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かぶらない話

かぶらんなぁ〜。

今日はかぶらない話を書こうと思う。

かぶらないとは?
帽子?いや、たまにかぶる。
ほっかむり?いや、皆もかぶらないだろう。
キャッチャーマスク?いや、私はキャッチャーではない。(ピッチャーでもない。)

では何なのか?それは、、、

男性の好みだ。(キリッ)


私は友達と男性の好みが「かぶらんなぁ〜」なのである。

小学校の頃は「勉強が出来る男子」「足が速い男子」「ドッジボールが強い男子」がモテていた。(わたし調べ)

クラスのほとんどの女子が頭の良いA君、足の速いB君、スポーツ全般得意なC君のうちの誰かを「好き!」と言っているなか、私は全く別の男子のことが好きだった。

私の好きな子は大人しく真面目で字がキレイだった。
お道具箱や筆箱の中がきちんと整頓されていた。(かっこいい…。)
半ズボンが主流な中、その子はいつも長ズボンにサスペンダーをしていた。(かっこいい…。)
友達と公園に行っても1人離れたところで猫を手懐けているか、ベンチで絵を描いているような男子だった。(かっこいい…。)

私は公園で鉄棒にスカートを巻き付けてグルングルン回転しながら彼を盗み見ては「ふう…今日もかっこいいぜ…」と胸をときめかせていた。

林間学校の夜「私は○○君が好きだな」と初めて友達に打ち明けた。
すると「えー!」「なんで!?」「どこが良いのか分かんなーい!」といったリアクションを取られ「みんな…こどもね。わかってないわ…。」と私は心の中で思った。

中学になると女子の好みは細分化されてゆく。
もう足が速いだけでは「それが何?飛脚?」と思われ、勉強が出来るだけでは「つまらない。」と思われる。
面白い人やちょっと不良っぽい人、またはバンドをやってる人が突然モテ始めた。

更に中1女子にとって「先輩」というアイドルのような存在まで現れた。
たかだか1〜2歳しか離れていないのに、先輩男子は大人に見えるから不思議である。

周りが不良やバンドやひょうきんに夢中になる中、私は「おじいちゃん」と呼ばれている男子のことを好きになった。
校長先生や用務員さんを好きになったわけではない。
れっきとした同級生である。

彼は制服のブレザーがいつも肩からズリ落ちていて手は袖ですっぽり隠れていた。
全体的にどこかグニャグニャゆらゆらしていて床から数センチ浮いてるような歩き方だった。
そのたたずまいから「おじいちゃん」と呼ばれていたのだろう。
細身なのに大食いで、話し声は小さいのに笑い声は大きかった。
(…かっこいい。)

彼のことを「良い」と言う友達は誰もいなかった。

彼と仲良くはなったが想いを伝えることもなく卒業してしまった。


高校生になると男子と合コンのようなものが頻回に行われるようになった。
高校を卒業した後も合コン、飲み会と呼び名こそ違うが「男性との出会いの場」の会合には頻回に声がかかった。
何故そうも頻回に呼ばれるのか。

そのつど女友達は言った。

「かをちんとは好みが絶対にかぶらないから安心♪」と。

それはそうだろう。
1人でもライバルは減らしておきたい。
私のようなガサツ&ポンコツ&ゆるキャラ体型がライバルに匹敵するかはまた別の話であり、少しでも倍率は低い方が良いに決まっている。

友達同士が1人の男性を狙ってギラギラしているのを傍から見ているのは楽しかった。
私は女同士の死闘を肴に酒を飲みホッケをつついた。
レモンサワーをどんどんお代わりし、オムそばをちゃっかり自分の分だけ取り分けて食べていた。

オムそばを勢いよくゾゾゾっとすすったその時、1人の男性が目に飛び込んでくる。
思わず2度見だ。

(あれ?あんな人いたっけ?)

隣に座っている男性に尋ねる。
「マジか!最初からいたわ(笑)!」とツッコまれる。

ナイスな眼鏡とナイスな喉仏だ。

何飲んでんだ…酒なのか、お茶なのか…
皿が汚れていないがまさか何も食べていないのだろうか…
オムそばを分けてやりたい。
誰かと口はきいているのか……
そもそも何しに来たのだろう…(私も)

そうなるともう彼が気になって仕方ない。
(病気)

彼について隣の男性にリサーチを始める。
看護においても情報収集は最も大切だ。

とりあえず彼が大人しく生真面目で掴みどころがない風変わりボーイということだけは分かった。
オッケー充分だ。
それでもう何となく好きだ。(病気)

話してみるとやはり大人しいながらも所々おもしろい。
爪も手もキレイだ。
威張ったのところもないし話し方もキレイだ。
何より、好きなことや関心のあることに対しては人が変わったように夢中で話している。
(私にはさっぱり分からない話だ)

良い。とても良い。

「好きなことをものすごく好きだ。」
そんな人が私は好きだ。
自分の好きなものをとことん追求して、思考が世界の果てまで行ってQしてしまいそうな人。
他の誰も邪魔できない自分だけの世界を持っている人。

そういう人たちにどれほど憧れてその世界を一目覗いてみたくとも、その人たちが大事にしている世界や時間を邪魔してはいけない気がしてしまう。

でも邪魔したい。
いや、邪魔したらダメだ。
土足でズカズカ踏み込んでやりたい。
いやいや、そんなことしたらダメだ。

そんなことをグルグル考えながら歩いているうちに、私は私で「こじらせ」という世界の外れの方まで歩いて来てしまった。

周りと「かぶらない」男性を好きになり、その男性の好みにも「かぶらない」私だ。

しかし好きなことをどこまでも自由に追求し、大気圏あたりでフワフワしている人を想い浮かべるのは楽しい。
「皆とかぶらない風変わりを好きになって、それはそれで幸せだなあ~。」と呑気に思っている。







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