1年目の頃の広報。周りと一緒につくる広報に目覚めるのは、まだ先


そんなんだから反響なんてないし、広報に掲載していた素敵な人のことも周りからは「知らなかった」と言われたりする。
発信しても「知られていない」情報は、存在しないことと同じ。

ってことは、残業してまで必死に働く自分って、実は意味のないことをしているのでは?!と自問自答する日々。
切ない…。

せっかく発信するなら情報に力を持たせたいし、何より1番にその人や地域に喜んでもらいたい。
では、どうすればそれを実現できるか。
自分なりに次のように整理しました。

発信は「目的」を叶えるための「手段」と捉え、その「目的」を言語化する。


例えば…

シャッター商店街を盛り上げようと立ち上がった若者がいるとの情報を耳にした。彼らの思いや活動が広報を通じて市内に広がれば、「私らも同じようにやってみよう!」という人たちを市内に増やせるかも。
活発な人が増えれば、西予をますます元気にできる(=目的)かも。
だからこそ、特集(=手段)したい。

実際の紙面はこちら(2018年12月号)

「よその自治体もやってることだから」と、何とな-く取材するのではなく、「目的」と「手段」をまずは言語化してみる。

取材前の段階で、この作業をすることが自分的にはとても効果的でした。
1Pの取材でも、数十ページにわたる特集企画でも、まずは「目的」と「手段」を言語化する。

言語化したものは特集の骨子を組む際の核となってましたし、取材対象者に「なぜあなたを取材したいのか」説明する際にも使えていました。

落ち武者…w

ちなみに。
落ち武者さん、普段は超絶美人なママさんなんだよ。
この日は頭に折れた矢が刺さっているわ(お手製らしい)、背中に旗を立ててるわ、なぜかネットに入ったみかん持って配ってるわ(写真は「食べる?」の図)、とにかく力作の落ち武者ぶりで、めちゃくちゃ楽しそうでした。
撮影はもちろん、pngに切り抜く際も紙面に配置する際も笑いが止まらず、PCの前で悶絶を繰り返した私。
後日「おもしろくて編集作業にめちゃくちゃ時間がかかりました」と話したところ「やったぁ!」と喜ばれた思い出の紙面。
ノリがよくって素敵すぎる。好き。

2.「ハブ」となる人を見つける

手段と目的を言語化できたら、いざ取材。
取材に入る際、ほとんどの場合で「ハブ」となる人(=キーマン)に対象者とつないでもらっていました。

ヘビじゃなくって、こっちのハブね

多くの人と信頼関係をもってつながっている人。
核になる人。
熱い思いを持っている人。

「ハブ」となる人は、うちの市では

①その地域の出身職員に聞く
②公民館主事に聞く
③SNSで検索をかける

ことで見つけ出せていました。

多さ的には②≫①≫③の順番だったように思います。
そしてハブとなる人は、職員だったり地域の人だったり、さまざまです。

「〇〇について知りたいんやけど…」と相談を持ち掛けて、「それなら△△さんに聞いたらいいよ!」とか「それなら自分がつなぐことができるよ!」と、人から人へとつながっていくイメージです。

ちなみに、「ハブとなる人(=キーマン)」選びがうまくいかないと、特集企画も取材も「話が広がらない…」「骨子が変わらない…」となることが多かったです。
人から人へとつながっていかない。

逆に、1人の「ハブ」とつながったおかげで、2~3日で数十人とつながったケースもあります。

ゆすかわ特集号のことだよ(2017年10月号)


多くの人と信頼関係でつながっている1人とつながれば、あっという間にさまざまな人とつながれます。
そこから新たな情報や視点、思いなども聞けるので、うれしい想定外がたくさん起こりました。

うれしい想定外がたくさん起こると「当初予定していた紙面案」がおもしろいくらい壊れます。
壊れれば壊れるほど、うれしいサイン。

当初の案が壊れるということは、「自分の頭の中の物語」から「住民自身の物語」へと変わっている兆候だと捉えていたからです。

反響が良い号は、当初の案から変わりまくってた(2019.10月号)


多くの人の声や、ありのままの息遣いをそのまま出すことができれば、「自分の頭の中で考えた物語」から「この地で生きる人自身のストーリー」にすることができる。

それができれば、多くの人に喜んでもらえて、笑顔にすることができる。

そのためにも「ハブ」となる人とつながり、新たな視点、新たな情報、新たな思いを教えてもらうことが重要でした。

特に特集の際に「話が広がらないな…」「人とつながらないな…」という際は、広がりが生まれるまでハブとなる人(=キーマン)を探してました。

見つからない場合は、「誰に聞けば分かりますかね?」などという質問で、次の人につながっていくことを意識してました。

3.いざ、実践!

では実際にやってみよう。
ということで、久々に取材をしてみました。

①今回の「目的」と「手段」を言語化すると…
現役で奮闘している広報担当者に、少しでも役立つ取材方法を分かりやすく公開したい(=目的)。
そのために、今まで広報で取材したことのない、初めましての人とつながって取材・撮影するまでの様子を記録したい(=手段)。

②「ハブ」となる人を探す
多くの人と信頼関係でつながっていて、今回の企画に喜んで協力してくれそうな人…。
あそこにも、ここにもおられるけど、今回はここに決めた。

公民館発祥の地にやってきたよ

なんだかいつも楽しそう、アウトドア好きで社交的、多くの人に慕われている田之筋公民館の上甲係長(通称:啓一郎くん)です。

「やっほ~、ちよちゃんようこそ」

イケメンで気のいい、頼れるお兄さん。
事前に電話で趣旨を話し、相談したところ「素敵な人がおるよ」とつないでもらいました。

紹介してもらったのは、松本さん。
田之筋地区で地域任用職員として働く、キュートな2児のママさんです。

取材の様子を動画で撮ったけど編集が間に合わなかったよ…燃え尽きた…ごめんね…


取材時のポイントは、次の3つ。

①緊張をほぐす
知らない人と会って、いきなり自分をさらけ出せる人なんて稀。
ましてや「取材」とかいわれると、みんな緊張するに決まってます。
「何聞かれるんやろう」「うまく受け答えできるやろうか」って不安なはず。
なのでまず、相手の緊張を和らげることから始めます。
本当に他愛のない話から。
「朝晩涼しくなったと思ったのに、今日めちゃくちゃ暑いですね~」とか。
かわいいアクセサリーや筆記用具などが目に入ったら「わぁ、それかわいいですね」とか。
相手が気軽にリアクションできそうな話題を投げてみるのがおすすめです。

自分がガチガチだと相手も緊張しちゃうので、ゆる~くね


②取材の目的を伝える

次に、アポどりの際に電話で伝えていたとしても、どうして「あなた」を取材したいのかを、カンタンにお伝えします。

今回だったら…

・現役で奮闘している広報担当者に、少しでも役立つ取材方法を分かりやすく公開したい
・今まで広報で取材したことのない、初めましての人を取材する様子を記録したいと思って啓一郎くんに相談したところ「素敵な人がおるよ」と松本さんを紹介してもらった
・啓一郎くんから「松本さんは地域を盛り上げようとがんばる人たちを、一生懸命支えて一緒に活動している」と聞いている
・今日は、松本さんの思いについて、ぜひお話を伺いたい
・写真も撮らせていただきたい

撮った写真はネット上に掲載してよいかどうかも確認したよ


③何を話してもOKだと伝える
それでも、自分の発言が文字になるって、結構なプレッシャー。
なので次のことを伝えています。

・この場では、何を話しても大丈夫
・思っていることや気持ちを、そのまま話してほしい
・記事案ができたら「あなた」に必ずチェックしてもらい、思いに沿うよう修正する
・意に沿わないまま公開することはないから安心してほしい

「何を話しても、私は否定しません」
「家族よりも、親友よりもあなたの味方で、あなたを知りたいと思っています」
と、言葉にこそ出しませんが(出されたら重いし怖がられると思うしね…)、わりかし本気でこう思いながら、取材に入ってます

思いはきっと伝わるよね


松本さんを取材した記事がどういう風になるのかは、完成し次第、公開しますね。

取材後に撮影すると、信頼関係も生まれて素敵なショットになりやすいと思う


4.おまけ

取材後、松本さんが「この時間帯、オジサマたちが某所で活動しよりますよ」と教えてくれたので、一緒に元気なお父さんたちに会いにいくことに。

軽トラがたくさん集まってるぞ…

倉庫をのぞいてみると、お父さんたちがワラを編んでた。

黙々…

そう、この地区、広報時代に「わらイノシシ」で取材したことがあるところ。
「わらマンモス」の制作者に教わって、自分たちで「わらイノシシ」を作り始めた元気なお父さんたちが暮らす土地です。

「ないなら創る」がたのすじスタイル

「干支にちなんだわらアートを1体ずつ増やしていく!」と話していた意気込みどおり、年々わらアートが増え続けています。
来年はうさぎ年なので、お父さんたちは今、うさぎのわらアート制作に大忙し。

この場所に12支をそろえるのが目標らしい。今あるのは亥、子、牛、寅、そして恐竜。


ごあいさつしたところ「あれ?マスクしとるけん気付かんかった。今年から広報戻ったん?」と。
覚えていてくれて感激…。

「広報戻ってないよ、ただ撮影しに来ただけ」と答えたら「自由に撮ってよ」とのことだったので、おしゃべりしながらパシャリパシャリ。

わらを束ねてカーテンのようにしてる
わらをすいていたお父さん。作業の合間に良い表情
木を削って道具作り
松本さんは「まみちゃん」と呼ばれて頼りにされてる。地域から愛されてるなぁ


「来年のうさぎ、もう型の準備できとるんよ」
「見て帰ってー!」とお父さんたちからリクエストがあったので、松本さんとその場所へ。

う、うさぎやぁ……!

建物と建物のすきまに、うさぎの型が鎮座してた…
松本さん情報によると、うさぎの目もすでにできているらしい。
お父さんたち、自分で設計図書いて、型を手作りするだなんて、行動力も発想力もすごいなぁ。
楽しんでるなぁ。
こっちまで楽しくなるよ。

そして道中、松本さんに案内いただいた、とっておきの場所。

でーん
「たのファーム」
可愛すぎて胸キュン


たのすじ地区では、空いてる畑を「地域の畑」として、ジャガイモやたまねぎを育てて出荷を始めたそう。
たのすじ地区の畑だから「たのファーム」。
9/18には「たのすじマルシェ」を実施して、収穫した玉ねぎを販売するとのこと。

「ずっと奥までたのファームなんです」


すごいなぁ。
わらアートに励む元気な70代に、がんばる人をサポートしてる松本さんに、新たな地産地消イベントを打ち出してる40代の若手層に。
これ、このまま特集にできそう。
と感じた取材となりました。

6.最後に

つたない説明でしたが、取材法、伝わりましたでしょうか?
今回は目的と手段の言語化と、「ハブ」となる人とつながること、取材対象者に安心して話してもらえる場づくりについて、お伝えしました。

もし分かりにくい箇所があれば、コメントください。
私もかつて、偉大な先輩方にいろいろ教えていただいたおかげで広報の仕事の幅が広がったからこそ、OGとしてお役に立てることがあるならどんな情報でも喜んで差し出したいと思っています。

それが回りまわって、西予のためになると信じているからです。

なので、何かあればお気軽にどうぞ。
私も皆さんから学ばせていただきます~!

ちなみに、西予の魅力が180秒の動画になりました。
https://youtu.be/AqaOwycoZf0

概要欄もぜひ見てね♥

ではでは、最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

ともよと書いて「ちよ」と読むよ