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企業の株価を上げるには投資家(機関・個人ともに)は英文開示の充実を企業に促しましょう


英文開示の充実が株価上昇に繋がる

私の場合、中小型銘柄の株式投資が中心ですが、先日、PBR1倍割れの時価総額1兆円超えの大型銘柄を購入し(外人株主保有比率30%超)、早速、この企業にメールである質問をしたところ、質問の翌日にIR部門から丁寧な回答を頂きました。中小型銘柄の場合、IRからの回答は遅い場合が多いのですが、さすが超大手企業のIR部門です。

さて、東証の市場区分の見直しに関するフォローアップ会議が先日開催されたことを、次のとおり簡単に紹介させて頂きました。

この時の会議の議事録が、先日公表されました。

https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/follow-up/nlsgeu000006gevo-att/jr4eth0000004iuf.pdf

金融庁のコーポレートガバナンスの改訂を議論する会議などは、議事録の開示がかなり遅かったのですが、東証のこの会議は議事録の開示が非常に早いですね。
今回の会議では、英文開示についても委員から色々と意見があったようですが、私は決算関係資料の英文開示を企業に促すことは株価向上に繋がると考えています。だって、英文資料を開示することで、海外投資家の目にとまり海外のマネーが入ってくるからです。株価向上には、機関投資家が株式を購入することが必須になってきますが、そのためには英文開示の充実が大事とうことです。

投資家は英文開示の充実を企業に促しましょう

だから、機関投資家や個人投資家が、業績は良いが、英文開示に消極的な企業に対して英文開示の充実を要請することで、その企業を海外投資家の目にとまりやすくさせるということは1つの手法として有りかなと思います。いくらキラリと光る原石であっても、地中の深くにある限り発見されないままですが、少しでも地表に露出すれば見つけてもらえるということです。
技術の高い中小型銘柄で、PBR1倍割れ、外人株主の比率の低い企業を洗いだし、「英文開示をはよせい」とせっつくと面白いのではと思います。

英文開示を促すための理論武装

そのためには理論武装が必要ですが、会議での委員の発言は1つ参考になると思います。委員の発言を覚えて、「東証のフォローアップ会議で委員も〇〇といった発言をしている」ということをいうわけです。以下、今回の会議での発言の中、参考になりそうなものをあげ、少し説明いたします(いずれも議事録からの一部抜粋となります。私が重要と考える箇所を太字にしてあります)。

海外投資家と話すと、日本企業に投資しない理由として英文開示が行われて
いないことを理由に挙げるケースがあり、非常に大きな機会損失がある
と感じています。特に、現状は、今回の東証の要請を踏まえて、多くの日本企業が変わろうとしている局面にあります。こうした変化の局面は投資家にとっては大きな投資チャンスになるはずであり、英文開示を通じてそうした情報を積極的に発信していくべきです。英文開示資料に誤りがあっても罰則がないことを考えると、もちろん細心の注意を払わなければなりませんが、行き過ぎた無謬性に拘泥することなく、人工知能を活用した翻訳ソフトなどをうまく活用することが英文開示資料作成の有力な補助ツールになるのではないかと思います。個人的には、最近の翻訳ソフトは非常に質が高いと感じており、これを有効活用すれば、企業の英文開示率が飛躍的に上昇するのでないかと期待しております。

この発言をされた方は、投資家にとって大きな投資チャンスになると言っていますね。「英語が出来ない社員が多いので無理」という言い訳をする企業もあるかも知れませんが、今や英訳など手作業ではなく、翻訳ソフトなどを利用する時代ですね。私は、勤務先でディープラーニングを使用しており、これまで英訳に30分かけていたものが30秒で出来ます。本当に技術の進歩はすさまじいです。だから英訳が出来ないという理由は通じません。

意見が少し異なるのが、開示する書類についてでして、有価証券報告書は、
発行体からすると英訳の負荷が高い一方、投資家のニーズはそこまで高くないと思っています。例えば、弊社を例に挙げると、海外投資家比率は40%程度ですが、実際に英文開示を行っているのは決算短信のサマリー、適時開示資料、決算説明会資料で、それ以上の英訳を求められたことは上場以来5年間ありません。こうしたことからも、有価証券報告書の英文開示は追って必要にはなるかもしれませんが、優先度と言う意味では低いのではないかと考えています。

有価証券報告書の英訳の必要性は高くないという意見ですね。たしかにその通りかも知れません。だから企業は投資家が必要とする最低限の資料の英訳だけを準備すればよいのです。労力も小さいはずです。決算など4半期に1回だし。

英文にするのが大変だという声があるようですが、英語にすると遅延が起こ
るというのは言い訳にならない
と思います。また、先ほど熊谷メンバーからソフトが進化しているというお話がありましたが、生成AIの活用を視野に入れたときには、もはや英訳という作業の問題ではないと思います。英訳自体は比較的簡単にできる一方で、それを公表する際に、完璧な英語というよりミスリードにならないように、伝達内容、意図、専門用語が正しく使われているか、重大な虚偽や瑕疵がないかなど、どこをチェックするのかということを体制として整える必要があり、英訳の作業がどうこうという話ではないと思います。企業側でも、マインドセットを変えなければならない部分があると思いました。

翻訳ソフトを使用してもそのまま開示するのは少しリスキーです。時々誤訳もまだあります。ので、最後は社内のチェックは一応必要ですね。外国人でなくても、英語だけは得意ということで学歴不問で社員、派遣社員(この手の英語だけが得意という方はいくらでも世の中にはいます。私は、自分の部門で採用するためかなりの人数の面接をしたことがあります)を1名採用しておけば、コストも低く抑えられるでしょう。

岸田政権において資産運用立国が掲げられ、「投資される国」を目指すと発信されている中で、英文開示は「投資される国」になるための最低限の社会インフラであると思っています。その意味で義務化の方針には賛成します。ただ一方で、三瓶メンバーもおっしゃっていましたが、海外投資家がフラストレーションに感じているのは、情報の格差や大手の企業でも開示している企業としていない企業があること、また開示している企業でも開示している内容にバラつきがあるというところだと思います。バラつきはあることで市場全体の評価を押し下げてしまっている気がしており、まずはバラつきを統一していくことが必要だと思います。

その通りです。海外投資家が日本企業の株を買うことが市場全体の株価を上げることになります。

これから海外投資家を呼び込んでいきたい企業が情報発信する場としては積極的に活用すべきですし、そうした企業が出てくることが資本市場としては好ましいと思いますので、義務化/努力義務化の2つに分けて英文開示を要請していくことが好ましいと考えています。

今回初めて海外投資家の7割以上が日本企業の英文開示について不満をもっているという声やニーズと企業の実態との差異がわかったわけで、これをプライム市場の企業がどう捉えるのか、どう考えるのか問いかけることが重要だと思います。アンケート調査結果を見ますと、なぜ英文開示をしなければならないのかといった認識をもつ企業もまだ多いようですが、海外投資家のニーズとの乖離があるということをしっかり受け止めていただき、マーケットに評価されるためには英文開示が必要であるというマインドセットの変化を促すことが重要だと思います。義務化されたからやらなければならないということではなく、やらないと企業経営としてまずいというマインドセットが大事だと思います。

「やらないと経営としてまずい」とは、「株価が上がらないのでまずい」ということです。そういう意識を持っていない企業には、意識を持たせる必要があります。

まとめ ー 東証資料と議事録を読みましょう!


ということで委員会の議事録から発言を一部抜粋させて頂きましたが、プロフェッショナルの方たちの発言ですので重みがあると思います。特に個人投資家や個人株主の方は、今回の東証のフォローアップ会議資料と議事録全文をじっくりと読をことをお勧めします。個人的には、個人投資家の方を集めて、こういう会議資料の勉強会を開催したいところです。