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【カルチャー】読んだ本、聴いた音楽、観た映画について

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私の好きなカルチャーについて語っています。 読んだ本、聴いた音楽、観た映画の感想など。
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2023年10月の記事一覧

【カルチャー】本質に辿り着こうとする態度こそ、教育者としての教養なのではないか。「大辻清司実験室」を読んで。

大辻清司さんの名前を知ったのはいつだったか。 通っていた大学の教授が元々大辻さんの研究をされていたというのもあって、作品はきちんと見ていなくても、どういう仕事をされてきたかというのはなんとなく知っていた。 ただ、私の中では大辻さんは写真家というより教育者としての認識が高くて、実際に大辻さんが育てた写真家は多いし、評価が高いのはもちろんのこと、私が個人的に好きな写真家もいる。 この本は大辻さんの代表的な仕事である「実験室」を書籍化したもの。元は今はなき「アサヒカメラ」で1

【カルチャー】BL(ボーイズラブ)小説であり、哲学書でもある。ヘルマン・ヘッセの「デミアン」を読んで。

そうか、君はそう言うヤツだったのか。でおなじみ?のヘルマン・ヘッセの代表作。 少年シンクレールが、早熟な少年デミアンと出会い、「本当の自分とは何か?」「よりよい生き方とはどんな生き方か?」を考え、悩み、精神的に成長していくという、極めてシンプルな物語。 達観した人生観を持つデミアン。 どこまでもストイックに自分を律するシンクレール。 この2人の関係性はどこかBL(ボーイズラブ)を思わせて尊いのだけど、シンクレールのストイックさもまたイイ。 自らの運命を生きようと欲する

【カルチャー】最高にカッコイイ写真。Robert Frankの「THE AMERICANS」にまつわる思い出。

10代のウブな私に、 「この写真カッコよかぜ」 と、 ロバート・フランクの「THE AMERICANS」を 教えてくれたK君。 知的で、 オシャレで、 ユーモアのある彼は、 それはそれはモテた。 ウブで根暗なチェリーボーイのティーンエイジの私は、そんなKに憧れて、彼の真似をしてみたけれど、しょせん猿真に過ぎず、 「あぁ、あいつKの真似してんな」 と周りから言われる始末だった。 「この写真カッコよかぜ」 彼がそう教えてくれた日からかれこれ10数年。 今もロ

【カルチャー】別れの意味。レイモンド・チャンドラー「長い別れ」を読んで。

友人とこの本の話になり、懐かしくなって再々読。 学生のときに清水訳、村上訳のどちらも読んだから、新訳のこちらにトライ。評判通りの素晴らしい翻訳だった。 著者であるチャンドラーの中に、主人公であるマーロウと、この物語のキーマンであるレノックスという2つの人格があり、その2つの人格を別れさせるために、チャンドラーはこの物語を書いたのではないか? というのは村上春樹氏の解釈であり、例の友人も「確かにレノックスときちんとお別れをするための物語だと思った」とのこと。 その解釈を

【カルチャー】人間が創造的(想像的)であるためには。「自然知能/外山滋比古」を読んで。

著者の代表作である「思考の整理学」は私にとってのバイブルで、折に触れて何度も読み返して、その度にいろんな示唆を与えてもらってきた。 最後に読み返したのは確か1年くらい前だったけど、40年近く前に書かれた本なのに「コンピューターが出てきた今、人間が本来持っている想像力(創造力)を見直すべきだ」という主張を当時からされていたことに驚いた。 そんな外山さんが晩年、人工知能(AI)を自然知能(NI)という逆説を通して語られていたと知ったからには、そりゃもう読むしかないだろうという

【カルチャー】2023年10月に読んだ本。エッセイ・新書多め。

2023年10月に読んだ本。合計11冊。 エッセイ・新書が多め。 自分の心と身体に正直になることの大切さに気づく とはいえ、それが難しいから、そのための方法を模索中・・・ 以下、簡単な書評とamazonリンク。 購読のご参考にどうぞ。 食べて、祈って、恋をして/エリザベス・ギルバート 心豊かに自分の人生を生きていきたいと願う人たちにとって、いろんな示唆を与えてくれる本。 中学校の授業でネット中傷を考えた 指先ひとつで加害者にならないために/宇多川はるか ”ファ

【カルチャー】今も心に残っている、櫻井敦司さんのライブMC。

つい数十分前、ロックバンドBUCK-TICKのヴォーカリスト、櫻井敦司さんが10月19日に亡くなったことを知った。 BUCK-TICKは言わずもがな有名なバンドだったから、ロックに興味を持ち始めてからはファンというほどでなくても存在はもちろん知っていたんだけど、ある日テレビを見ていたら「独壇場Beauty」のライブ映像が流れてきて、一瞬でファンになってしまった。 それ以来アルバムもたくさん聴いたし、ライブにも何度か足を運んだ。 もちろん楽曲もライブも素晴らしかったんだけ