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美術館に行くとつい買ってしまうポストカードみたいな

美術館に絵を見に行く。特別展ではなく常設展狙いで。常設展にはその美術館・地域の人々・行政の価値観が大いに反映される。美術品の蒐集には莫大なお金がかかるから。私設の美術館でなければその財源は公的な資金、つまりその地域の人々の税金(や寄付)で賄われており、つまりはその地域の人々の価値観を反映したものであるはず。(もしくはそれによって文化芸術の教育がなされていくから、後天的にそれらの芸術的価値観を獲得していくことになる)常設展を見ることの楽しみはその価値観を知ることにある。初めて行く美術館では、常設展が開いていれば必ず見てみるようにしている。芸術とはそれ自体に価値があるものではない。結局は人が作品に価値を見出すわけである。だから常設展を見るということは、何に価値を認めるのかを確かめるという意味でもあるんです。

美術館に行くとついついポストカードを買ってしまいます。それは言い換えるとぼくのポストカードのフォルダは自分の私設美術館のようだとも言えますよね。何に価値を認めて蒐集するかという点で美術館のコレクションと同じくしています。だからというわけではないですが、一度の鑑賞で買うのは3枚までと決めています。それほど高い買い物ではないけれど、あれもこれもと買っていては埒が明かない事態になってしまいますし、何よりもこの世界に溢れるものの中から選りすぐりのものを集めなければぼくのコレクションにならないですもんね。みんな違ってみんないい。それは否定しないけど、わたしが何に価値を認めるか、には自覚的でありたいです。

そうしているとポストカードがどんどんたまっていってしまうから、友達に手紙を送る時には必ず同封するようにしています。文通している友達とのおよそ2カ月かけて往復する定期便だったり、誕生日にだけ手紙を認めて送ったりだとか。先日も半月遅れのバースデーメッセージを、プレゼントとポストカードを添えて送りました。ポストカードはユトリロのパレット。入梅の頃、盛夏を前にしたこの時期に見ると清々しい気持ちになる爽やかな色合い。送ったその子にとても似合う素敵なカード。
 ついつい買いすぎてしまって持て余してしまうポストカードだけど、手紙を送る時に相手を思い浮かべて、今の気持ちや、季節や、相手に似合いそうなカードを選んで送ることがささやかな楽しみです。ちょっとばかしわくわくします。まるでぼくの美術館のコレクションをいろんな人の手元にとどめ置くみたいで。そう考えると少しロマンある話になってきませんか?

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