機関投資家が不機嫌にならないROEの基準 ー 「この水準を超えないと不満だ!」という基準です

本日、午前中に「機関投資家が考えるROEの最低基準は?ー『この数値を下回ることは許さん』という基準です」ということで記事を書きましたが、これに関連しての記事になります。

ROE5%を下回ると、機関投資家は議決権行使基準に従い、投資先企業の経営トップや3年以上在籍の取締役の選任議案には反対することを説明しましたが、5%というのは機関投資家が「もう我慢ならぬ!」ということで堪忍袋の緒が切れる水準ということになります。

では、機関統投資家が「最低この程度はないと満足しない」という基準はいくつでしょうか? ご認識の方も多いと思いますが、ざっくりいうと8%程度と考えてよいかと思います。

ROE8%ということが言われたのは、一橋大学の伊藤教授が中心に纏めた伊藤レポートで書かれていたことが発端です。伊藤レポートは何回か改定されているのですが、たしか2017年のレポートでしたでしょうか? 時期は少し記憶が曖昧ですが、いずれせよ、伊藤レポートで最低8%程度を目安にすべきと提言されたわけです。

これは、日本の上場企業全体について考える株主資本コスト(=機関投資家が株主投資で求めるリターンのことです)を機関投資家にヒアリングしたところ、7%台であったので、ROEは株主資本コストを上回る必要があるので、8%にしたということだったと思います。

とうことで、上場企業に一般的に求められるROEは8%であって、これを満たさないと機関投資家は不機嫌になります(厳密には、株主資本コストは業界や企業によって異なるので、一律8%とは言えませんが、ここでは8%としておきます)。

また、最近よく耳にするPBR1倍以上のためにもROE8%が必要と言われています。PBRとは株価純資産倍率で株価÷1株当たり純資産で算出されますが、1倍を下回ると割安といわれ、日本の株式市場には1倍を下回る残念な企業が多いので、1倍を上回る施策を開示することを東証が本年4月に要請をしています。そして、PBR=ROE×PERに分解でき、ROEが8%にいかないとPERも上がらず、PBRもなかなか1倍を超えないと言われています。

ということで、機関投資家はROE8%を基準に考えています。つまり、8%を超えないとかなり不機嫌になるということです。従い、個人投資家・個人株主の方も、ROE8%が投資先企業が達成すべき最低の数値基準であり、ROE8%を下回る場合には、どう達成するのかのROE向上策を投資先企業の株主総会やIR部門に質問をするのは極めて合理的な建設的な対話と言えます。

ところで、PBR1倍を上回る施策を開示せよと東証は言っているわけですが、これはどこに開示せよと東証は言っているのでしょうか?次回、説明をしたいと思います。