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ぼっち散歩

またもぼっちで歩いている。

ぼっちは少し疲れています_:(´q`」∠):_

最近いろいろな事件が世間を賑わせたこともあり、患者さんやそのご家族様はとても動揺していました。
日々その対応に追われていました。

「私の飲んでる薬は大丈夫ですか」
「あの薬もたくさん飲んだら死にますか」
そんな不安にかられる人もいれば
「歌舞伎役者さんが親を手に掛けるなんて何かよほどの事情があるんでしょうね。」
「自殺しようとしていたんですよね。この後も大丈夫ですかね。」
当事者の心に共鳴して引きずられてしまう人もいます。

有名人の自殺(未遂ふくむ)の後というのは患者さん達の動揺は大きく、注意深いケアが必要となります。
入院していても自傷行為を完全に防げるわけではありません。

患者さんの些細な変化をキャッチできるよう、いつもよりもアンテナの感度を高めるように意識します。
気づくとこちらもヘトヘトです。

そして続けざまににショッキングな事件が起きました。
ドクターから連絡を受け、私もテレビで中継を観ましたが体がザワザワしました。
案の定、翌日は外来予約の電話がパンクしそうでした。

「うちの子もサバイバルゲームが好きで部屋からあまり出てこないんです。」
「うちの子も人づきあいが苦手で会話が上手く出来ないんですよ。」
「どんな仕事に就かせても長続きしないのは病気ですか。」

この季節は気候が不安定であったり、新生活が始まったことで疲れが出てくる人も多かったりで元来精神科が混み合う時期でもあります。
(五月病という言葉があるくらいです。)

それに加え病院側にも、まだまだ慣れずに緊張しながら奮闘する新人さんがいるわけです。

業務プラス指導というハードな日々が続きます。

スタッフももちろん感情を持った人間であるため、自分ふくめ皆がピリピリして院内のムードが険悪なものとなる日もあります。


「あの新人ちゃん、今日は随分ぶんむくれてたなあ。
患者さん以上に落ち込んだ顔をしてたなあ。
がんばれがんばれ。」

そして初診の予約はあっという間に埋まってしまいます。
かなり先の案内となってしまうこともあり、そのたびに
「そんな先まで待てませんよ!」
「じゃあもう死ね、てことなんですね。」
「うちの子が事件を起こしたらアナタが責任とってくれるんですか!」

言われた瞬間は「んグゥ…」と複雑な気持ちになります。
でも「今苦しい」「今どうにかしたい」そんな気持ちでいる患者さんやご家族様からしたら当然の思いであり、誰かにぶつけたくなる気持ちもよく分かります。

「熱があってお腹がすごく痛むので診て下さい。」
「では2ヶ月後に予約とりますね。」
内科などでこんなやり取りは聞いたことありません。

精神科の患者さんはすごく多いのに、その数と比べてすぐに対応できる医療機関が少ないような気がします。

患者さんにとって「精神科を受診する」ということは、まだまだハードルが高いことのようです。
なのでことさら、患者さんが「受診しよう」と決意してくれた時にはすぐに受け入れられる体制だと良いのになあ…と勝手な理想を抱いています。
(院長、部長、なにとぞお頼み申す!!)

「内科の先生にずっと勧められていたけれど、自分が精神科に行くということをどうしても受け入れられなくてずっと予約を取らないでいました。」
と、1年半も前に交付された紹介状を持ってきた患者さんもいました。


「あの人は治療を始めて割と早く良くなったっけな。
『もっと早く来れば良かった。嘘みたいにラクになった。』
そう言ってもらえたときは嬉しかったなあ。」

まだまだ状態が不安定な患者さんや希死念慮が強まっている患者さん、そして辞めたい気持ちに傾き始めている新人さんがいます。


美しく咲く紫陽花に「さて、どうしたもんかねえ。」と話しかけながら私はてくてくてくてく歩きます。
答えなんて返って来なくても良いのです。
いてくれれば良いのです。
そして「精神科看護とやらも、結局そんなようなもんだよなあ。」と思ったりする雨のぼっち散歩でした。

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