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がんばれ日産。ブランド復活の鍵は?

以前にトヨタのブランドパーパスについて考えてみました。今回はトヨタとは対照的に、苦戦が続く日産のブランドパーパスを考えてみたいと思います。

典型的にダメなブランドパーパス

現在の日産のコーポ―レートパーパスは次のようなものです。

人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。
これは長年にわたり掲げてきた企業ビジョン「人々の生活を豊かに」を踏まえ、創業以来大切にしてきた”他がやらぬことをやる”という精神を引き継ぎながら、日産はどのように役割を果たすのか、何のために存在するか、に答えるものです。(日産のHPより)

これは残念です。典型的にダメなブランドパーパスですね。ブランドパーパスは「その会社ならではの社会的的存在意義」を表明すべきもの。日産の「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」は一般的すぎて、日産らしさが何もありません。他の会社がそのまま使ってもなんの違和感もありません。

どんな会社も、高次元の目標として「人々の生活を豊かに」を目指すのはあたりまえのこと。それを自分たちはどういう方法で実現するのか。それを表明したものがブランドパーパスです。

また「イノベーションをドライブし続ける」という部分も一般的すぎます。「イノベーション」はカッコいい言葉ではありますが、思考停止ワードでもあります。「どういうイノベーションを提供したいのか」をつきつめて考えなければいけません。

日産のポジショニングは難しい

こうしてあらためて見ると、日産のポジショニングは難しいですね。トヨタは業界リーダーとして車種をフルラインアップで提供する全方位モデルで、そこからさらに総合モビリティ企業に発展していくというビジョンです。

日産もフルラインアップを提供する自動車メーカーですがトヨタとの差は開く一方。フルラインアップから脱却してセグメントを絞る戦略にシフトしようとしていますが、どこか特定のセグメントに強いわけでもないのが辛いところです。

品質が良くてコスパの良いファミリーカーならトヨタ、若い気持ちで走りを楽しむならホンダ、走りにこだわるならマツダやスバル、のようなわかりやすい特徴がなく、なんとも中途半端な位置にいます。

それでも日産には希望がある

そんな日産には希望はないのか?いや、きっと日産ならではのユニークなポジショニングがあるはずです。

まずヒントは、日産が創業以来大切にしてきた、「他がやらぬことをやるという精神」でしょう。

かつての日産は多くのエポックメイキングな車を世に送り出してきました。例えば、フェアレディZ。比較的手に入れやすい価格でありながら、ヨーロッパの高級スポーツカーに劣らない高い走行性能と、スタイリッシュなデザインで世界中で熱狂的な支持を受けました。

また「技術の日産」は健在で、リーフに代表される電動自動車(EV)、自動運転技術では自動車業界をリードする存在です。

そして、個性的な車種も魅力です。フェアレディZ、スカイラインGT-Rといった挑発的な車種に加えて、SUVのにキックスやコンパクトカーのノートなど、先進的ながらかわいいデザインが魅力な車もあります。「日産」という企業ブランドは弱いかもしれませんが、車種それぞれの魅力は光るものがあります。

こうしてみると、日産の魅力は、時代を切り拓く「先進的」で「個性」の強い車たち、そのバックボーンである「技術」であるように思われます。

以上のことから、日産の戦略としては、スポーツカー、コンパクトカー、SUVなどの主要セグメント毎に個性の強い魅力的な車を出し、徹底的に車種ブランドで戦う。日産の企業ブランドは、各車種ブランドを下支えるEndorser Brandとして、先進性、高い技術、安全性のブランドイメージを強化していく、という感じでしょう。

「e-Drive」宣言をしてはどうか。

傷ついたブランドイメージを反転させ王者トヨタと戦うには、自社の強みを活かし「個性的」で「未来をつくる」自動車メーカーである、というエッジを立てていくのがよいでしょう。たとえば、こんな感じで日産のブランドパーパスを勝手に考えてみました。

「e-Drive」日産は、車を通じて人の個性を解放します。日産は人の個性こそが未来をつくる力であると信じます。個性にあったスタイルで移動を自由にし、人の持つ可能性を引き出すことをめざします。そして、快適性、安全性、環境技術、その全てにコミットしながら、人と車と地球の新しい関係をつくります。

日産のブランドパーパスを考えるのはなかなか難しかったですが、日産には魅力的な車種と先進的な技術力があり、ブランドとしてのポテンシャルが高いこともよくわかりました。これらの資産を活用して力強いブランドパーパスを構築すればブランドを復活できる可能性は充分にあると思いました。



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