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まじょのなみだ(15)

母は私の前では全く弱音を吐かない。

きっとがん闘病中の私に、恐怖を与えないように。
また、乗り越える姿を見せようとしてくれているのだと思う。

それを感じていたから、
私は母の回復を100パーセント信じて、私も同じく完治するからと
前向きな話しかしなかった。

「死」など、母と私の間では絶対出ないワードで。
・・・いや、お互いに避けていた。

しかし母は察していた。

わたしの弟や母友のおばさんには
「あとをよろしく」
というような事を言っていたという。

それでもあくまで私と母の間では前向きなスタンスを貫いていた。

たまにはバレバレの演技がかっていても、
無理矢理の笑顔でも、
「そやね。」
って言う。

頑固な母娘。

母と私の2人の間だけは、意地でも死を感じるような話はしなかった。

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