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ヤンキー君からのありがとう 変わらない態度を貫いた先の卒業式

卒業式で先生や友人以外から
「ありがとう」を言われたことはありますか?

初めて本当の意味でありがとうを言われたと感じた
中学校の卒業式

私にありがとうを言ってくれたのは
学年一のヤンキー君でした




私が通っていた中学校は私の学年で
いわゆる“荒れた”学校になりました

今日から俺は!!」や「ろくでなしBLUES」といった
漫画でみていた世界がリアルに目の前に起こったのです


ちょっとワルぶりたい生徒や
不良の程度の差はあれ男女20人以上は
同じ学年にいたのではないかと思います


そのリーダー的存在だった人物は
金髪でリーゼント、学ランも短ラン

顔の雰囲気や身長が高いこともあって
「幽★遊★白書」の桑原和真にそっくりでした
(リアルタイム世代なので意識的に似せていたのかもしれません)


その彼が卒業式に「ありがとう」を言ってくれたのです
(以下、桑原似なのでK君とします)



K君とは中学2年3年と同じクラスでした

2年の時は男女共に仲間も同じクラスで
毎日登校していたのですが

3年は仲間が一人もいないクラスになり
皆避けるように、でも遠くからは注目され

周りからの視線がわずらわしいと感じたのか
K君はだんだん登校しなくなりました


2学期も半ばを過ぎた朝
教室に入ると異様な雰囲気

K君が登校していたのです

あからさまにK君のまわりには人がおらず
教室の隅の一角に集まる皆


この時の私の席はK君の前
スタスタと自分の席に向かって

「おはよう」

K君に声をかけ座りました

返事はなくてもいいやと思っていたので
反応は気にせず
カバンから教科書やノートを出していた時

後ろから

「おはよう」

振り向くと少し驚いたようなK君の顔

そこでもう一度私は
「おはよう」を伝えました


周りの反応を見てはいないけれど
驚いていたのは空気で分かった

なんせ私は存在を消すように過ごしていた
大人しく目立たない生徒だったから


なぜそんな私が学年一のヤンキー君と
物怖じせずに話せたのか?

そうなる前の彼を知っていたからです




実は小学校5・6年も同じクラス
そしてK君とはよく話していた

なぜよく話すようになったのか?


私は小学校時代
家に居場所がなくて
朝一番に登校していた


皆が登校するまでの数分間の一人の時間が
唯一ほっとできる時間で大好きな時間だった

けれどK君と同じクラスになってから
朝一番が私ではなくなった

教室の鍵を開けるのはK君だった



彼が朝一番に来るのは
私と同じ理由なのかもしれないな

そしてK君も同じことを想っていたのかもしれない


だから「おはよう」のあとは誰かが来るまで
お互いぼーっと一人の時間を過ごしたり
話したい時は話したりそんな距離感

特別仲が良いとかトキメキとか
そういったものはないのだけれど
不思議と信頼関係が出来上がっていた




皆が注目する中で交わした「おはよう」は
小学校の時の「おはよう」に戻った感覚で
おはようの後も他愛ない会話を続けていた


K君は何も変わっていない

会話をする中で見せる笑顔だったり話し方は
小学校の時のK君と何ら変わらない


K君が金髪にリーゼントという風貌になったのは
中学1年の時の教師からの暴力がきっかけだった
皆の前で流血までしたと耳にした
(当時“叩く”は授業中によく見る光景でした)


K君は本当は
戻りたくても戻れない場所に
来てしまったのかもしれない

そんな事をうっすらと思った


出席日数の関係もあったのだろう
その日からK君は毎日登校するようになった


そして毎朝会話をする様子を見て
何人かのクラスメイトが
担任の先生に何を話したのか知らないが

三者面談の時に担任から
「Kから何か脅されているのか?」
と聞かれた時は驚いた


学年の先生の中で唯一
K君のことを気にかけてくれていた先生だったから
K君のことも私のことも心配しての言葉だったんだろう

けれど私はきっと怒っていた
K君はそんな人じゃない、と


「K君は何も変わっていませんよ」


この言葉と私の瞳(怒りの瞳をしていたのだろう)を見て
先生はハッとして真剣な顔になり


「そうやな、何も変わってないな。
 ありがとう。
 Kに言ったら喜ぶわ。
 これからも変わらず話してやってくれ。」


K君が入部していたクラブの顧問でもあった担任は
1年生の時のK君を知っている

嬉しそうな表情でそう言った




3学期も変わらず朝の会話は続いた

ある時クラスメイトに単刀直入に
「K君と話すの怖くないの?」と聞かれた

周りの皆が興味なさそうなふりをして
でも耳だけはこちらを向いている


小学校で同じクラスだったこと
話すと面白い人だということ
勉強が出来る人だということ
中学1年のときの暴力のこと
(聞いた子の友人が当時同じクラスだったそうで
詳しく話してくれた)

K君の人柄と
今のような風貌になったきっかけを
皆が知った瞬間だった


この後ぐらいから男子生徒が話しかけるようになり
気づけば「怖くないの?」と聞いた女の子も
K君と話しているのを目にするようになった


風貌は中学生らしくないかもしれないけれど
もうK君はクラスで浮いていない


卒業までにそうなって良かったと心底思った




最後の三者面談で担任の先生から

「「『何も変わっていない』は嬉しい言葉だった」
とKが言っていたよ。」

登校が続いたのもこの言葉と
変わらない会話のおかげかもしれないね、と言われ
心の中があたたかくなった




そうして迎えた卒業式

教室で最後の挨拶を終え
別れを惜しむように皆がなかなか帰ろうとしない中
ポンっと肩を叩かれた


「ありがとう」

笑顔のK君はその一言を私に言うと
一番に教室を出ていった


卒業式でも涙する気持ちが出てこなかった私だったが
この「ありがとう」にはウルっときそうになった


彼のいろんな想いを
ありがとうの5文字が代弁してくれている


そんな風に感じられた



「私こそありがとう」

と言葉を返した



「ありがとう」は
感謝を伝えたい時に自然に出る言葉



私の変わらない態度が何かを動かしたとは
露程つゆほどにも思っていなかったが

ありがとうを言われた時

K君にとって何かの役にたったのかな

とほんの少し想った






彼もまた小学校の時の私のように
私と接してくれていた

きっと私の登校が楽しくなったのも
彼との会話のおかげだろう


目に見えるものが変わっても
昔と変わらない態度で接してくれるのは

本質を理解してくれているような
不思議な安心感があった

私にとっても感謝したい時間だった
ありがとうを伝えたくなった




だから
「ありがとう」を言われたら
誰かの役に立てたとき




外見やその人の状況だったり
上司と部下に対してだったり
フリーランスになったら対応が変わったり

大人になってからは
その人の態度が一転する場面に
出逢うことも多かったけれど

私はこの経験があるから
“変わらない態度”を心がけるようにしている


そして
「ありがとう」と言われたことは
謙遜せずきちんと受けいれていこうと思う



だって自分に自信が持てない時でも
その瞬間は誰かの役に立っているのだから


ありがとうをたくさん受け取ったら
それは自信となって
未来の私にも役立つ時がやってくるのだから










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