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逮捕≠有罪!弁護士が明かす"逮捕"の真実 あなたの常識は間違っているかも

逮捕は制裁ではない!

こんにちは、弁護士の髙野です。
先日、私はX(Twitter)で次のような引用リポストをしました。

この投稿をきっかけに、逮捕とはそもそもどういう状況なのか、詳しく解説したいと思います。


逮捕される事件とされない事件がある

まず知っておくべきなのは、刑事事件で罪を犯した人が特定されても、全員が逮捕されるわけではないということです。実際には、逮捕されない「在宅事件」のほうが、逮捕される事件よりもかなり多いのが現状です。逮捕されるかどうかは、主に「逃亡や罪証隠滅のおそれ」があるかどうかで決まります。

逮捕の要件

逮捕の要件を詳しく見ていきましょう。
ここでは最も一般的な通常逮捕を例に説明します。通常逮捕では、裁判所が発布した逮捕状に基づいて捜査機関が被疑者を逮捕します。ドラマでよく見る、チャイムが鳴ってドアを開けると警察官が待ち構えているシーンがこれにあたります。
逮捕の要件は大きく2つあります。
1つ目は「逮捕の理由」で、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があることです。簡単に言えば、疑われていることです。
2つ目は「逮捕の必要性」で、被疑者に罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが認められることです。罪証隠滅のおそれとは、社会内で生活させていると共犯者と口裏を合わせたり、被害者に接触したりして証拠を隠滅される危険がある場合を指します。逃亡のおそれは、独身で定職に就いていないなど、今の生活を捨ててどこかに行ってしまう危険がある場合に認められます。
重要なのは、逮捕されるかされないかは、この罪証隠滅のおそれと逃亡のおそれの有無で決まるということです。在宅捜査される人にも「罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」はあります。

逮捕状発布の手続きは杜撰

この罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれの有無を判断し、逮捕状を発布するかを判断するのが裁判所です。
しかし、現状では逮捕状の発布がザルだと言わざるを得ません。報道を見ていると、なぜこの事件で逮捕する必要があるのか理解できないケースも少なくありません。最近で言えば、タクシーで鳩を轢こうとした事件や、路上で楽器を演奏していた人が逮捕された事件などです。みなさんも報道を目にした記憶はあるのではないでしょうか。これらのことから、逮捕状の発布は「自動販売機のようだ」と揶揄されることもあります。

罪を犯したことが確定しているわけではない

ここで強調したいのは、逮捕されたからといって罪を犯していることが確定しているわけではないということです。逮捕の要件を見れば分かるように、この時点では「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」があるだけです。逮捕は捜査の初期段階で行われるため、起訴や判決の段階よりもハードルが低く設定されています。 私自身、逮捕された被疑者の弁護活動を行い、結果として嫌疑不十分で不起訴となったケースを数多く経験しています。

制裁・処罰ではない

逮捕は罪証隠滅や逃亡を防ぐ目的で行われるもので、処罰や制裁としての目的で行うことは絶対に許されません。冒頭のポストのような事件でも、罪証隠滅や逃亡のおそれがないのであれば、逮捕することは決して許されないのです。

メディアによる報道の問題点

一定数の人は、逮捕された人イコール罪を犯した人、と考えているのではないでしょうか。ここまでお話してきたとおり、それは誤りです。このように誤解されてしまっている原因の一つは、マスコミによる報道にあると思います。日本の報道機関は、逮捕の時点で大々的に取り上げ、実名と顔写真(映像)つきで報道します。しかしそれが報道のピークです。一応不起訴になった時点でもネット記事などは上がっているようですが、ごくわずかです。このような状況から、多くの人は逮捕された人は罪を犯した人と考えるようになってしまっているのです。

まとめ

逮捕されてしまえば、刑事手続きは進んでいきます。弁護士を依頼し、捜査機関に適切に対応する必要があります。
しかし、逮捕されたからといって罪を犯したことが確定しているわけではありません。人違いや被害者の誤解から逮捕されてしまうケースも少なくありません。私たちは逮捕の事実をもっと冷静に捉える必要があります。逮捕は罪の確定ではなく、あくまで捜査の一過程にすぎません。メディアの報道に惑わされず、逮捕の本当の意味を理解することが、公正な社会を作る第一歩となるのではないでしょうか。

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