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PBR向上の鍵 ー 自社株買いだけでは難しいです。中期経営計画の達成の確からしさを資本市場に示すことがポイント


ひとまずのROE向上の施策

日経平均株価が上昇していますね。アクティビストの活動も活発化しています。アクティビストが投資した銘柄を追いかけて買う「コバンザメ投資」も面白いと思いますし、私は実践中です。
さて、株価を意識した経営の開示企業リストが1月15日に公表され、今後は毎月アップデートされますが、「株価を意識した経営」は今年の株主総会の目玉になると思います。本日は、株価向上関係ということで、PBR向上施策について簡単に説明したいと思います。小難しいコーポレートファイナンス理論等を一切省いて、シンプルに説明します。

この1年間で頻出したキーワードは「PBR=ROE×PER」だと思います。だいぶ世の中に浸透したかと思います。
「PBR向上=株価上昇」には、ROEの向上がまず大事です。ROEを分解すると、ROE=売上高当期利益率×総資産回転率×財務レバレッジです。
このROEを向上させるにはどうすれば良いかというと、手っ取り早い手段は株主資本を減らすことで、自社株買いがあります。先日の日経新聞でも次の記事がありました。

株主還元でROE向上を目指す企業は結構多いです。けど、問題は、自社株買いでROEの改善を図っても中長期でのPBR改善につながらないことが多いということです。一時的に株価は上がりますが、暫くすると元に戻ることが多いのです。

その理由は、やはり市場は企業の利益率の改善を見ているということだと思います。つまり、本業に着目しているといるのです。自社株買いは一時的な施策であり、自社株買いでROEが一時改善しても、それが未来も続くとは市場は見ていないのです。
株価は業績に収斂されるといわれていますが、業績のコアにある利益率の向上によるROE改善でないと中長期での株価向上にはつながらないのです。当期利益率向上のためには、まずは、本業である営業利益率を向上させることが大事です。その上で、その高い営業利益率の継続が肝になります。

市場に信頼されない中期経営計画

では、投資家は何を見て高い営業利益率の継続を期待するのかというと、材料の1つに企業の策定する中期経営計画があります。けど、「うちの会社は中期経営計画の成長戦略で3年後に営業利益率XX%を掲げているのに株価がちっとも反応しないな」と思っている経営層の方も多いと思います。それは何故でしょうか?

それは、その中期経営計画の数値の達成の確からしさを市場が信頼していないからです。いくらバラ色の成長戦略を策定しても、プロである機関投資家がそれを鵜呑みにすることはありません。個人投資家であれば、「おーすごいぞ!」ということでそのまま信じる方が多いかも知れませんが、機関投資家は必ず信ぴょう性を確認します。

「会社はバラ色の計画を出しているけど本当に達成できるのか?」「製品のターゲットとなるマーケットの成長率を超える収益の成長率となっているけどそれって本当にできるの?」というように機関投資家は考えているのです。「M&Aでの成長投資を実施していきます」というように一言だけ中計に書いている企業も目にしますが、それも市場には信頼されないケースが多いですね。

中期経営計画に掲げる目標達成の具体的施策の開示がポイントです

だから、機関投資家に納得して貰うには、中期経営計画達成のエビデンスとなる具体的な施策を示すことが大事になります。

勿論、詳細は決まっていないこともあるし、機密性の観点から全部開示が出来ないことは当然です。けど、仮に成長戦略としてM&Aを施策として掲げるなら、具体的にどの領域、どの程度の規模感のM&Aであるのか等を示すことが大事です。また、一般に想定されている市場成長率を超える収益の成長率を掲げるのであれば、その達成の施策を示す必要があります。どの分野を、どういう手法で、どういうリソースを使って、どういう年間の取り組み計画があるのかなどです。

こういった内容を開示することにより、機関投資家が中期経営計画の確からしさを信じ、株価向上へと向かうのです。立派な中期経営計画策定している会社も多いかと思いますが、今一度、第三者的な立場に立って、自社の中計の施策が市場に納得が得られる開示になっているか確認してみると良いと思います。