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HKT48博多歌笑劇 第二話

HKT48博多歌笑劇

第二話

★配役

☆田中家
姉:田中美久
妹:田中伊桜莉

☆テナントビル・アネックス田中
2階・ダンスボーカル教室「ナンシーと音」
オーナー講師:下野由貴
ダンス講師:本村碧唯
今回の生徒:
神志那結衣 渕上舞 栗原紗英 山内祐奈 山下エミリー 村川緋杏 武田智加 宮﨑想乃 石安伊 渡部愛加里

1階・鉄板お好み焼き屋「食べ鉄亭」
店主:松本日向
常連客:市村愛理                    

☆松岡商事
ヤンキー女社長:松岡菜摘
チンピラ社員:秋吉優花(男装)

お巡りさん(兼ナレーション):坂口理子

★影ナレ
M00 Overture

★ステージ暗転
★オープニングナレーション:坂口理子
★ナレ【福岡市内に建つテナントビル、アネックス田中。家出した母親の借金の担保たんぽになっていたこのビルを守るため、田中姉妹は借金取り相手に奮闘ふんとうしていた】
★ステージに並んで立つ美久と伊桜莉にピンスポットが当たる
伊桜莉「前回はなんとかピンチを乗り切ることが出来ました。教室の生徒さんの助けもあって、今のところは借金取りを追い返せています。が、向こうもなかなか諦めてくれそうにありません」
美久「まったく、しつこいヤツらだよなっ」
伊桜莉「母も行方不明のままです」
美久「まったく、どこで何やってんだかなっ」
伊桜莉「母のSNSを見ると、どうやらボートレース好きの男の人と一緒に居るみたいなんですが…」
美久「まったく、いい気なもんだよなっ!」
伊桜莉「それでも、私たちは唯一の収入源であるこのビルを失うわけにはいきません」
美久「まったく、この先どうなるんだろうなっ」
伊桜莉「果たして、私たちは借金取りからこのビルを守ることが出来るのでしょうか」
★暗転
★ナレ【姉妹は戦う。立ちはだかる運命に向かって。何度はじき返されても、わずかな可能性を信じて】
★M01「ヒーロー」麻倉未稀(ドラマ「スクール☆ウォーズ」主題歌)が流れ始める
★スクリーンにオープニングタイトル
 「第二話 ヘンサイ☆ウォーズ」
スクールウォーズ OP
★ナレ【…このドラマは、借金を取立てる業者たちに立ち向かう、勇敢ゆうかんな姉妹と店主たち、そしてそこにつどうお客たちの、奇跡の物語である】

★ステージ明転 

M01 「ヒーロー」麻倉未稀 (ドラマ「スクール☆ウォーズ」主題歌)
ヒーロー 麻倉未稀 Miki Asakura

★ソロボーカル:神志那結衣

渕上  栗原  山下  渡部  村川
  石   武田  宮﨑  山内
        神志那

★全員、ちょっとお出かけな感じの大人な私服。神志那と渕上はタイトスカート、村川はワイドパンツかガウチョパンツみたいなすそが広いロングパンツ
★イントロは決めポーズのまま不動
★曲中のフォーメーション移動なし、ボーカルは決まった振り付けなしでその場で感じるままに、ボーカル以外は緩めの大人びた振り付け(以下2曲も同じ)

M02 「CAT’S EYE」杏里  
CAT'S EYE 杏里

★前列3人がボーカル

  渕上  神志那 村川
石   武田  宮﨑  山内
  栗原  山下  渡部

M03 「キューティーハニー」倖田來未  
倖田來未-KODA KUMI-『キューティーハニー』~ 20th Year Special Full Ver. ~

★前列4人がボーカル

  渕上  神志那 村川
  栗原  山下  渡部
石   武田  宮﨑  山内

(M02、M03は省略しても可)

★下手より下野と本村が拍手しながら登場
下野「うまいうまい。みんないい感じよ」
本村「ダンスも大人の魅力が出てるよ〜」
★下野が最前センターに来て、観客席を向き口を開く
下野「ここは御存知ごぞんじの通り、ダンスボーカル教室の『ナンシーと音』よ。今日は土曜日だから、社会人中心のこんな生徒さんたちが来てくれてるわ」
本村「だから由貴ちゃん、そっちは壁だってば」
下野「アハ、気にしない気にしない」
★下野が生徒のみんなの方を向く
下野「みんないい調子ね。この感じで続けていけば次の市民まつりのステージ、入賞も狙えそうね」
本村「頑張って練習するぞー!」
全員「おー!」
下野「じゃあ、下に行ってみんなでお好み焼きパーティーにしましょう。貴重品だけは自分で持ってね」
全員「は〜い」
★下野が客席を向く
下野「では皆さん、この後は、1階の鉄板お好み焼き屋『食べ鉄亭』のシーンよ!それじゃあセットチェンジ、行ってみよー!」
★暗転、全員集合のオープニングのBGMが流れる
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★セットチェンジ後、明転。下手側に3つのテーブルと丸イス、上手側にカウンターと高めの丸イスがあり、カウンターの中で店主の作務衣姿さむえすがたの松本がボウルを抱えて混ぜる仕草をしながら立ち、猫耳の市村がカウンター長辺の左、入口側の丸イスにやや半身になって腰掛け見守っている。真ん中の入口から美久と伊桜莉が入ってくる
美&伊「こんばんわ~」
★松本と市村がパッと振り向く
松本「いらっしゃーい」
市村「こんばんわ」
美久「あいちー、いつもここで会うな!」
市村「うん。せっかくタダで食べさせてくれるんだから、来ないともったいないでしょ」
美久「確かにな。で、フォロワーは戻って来たんか?」
★市村がピタッと動きを止め宙を見上げたまま動かなくなる
伊桜莉「フリーズしちゃったよ!」
★伊桜莉が駆け寄り市村の目の前で手を振るが反応がない
松本「アホやな、フォロワーの話はアカンわ。傷口に塩を塗ってどないすんねん。デリカシーのないヤツやなぁホンマ」
美久「アンタに言われたくないね!」
伊桜莉「あいちー、あいちー、大丈夫?」
★伊桜莉が市村の肩を揺さぶると、市村がハッと我に返る
市村「ハッ、ゴメン考え込んじゃった」
伊桜莉「こっちこそゴメンねあいちー。お姉ちゃんは心配してるだけで悪気は無いのよ」
市村「うん、いいのいいの。もう諦めもついたから。ハハハ…」
★乾いた笑みを返す市村
松本「あ、そやわ、そっちはどうなん?お母さん見つかった?」
美久「いいえ、ぜ〜んぜん」
松本「そうかぁ、早う見つかるとええなあ。そやないと心配で夜しか眠れへんで」
市村「…ん、夜しか眠れない?」
伊桜莉「それ普通の事じゃないですか!」
松本「バレたぁ?でもホンマに心配はしてんねんで」
美久「ホントかぁ?あんまりふざけた事言ってっと家賃倍だからな!」
松本「そら困るわ。そんなん言われたらウチ、ここ出て行くしかないわぁ。店はヨソでも出せるしな」
伊桜莉「冗談、冗談ですから、気にしないで下さい」
松本「わかってるわかってる。こっちも冗談やって。本気にせんといてや」
★松本が後ろを向いて洗い物をする仕草をする
美久「じゃあオバちゃん、豚玉ふたつねー」
松本「オバちゃんはおらんでー」
美久「え?」
松本「ここにおるんはお姉さんやで」
美久「あ、そっか、じゃあ、お姉さん、豚玉ふたつ」
松本「あいよ〜。座って待っとってやー」
★カウンターに背を向け、右テーブルへ向かう美久
美久「面倒くせえババアだな」
松本「なんか言うたぁ?」
美久「え?言ってないよー」
松本「そうかぁ?なんや聞こえた気がしたんやけどな」
美久「気のせい気のせい」
★美久が両手を広げてセーフのポーズ。美久がテーブルの右手前に、伊桜莉が左手前に座る
松本「準備出来たで」
★松本がボウル2つを持ってテーブル席へ
松本「二人ともお母さんの手料理しばらく食べてへんやろ?ウチが代わりに腕を振るったるからな。見とってや、今日はウチの全集中の実力、たっぷり見せたるで!」
★松本がボウルを持った両手を上へ突き上げる
「うわあっ、しもたこぼしてもた、あらら」
★バタバタする松本。それを見て慌ててボウルに手を伸ばす美久と伊桜莉
美久「いいよいいよ、自分たちでやるよ」
伊桜莉「私も今日は自分でやりたい気分なんです。ぜひやらせてください!」
松本「そうなん?ほな、任せるわ」
★ボウルを渡しカウンターに戻る松本。入口から生徒たちが入ってくる(服はそのまま)
全員「こんばんわ~」
松本「いらっしゃーい」
栗原「あっ、ほら、あいちーだよ!配信してたあいちーがいるよ!」
山下「ホントだ!ホンモノだ〜!」
山内「猫耳カワイイ〜」
★生徒たちが市村を囲む
神志那「先生から話聞いて、配信見たよ」
渡部「すっかりファンになっちゃった。友達にも見てって言っといたよ」
市村「ありがとう〜」
村川「大丈夫だよ、絶対またフォロワー増えるって!」
★市村がピタッと固まる
伊桜莉「あ、また止まった」
村川「え〜っ!?なんで?」
松本「フォロワーって言葉はまだ禁句やねん。よっぽどショックが大きかったんやな」
渡部「そっかぁ。あいちー、あいちー、大丈夫?」
★市村の目を覗き込むように手を振る石
市村「…ハッ、あれ、何の話だっけ?」
渡部「うん、配信見てファンになったよって話」
市村「そうだったそうだった、ありがとう〜」
渡部「頑張ってるよね。見てて飽きないし、人気が出るのわかる」
村川「目が離せんかったけんね、豚玉海鮮デラックス焼いて食べてるとこ」
全員「そこ?!」
村川「え?なんで?美味しそうやったやん!」
宮﨑「そうやけどさ〜」
★松本が「まあまあ」と両手で抑える仕草をする
松本「ウチとしては嬉しい感想やで。腕をふるった甲斐かいがあったわ」
村川「あ〜、話してたらお腹減ってきた」
宮﨑「私も〜。ソースの匂いが食欲をそそるよね」
村川「うんうん。早く食べようよ!」
松本「ほな、準備しよか。大勢おおぜいおるから、相席で、」
石「は〜い!あなたの心にアイセキ希望!石安伊です!」
★松本のセリフに被せて石が声と手を上げながら前に出てくる
松本「ちゃうねんちゃうねん、キャッチフレーズ振ったんちゃうねん」
★カウンターから出て来て、石の上手側に並び立つ松本
石「え?違うんですか?」
★横に立つ松本に向かって首をかしげる石
松本「まぎらわしかったな。みんなに向かって言うたんやで」
★松本が後ろを振り向く
松本「みんな〜、相席で、」
石「は〜い!あなたの心にアイセキ希望!石安伊です!」
松本「ちゃうってちゃうって、振ったんちゃうって」
石「ごめんなさい、つい条件反射で出ちゃうんです」
松本「そらしゃあないな。次は気ぃつけてや。ほな、みんな相席で、」
石「は〜い!あなたの心にアイセキ希望!石安伊です!」
松本「何回言うねん!もうええわ」
★松本がツッコみ、二人が深々とお辞儀をして下がる。石がみんなに混ざり、松本がカウンターに戻る
松本「ほな、みんな詰めて座ってや〜」
全員「は〜い」
松本「みんな自分で焼くって事、わかってるな?」
宮﨑「えっ、自分で焼くの?」
松本「そやで。人数が多い時はそうするってこの前決めてん」
武田「へ〜、もんじゃ焼きみたいで楽しいかも〜」
松本「そやろ。待ち時間もなくて早く食べられるしな」
宮﨑「あ、それはいいかもね」
松本「ほな、みんな何にするか決めたぁ?」
下野「うん、紙に書いといたよ。ハイこれ」
★下野がメモを松本に手渡す
松本「よっしゃ。あいちー、ボウルの準備手伝ってや」
市村「え、私が?」
松本「ほかに誰がおるん。ずっとここにおって仕事見てたからわかるやろ」
市村「いやいや、なんでそうなるのよ。誰のせいでここに居るハメになったと思ってるのよっ」
松本「しゃーないやんか、起こった事ゴチャゴチャ言うても。ここで真面目に働く姿見せたら、フォロワーも戻ってくるかもしれへんで」
★市村がピタッと止まる
松本「しもた、止まってもたー!」
美久「あ〜あ、ナニやってんだよっ。人のコト言えねーな!」
松本「あいちー!あいちー!あ、戻った戻った」
★市村が、はて今なにが?って感じで左右を見る
松本「取り扱い注意やなー。しゃあない、自分でやるわ」
★松本がボウルをカウンターの上に並べる。みんなが取り囲み、ボウルを手に席へ。カウンター長辺の右に下野、中に本村、右テーブルの右手前の美久の奥に渕上、左手前の伊桜莉の奥に神志那。中テーブルの右手前に山下、右奥に栗原、左手前に山内、左奥に村川。左テーブルの右手前に武田、右奥に宮﨑、左手前に渡部、左奥に石が座り、それぞれ焼き始める。
美久「おば、おねえ、店長ぉー、追加でチーズちょうだーい!」
★呼び名を言い直しながら声を掛ける美久
松本「あいよ〜、追加のチーズやな〜」
★松本が粉チーズの筒を手に取り、フンッフンッと気合を入れると、ボン・ジョヴィの「IT’S MY LIFE」(なかやまきんに君が粉チーズのギャグの時に使う曲)が流れ始める
It's My Life  ~なかやまきんに君 Ver~
松本「行くで〜」
★松本が男性のボディビルのポーズを取りながら美久に近づいて行き、美久の前で観客席に背を向け、最後の「イッツ・マイ・ラ〜イフ!」のところで、振り向きざまに粉チーズの筒をちゃんと鉄板の上でひっくり返す
松本「やーっ!」
美久「ナニやってんだよっ。素直に持ってこいよ」
松本「ええやんか。ショーアップやショーアップ。この方が楽しいやろ」
美久「そりゃまぁ、そうだけどさ」
伊桜莉「根っからのエンターテイナーですね」
松本「そやろ。人生楽しんだもん勝ちやで」
★松本が男性がやるフロントダブルバイセップスのポーズでカウンターへ戻る。入口からスーツにノーネクタイのチンピラ社員の秋吉が入ってくる
秋吉「邪魔するでー」
松本「邪魔するんやったら帰ってやー」
秋吉「おう、すまんすまん」
きびすを返して帰る秋吉、それを捕まえるジャージにスカジャンのヤンキー女社長松岡
松岡「だから、前も言ったよね、何やってんの?」
秋吉「いや、やっぱお約束ッスから」
松岡「なにがお約束よ。いいから、入りなさいよ」
秋吉「へーい」
★松岡に押されるように秋吉が、続いて松岡が入る
秋吉「あ、社長、テーブル席が一杯ッス」
松岡「ホントね」
松本「カウンターなら空いてるで」
松岡「う〜ん、カウンター席嫌いなのよねぇ」
秋吉「あっ、社長、田中さんのお嬢ちゃんたちが居るッスよ」
松岡「え?あら、家に居ないと思ったらここに居たのねぇ」
美久「ゲッ!見つかったか」
★苦虫を噛む美久。テーブル席のみんながザワザワしだす
栗原「ねえ、あの怖そうな人たち、何なん?」
山下「さあ、わからんけど、関わらん方が良さそうじゃない?」
山内「確かにね」
村川「でもさ、なんかピッタリって思わん?」
栗原「え?」
村川「あの二人以外に、あのコワモテの役は似合わんくない?」
山内「確かに」
栗原「誰もキャスティングに文句無いかもぉ」
山下「うん。優花ちゃんはハマり役だし」
村川「なっちゃんのさ、ほら、みーおんを壁に押し付けてビビらせた例のヤツは有名だしさ」
全員「ウンウン」
うなずくみんな
松岡「ちょっとそこ!変なところで盛り上がらないでよ!」
★床をダンッと踏む松岡。渕上が美久と伊桜莉の方へ身を乗り出す
渕上「ね、あの二人、誰なの?」
伊桜莉「あ、私の母がお金を借りてる、松岡商事って会社の社長さんと社員さんです」
渕上「え?お金を借りてる会社?じゃあ借金の取り立てに来たの?」
栗原「借金の取り立てぇ!?あの格好でぇ?」
山下「この令和の時代に?」
山内「ダサ〜イ」
宮﨑「ヤバ〜イ」
武田「スゴ〜イ」
渡部「こわ~い」
村川「尻でか〜い」
石「来ないでよぉ〜」
★ザワつくみんな
松岡「ちょっと!途中で関係ない悪口言ったよね!」
全員「言ってない言ってない」
松岡「後で覚悟しときなさいよ!」
秋吉「まあまあ社長、落ち着くッス」
★松岡を押し下げるようになだめる秋吉
秋吉「お嬢ちゃんたち、お母さんは帰って来てるッスか?」
伊桜莉「いいえ」
秋吉「そうッスか〜」
★ガッカリする秋吉を押しのけて松岡が前に出る
松岡「それじゃあ、アンタたちに会うためにここに来るかもしれないから、待たせてもらうわねっ」
★カウンターの席に座ろうとする松岡。渕上が立ち上がって二人の方を向く
渕上「ちょっと待って下さい」
松岡「ん、またぁ?何?誰よアンタ」
★うんざり気味な松岡
渕上「私は弁護士です」
松&秋「えっ、弁護士…」
★みんなが「お〜」と感嘆かんたんの声をらす中たじろぐ二人
渕上「貸金業法では、取立ては8時から21時までと決まっています。それ以外の時間は訪問も電話も禁止されてる事は、ご存知ですよね?」
秋吉「もちろんッス」
渕上「あなた方は取立てる目的でここで待つつもりなんですよね?だとすれば、21時の時点でここにいると違反になりますよね。あと30分程で21時になりますが、どうされますか?今からお好み焼きを注文して食べ始めると、時間を過ぎると思いますが?」
★その言葉を聞いた秋吉が、腕を組んで考える
秋吉「んー、社長、帰りましょう。ここはそうした方が無難ッス」
松岡「んもうー、なんでこう邪魔が入るのよ。フンッ、わかったわよ、今日のところは帰ってあげるわよっ」
★息巻いて出ていく松岡、あとに続く秋吉。店内に渕上を囲む輪が出来て、拍手が起こる
武田「スゴ〜イ渕上さん、弁護士だったんだぁ」
栗原「格好良かったよー」
伊桜莉「助かりました。ありがとうございます」
渕上「どういたしまして。これからも何かあったら、相談してね」
美久「はーい!」
伊桜莉「心強いです〜」
★伊桜莉が胸を撫で下ろす
松本「ほな、気分直しに歌でも歌おか。誰か歌いたい人おる〜?」
栗原「は〜い、歌いま〜す」
神志那「私も〜」
山下「私も〜」
栗原「じゃあこの3人で歌いま〜す」
神志那「大人の色気、見せるからね。あ、見せちゃるけんね」
★三人が前に出て、マイクのように持ったスマホで歌詞を見ながら歌う

M04 「他人の関係」一青窈
他人の関係/一青窈

  栗原  神志那  山下

★三人が歌い終わり、松本がみんなに声を掛ける
松本「他に歌いたい人おる〜?」
山内「はい、歌いたいで〜す」
宮﨑「私も〜」
渕上「私も歌いたいな」
山内「じゃあ、あの曲行っちゃう?」
宮﨑&渕上「いいよ〜」
山内「それじゃあ私たちも、大人の色気を見せちゃいま〜す」
★三人が同じようにスマホ片手に歌う

M05 「愛の水中花」松坂慶子
(松坂慶子) 愛の水中花

  渕上  山内  宮﨑

★三人が歌い終わったところで、下野がセンターに出てくる
下野「それじゃあ一区切りついた所で、次のシーン行ってみよー!」
★暗転、全員集合のオープニングのBGMが流れる
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★ナレ【そして1週間後】
★明転。右テーブルに美久と伊桜莉が向かい合って座ってお好み焼きを食べる仕草をしていて、カウンターの中に作務衣姿さむえすがたの松本とカウンターの長辺の左に猫耳の市村がいる
松本「あいちーのお好み焼き配信、好評みたいやなぁ」
市村「うん。ASMR好きの人にも好評でさ。あと、教室の生徒さんが広めてくれたおかげで、ようやく、ようやくフォロワーが増え始めたよぉ〜」
★市村の言葉に、松本がゴクリと息をみ、恐る恐るのぞき込むようにたずねる
松本「増えたんか、フォロワー」
★市村がじっとのぞき込み返す
市村「うん。増えた」
松本「そらよかったわ〜」
★松本がホッと胸をで下ろす
松本「にしてもあいちー、収入は減ってんやろ。家賃は払えそうなんか?」
市村「今のところは」
松本「そうか。もしなんやったら、ウチんとこで一緒に住まへんか?ベッドはあいちーに譲ってもええで」
市村「やだよ。たこ焼き器が使いっぱなしで放り出されてる部屋なんか」
松本「な、なんで知ってるんや!?」
市村「有名じゃん。みんな知ってるよ。いもまとにもまとめられてるし」
松本「そうなんか〜。難儀な世の中になったもんやな…」
★左右に首を振る松本
美久「店長ぉー、チーズ追加ぁ!」
松本「あいよ〜。チーズ追加やなぁ」
★松本が粉チーズの筒を手に取りフンッフンッと気合を入れ、ボン・ジョヴィの「IT’S MY LIFE」が流れ始める
松本「行くで〜」
★松本がボディビルのポーズを取りながら美久に近づいて行き、美久の前で観客席に背を向けるが、フィニッシュ直前の「ダンダンッ…」のところで美久がチーズの筒を奪い取り曲が止まる
美久「ハイありがと」
松本「な、なにすんねん!ウチの見せ場やで!」
美久「一回やれば十分やろ。ご苦労さん」
松本「なんやねんな〜。信じられへんわぁ〜」
★松本が首を振りながらカウンターへ戻る。同時に入口から生徒たちが入って来る
全員「こんばんわ~」
松本「はいよ〜、いらっしゃーい。みんな相、…」
★相席と言いかけて踏みとどまる松本。ピクンと手を上げかける石
松本「危ないトコやったわ。…みんな、テーブルに詰めて座ってや〜」
全員「はーい」
松本「注文教えてんか」
下野「はい、これね」
★下野がメモを松本に渡そうとした時、本村が割って入る
本村「ちょっと待った〜!」
松本「な、なんや?」
本村「ここでゲームをしま〜す!」
松本「ああ、あれか!」
本村「はい、もうみんなおわかりですね?注文メニューをどっちが多く覚えられるか、罰ゲームを掛けてゲームでーす!」
下野「はい、提案!はい、提案!」
本村「なに?」
下野「毎回覚えるのが私と日向じゃ面白くないけん、覚える二人をじゃんけんで決めん?」
本村「え〜」
下野「いいやんいいやん、その方が見てる方も面白いって」
松本「そやそや。誰が覚える二人になるか、ドキドキもあっておもろいで」
本村「ん〜、わかった、そうしようか。じゃあみんなー、まずは二人組になってじゃんけんして、負けた方は前に出てきて〜」
★教室の12人と田中姉妹、松本と市村の2人がじゃんけんをして、負けた8人が前に出てくる
本村「じゃあ4人ずつに二つに分かれて、負け残った1人づつが覚える役ね」
★覚える2人が決まり、第一話と同様のゲームをする(本村が覚える役になったら下野が仕切る役になる)
本村「じゃあ負けた方は罰ゲームね。真ん中に出て来て〜」
★負けた方がセンターに出て来て、横に本村がハリセンを持って立つ
本村「じゃあ行くよ!ミュージック、スタート!」
★チェッカーズ「ワンナイトジゴロ」が流れ始め、歌い出しの「キル・ユー」で曲が止まり、同時に本村がハリセンでパーンッ!とお尻をひっぱたく
とんねるず チェッカーズ ワンナイトジゴロ Kill you スリッパ まとめ 追補版
★リアクションを見て盛り上がった後、本村がセンターに出て観客席を向く
本村「は〜い、今回のゲームの結果はこうなりました〜。次回をお楽しみに〜」
松本「また次回があるんや」
下野「じゃあみんな、ボウルを受け取って席について〜。劇に戻るよ〜」
全員「は〜い」
★全員が席についた後、松岡と秋吉が入口に現れる
秋吉「こんばんわー」
松岡「邪魔するわよ」
松本「いらっしゃーい」
★普段通りの声で挨拶を返す松本。松岡がカウンターの短辺の奥の席に、秋吉がその手前に並んで座る
松岡「なんか盛り上がってたじゃな〜い、声が聞こえてたわよ。楽しそうでいいわねえ〜」
松本「そうですか?記憶力ゲームやってたんやけど、やってみますか?」
松岡「いい、いい、別にやりたいわけじゃないから」
松本「そうですかー」
★がっかりする松本。松岡が体をひねってテーブルの方に目をやる
松岡「みんなそろってゲームやって楽しんで、ノンキなもんやねぇ。借りた金も返さんと」
松本「あれ、取立てですかぁ?」
★ちょっと強気に返す松本。慌てて首を振る松岡
松岡「違う違う、そうじゃないって。これはあくまでひとごとやけんね。親が借金残して姿を消してウチらに迷惑を掛けてるのに、子供がよく平気な顔して暮らせるもんやね〜と思って。少しは何とかしようって気にならんとかいな」
★松岡がカウンターの椅子に座ったまま振り返って美久たちを見る。美久の横にいた渕上がチラリとカウンターを見る
渕上「では、私も参考までに言わせていただきます。親の借金は、あくまでも債務者さいむしゃである親が返済義務を負います。親族と言う事だけでは、子供は返済義務を負いません」
★へえ〜っと声を上げるみんな
渕上「登録している貸金業者が債務者以外さいむしゃいがいの第三者に返済を請求することは、」
★渕上が立ち上がってビシッとカウンターの二人を指差す
渕上「それ、違法です!」
★渕上が田中姉妹の前に出て向き直り、観客席に背を向けて左右の手を二人の肩に掛ける
渕上「親名義の借金で、美久さんたちお二人がその保証人・連帯保証人になっていないのなら、お二人に返済する義務はありません。もし業者から督促とくそくされた場合は、貸金業法違反であることを業者に指摘し、警察に被害届を出すべきです。その際は、金融庁の貸金業相談・紛争解決センターに苦情を申し入れておく事を忘れずにね」
★二人の肩をポンと叩いて渕上が席に戻る。松岡が美久たちの方を向いたままカウンターを背にもたれかかる
松岡「べ、別に、私はアンタたちに催促さいそくするつもりなんかないわよ。ただ心配してるのよ。このまま返してくれんかったら、担保にしてるこのビルを競売けいばいに掛けてお金を回収するしかないけんね。そうなったらそっちが困るんじゃない?」
美久「えっ、競売けいばい!?ウソッ!?」
★たじろぐ美久を渕上が制する
渕上「そうはならないと思いますよ」
松岡「な、なんでよ」
渕上「私も気になって、登記簿とうきぼを確認してみたんです。このビルには、先に銀行の建設資金融資の抵当権ていとうけんが設定されています。今このビルを競売に掛けても、おそらくその落札価格は銀行の融資残額を上回りません。売却金は抵当権ていとうけんの順位が先の銀行に全額取られてしまい、あなた方には回ってこないでしょう。つまり、競売けいばいに掛けて困るのは、あなた方なのでは?」
★渕上の言葉に、松岡と秋吉が苦虫を噛みつぶした表情になる
秋吉「わかってるッス。だから俺たちも必死なんスよ。あの金を返してもらわないと、俺たちの会社だって持たないんッスよ」
松岡「秋吉!おしゃべりはそのくらいにしときな」
秋吉「へ、へいー」
★秋吉を手で制した松岡が、席を立ってフンッと入口へ向き直る
松岡「今日はもう帰るわ。行くよ」
秋吉「へーい」
★さっさと出て行く松岡の後に続く秋吉
栗原「渕上さんナイス〜」
神志那「頼りになるぅ〜」
★みんなが渕上をはやし立てる中、美久が首をかしげながら渕上に聞く
美久「よく分からんかったけど、お母さんの借金は、私たちは返さんでいいって事やろ?」
渕上「そうよ」
美久「ヨッシャー!」
渕上「話が難しかったかしら?もっと分かりやすく説明しましょうか?」
伊桜莉「いいんですいいんです。わかってなくても喜んでますから」
★美久が何度も両手でガッツポーズをしている。伊桜莉が渕上の方に顔を寄せる
伊桜莉「あの、ホントに私たち、借金を返さなくていいんでしょうか?ちょっと心苦しい気もするんですけど」
渕上「うん。伊桜莉ちゃんの気持ちはわかるけど、二人が返したくても返せないのよね」
伊桜莉「え?返せない?」
渕上「そう。債務者に代わってお金を支払う、第三者弁済だいさんしゃべんさいが認められる第三者の範囲には、親族は含まれないの。あなたたちがお母さんの代わりにお金を返しても、もしお母さんがそれを認めなかったら、返済は無効になって、元に戻さないといけなくなるの。だからお母さんと連絡がつかない今の状態では、あの人たちはあなたからの返済は受け取らないでしょうね」
伊桜莉「そうなんですか〜」
★へ〜えと頷く伊桜莉。生徒のみんなもふ〜んと感心する中、渕上が伊桜莉に向き直る
渕上「ところで伊桜莉ちゃん、お母さんは他に借金はしてないの?消費者金融とか」
伊桜莉「はい、してないみたいです。あの会社以外は催促さいそくもないし」
渕上「そうなのね。じゃあお母さんは、あの会社を狙い撃ちしたのかもしれないわね」
伊桜莉「狙い撃ち?」
渕上「そう。お母さんがお金を借りたのが、よくある消費者金融だったら、借りられる金額は年収の3分の1までって規制があるんだけど、自宅以外の不動産を担保に融資業者からお金を借りる場合はそういう規制がないから、大きな金額を借りられてしまうのよ」
伊桜莉「じゃあ母は、その事をわかって、わざわざあの会社を選んで借りたって事ですか?」
渕上「たぶんね。その上で、返済の目処が立たなくなったら、自分が姿を消せば娘たちには返済を迫れない、ビルを取られる事も無いだろう、って自分から家を出ていったのかも知れないわ。それをわかってやっていたのなら、なかなかの策士さくしね」
美久「ふ〜ん、やるじゃん」
伊桜莉「そういう事だけは知恵が働くんだから」
渕上「困ったものね」
★みんながウンウンと頷く中、カウンターにいた本村が下野に顔を寄せる
本村「ねえ、こういう話ってさぁ、私たちがするにしては難し過ぎん?歌笑劇っていうけんさ、もっとさぁ、吉本新喜劇っぽいワチャワチャした話かなぁって思ってたんやけど」
下野「うん、私もそう思ってたけど、ほら、この劇場のスポンサーに銀行さんがなってくれてるやん、やけんその期待に応えなきゃって、作家が頑張っちゃったんだってさ」
松本「え?何の話してるん?」
下野&本村「アハ、こっちの話こっちの話」
★手を振ってごまかす下野と本村。その時、渕上が手をパンと叩いて話を締める
渕上「とにかく、お金を借りるなら、ちゃんと勉強して慎重にしないとダメって事よ」
神志那「そうそう」
下野「やっぱり、ローンのことなら、」
全員「西日本シティ銀行に相談を!」
★みんなが客席を向いてニッコリとポーズ
本村「決まったね!」
★笑顔を見せるみんな
松本「ほな、アイツらも居なくなって落ち着いたトコやし、気分直しに歌でも歌おか。誰か歌いたい人おる〜?」
美久「じゃあ、私たちが歌いま〜す」
★美久と伊桜莉が前に出てスマホ片手に歌う

M06 「愛のしるし」PUFFY
「PLAYLIST~PUFFY 25th Anniversary~」Disc1 【Pop Goes With PUFFY】~MV「愛のしるし」

    伊桜莉  美久

★二人が歌い終わると、松本がみんなに声を掛ける
松本「他に歌いたい人〜」
村川「ハイ!」
松本「他に歌いたい人〜」
村川「ハイハイハイ!」
松本「他におらんか〜?」
村川「ちょっと!ハイって言ってるやん!」
松本「なんや、ホンマに歌うんかいな。ちゃんと盛り上げられるんか?」
村川「盛り上げるって。まぁ見ててよ」
松本「ほな、見せてもらおうか。バラエティ班の新型の、実力とやらを!」
村川「ビビアン、行きま〜す!」
★村川が前に出て歌う

M07 「どうにもとまらない」IKKO
IKKOさん in ワイキキ ~ どうにもとまらない

      村川

 IKKOに負けない振り付けで盛り上げる

★村川が歌い終わったところで、下野がセンターに出てくる
下野「それじゃあ一区切りついた所で、次のシーン行ってみよー!」
★暗転、全員集合のオープニングのBGMが流れる
19810919

★ナレ「そして、さらに1週間後」
★明転。カウンターに作務衣姿さむえすがたの松本と猫耳の市村と下野と本村がいて、テーブルに美久と伊桜莉と生徒たちが座っていて、お好み焼きを食べる仕草をしている
美久「店長ぉー、チーズの追加ちょうだーい!」
★振り返って声を掛ける美久
松本「あいよ〜、チーズの追加やな、チョット待ってや」
★松本がメモを取り出す
松本「ほなここで、配信を見た人たちからメールが届いてるんでいくつか紹介させてもらいます」
美久「え?メール!?なにそれ!?」
★驚く美久。松本がのどを整える
松本「え〜、まず福岡県30代女性から頂きました。日向ちゃんのチーズのくだり、オチ直前で止めるなんて可哀想かわいそうです。続いて大阪府50代男性から、イッツ・マイ・ライフをいいトコで止めるなんて殺生せっしょうやで、最後まで聞かんと気持ち悪いわ。さらに東京都20代女性、日向ちゃんに最後のオチまでちゃんとやらせてあげてください。他にもたくさんメールが来てます。いぃですかぁ、ウチのチーズのくだりを途中で止めたらな、このたくさんの人たちの声を無視する事になるんやで。わかってるな?」
美久「わかったわかったって。もう止めないから持ってきてよ」
松本「わかったんならええねん。ほな行くで」
★松本が粉チーズの筒を手に取り、フンッフンッと気合を入れると、ボン・ジョヴィの「IT’S MY LIFE」が流れ始める
松本「行くで〜」
★松本が男性のボディビルのポーズを取りながら美久に近づいて行き、美久の前でこちらに背を向け、最後の「イッツ・マイ・ラ〜イフ!」のところで、振り向きざまに粉チーズの筒をちゃんと鉄板の上でひっくり返す
松本「やーっ!」
★周りからオーッと拍手が起こる
伊桜莉「やっぱり、最後まで聞くとスッキリしますね」
松本「そやろ。お約束はちゃんと最後までやるもんやで」
★松本が男性がやるフロントダブルバイセップスのポーズでカウンターへ戻る。そこへ秋吉と松岡が入って来る
秋吉「こんばんわー」
松岡「お邪魔するわよぉ〜」
★陽気に声を上げる松岡がカウンターの短辺の奥の席に腰掛ける。秋吉もその手前に座る
松本「いらっしゃい。なんや、嬉しそうやな」
松岡「わかる〜?」
松本「いい事でもあったんか?」
松岡「あったの」
松本「なにがあったんや?」
松岡「わかったのよ」
松本「なにが?」
松岡「あの母親の居場所が」
全員「えーっ?!」
★立ち上がるみんな
伊桜莉「どこにいたの?!」
松岡「ある場所に、男と一緒に居たわ」
美久「やっぱそうか!あんにゃろ〜」
こぶしを握りしめる美久
松本「よう見つけたな〜」
秋吉「あ、見つけたのは俺たちじゃないッス」
松本「え?ほな誰が見つけてん」
秋吉「ほら、トヨナガってノンフィクションライターが居たじゃないッスか。アイツが見つけてくれたッスよ」
市村「えっ?阿紀ちゃんが?なんで阿紀ちゃんが?」
★カウンターの角に居た市村が斜め前の秋吉の方へ身を乗り出し、秋吉もそれに応える
秋吉「アイツ、俺たちのところへ取材させてくれってやって来たんスよ。だから言ってやったッス。俺たちだけを一方的に取材するんじゃなくて、借金して逃げてるあの母親の方も取材しないと、報道の公平性が保てないんじゃないッスかって。そしたら納得して、あの母親の行方ゆくえを探し出してくれたッスよ」
★人差し指を立ててみせる秋吉
松本「へ〜、なかなかやるやんか」
松岡「思った以上に優秀で、アタシたちとしても助かったわ」
渕上「それで、借金は返済してもらえたんですか?」
★渕上が問いかけると、松岡がパッと振り向く
松岡「それが、ここからがビックリな話なんやけどさ、母親に会って金返せって言ったら、なんて言ったと思う?」
全員「?」
松岡「今お金が無いけん、娘たちに払うように言ってよ、だって」
全員「ええっ!」
松岡「まったく、なんて母親なのよ。ちゃんとアンタたちに任せるって委任状も書いてくれたわよ。秋吉、見せてやって」
★秋吉が紙を差し出す。それに目を通す渕上
渕上「これ、本物かしら?」
松岡「本物よ。あの母親がそういう事をしそうかどうか、胸に手を当てて考えてみなさいよ」
全員「あ〜、…」
★みんなが天を仰ぐ
全員「しそうだわ」
★うなだれるみんな。遠くからくしゃみの音
秋吉「これで債務者の意思確認が出来たんで、お嬢ちゃんたちが代わりに支払う弁済べんさいが有効になるッス」
渕上「そうね」
★腕を組んでうなずいた渕上が美久たちを見る
渕上「二人が払ってもいいって事になったわ」
美久「え〜」
あごを上げ体をひねって渋る美久
伊桜莉「ハァ…」
★ため息をつく伊桜莉
松岡「まったく、こっちだって悠長ゆうちょうに待ってられんけん、アンタたちから取立てるけどさ、娘に自分の借金を押し付けるとか母親として信じれんわ。一回こっぴどく説教して、あの母親の根性を叩き直してやりたいわ〜」
★拳を握りしめる松岡
美久「ホントそうだよ。いいよいいよ、一発ガツンとヤッちゃってよ」
★パンチを振りおろす美久
松岡「えっ、いいと?ホントにヤッちゃうよ?」
美久「うん。一発と言わず二発でも三発でも、根性が直るまでヤッてやってよ!」
伊桜莉「その方が私たちも助かります」
★二人の言葉に松岡がニヤリとする
松岡「よ〜し言ったね。フフフ、あの浮ついた母親、改心するまで逃しやしないよっ!」
★勢いよく席を立つ松岡
松岡「善は急げだね。後は任せたよ秋吉。回収の目処めどがついたら連絡よこしな」
★捨てゼリフを残して出て行く松岡
秋吉「了解ッス。行ってらっしゃいっ」
★秋吉が頭を下げて見送った後、戻って来てカウンターを背にして高い丸イスに腰掛ける
秋吉「お嬢ちゃんたち、ちょっといいッスか」
★秋吉が呼び寄せ、美久と伊桜莉が顔を見合わせながら秋吉の前に出てくる
秋吉「あ〜、お嬢ちゃんたちを問いただすのはしのびないッスが、金を返すあては何かあるッスか?」
美久「ないんだよね〜」
★首を振る美久
秋吉「そうッスか〜」
★うなだれる秋吉。渕上が出て来て美久たちの後ろから声を掛ける
渕上「ねえ、おうちに返済に回せそうな預貯金や貴金属は無いの?」
★伊桜莉が振り返って答える
伊桜莉「無いんです。両親が離婚する時の話し合いで、このビルと家が私たち、それ以外の財産は父って決めて、全部持って行きました。だから私たちにはこのビルと、このビルからの家賃収入以外、なんにも手立てがありません」
美久「バイトするったって限りがあるし。学校があるからさ」
★首をすくめる美久。松本が身を乗り出す
松本「ホンマか?ちゃんと真面目に学校行っとるんか?ただ働きたくないから言い訳しとるんとちゃうか?」
美久「はい偏見へんけん〜。ちゃんと行ってるもんね〜。バイトだってもうしてま〜す」
★美久が顔の横で両手をピエロのように振って茶化し、あっかんべーで返す松本。
伊桜莉「私も少しだけど働いて生活費に充ててます。ビルの家賃収入はビルと家を建てた時のローン返済にあらかた消えちゃうので」
渕上「そうなのね〜。それじゃあ返済に回すのは厳しそうね」
秋吉「それじゃ困るッスよ。何か手立てはないッスか」
渕上「ねえ、お父さんには頼めないのかしら?」
美久「ダメだね。もう断られたし」
★首を振る美久。渕上が伊桜莉を見る
渕上「そうなの?」
伊桜莉「はい。この前この話をしたら父が、『もうこっちにも新しい家庭がある。伊桜莉の学費とかって話なら別だが、なんでアイツの借金の尻拭いなんてしなきゃいけないんだ』って言ってました」
渕上「そうなのね〜。他の親族も厳しそう?」
伊桜莉「はい。母方の家族も、母がそれで身を潰すなら自業自得だって言ってて…」
渕上「そうなの〜。う〜ん、八方塞はっぽうふさがりね」
秋吉「それじゃ困るッスよ。まとまった金が入らないと俺たちの会社が持たないッス。何とかならないっすか、家を売るとか」
美久「えっ!家をっ?!」
★戸惑う美久
渕上「ん〜、それは解決にならないんじゃない?」
秋吉「どうしてッスか」
渕上「すぐには売れないと思うし、売れたとしてもほら、銀行のローン残額の返済が優先だから、お金が残るとは限らないわ」
秋吉「そうッスか〜。どうしたらいいッスかねぇ〜」
渕上「どうしたらいいかしらねぇ〜」
伊桜莉「どうしたらいいんでしょうか〜」
★考え込む三人
松本「まあまあ、考えてもわからへん時は、無理に考えんとわかるまで待ったらええねん。秋吉の兄ちゃんも、取り敢えずなんか食べて精力つけて、これからに備えへんか?」
秋吉「そうッスね。じゃあ、豚めんたいチーズ玉ひとつ!」
松本「あいよ〜。そや、食べ終わった人、誰か気分転換に歌えへんか?」
武田「はい!じゃあ私歌いま〜す」
渡部「私も歌いたいで〜す」
松本「ほな、1曲づつ歌ってもらおか。ええな?」
武田&渡部「は〜い」
松本「じゃあ先に手上げたモカちゃんからや」
武田「は〜い。では皆さんに、私の元気お届けしま〜す」
★武田がスマホ片手に前に出て歌う

M07 「夏のお嬢さん」榊原郁恵
榊原郁恵 夏のお嬢さん

     武田

★歌い終わった武田とハイタッチをして渡部が前に出てくる
渡部「はい、それじゃあ、私らしく歌いま〜す」

M08 「白いパラソル」松田聖子
松田聖子 / 白いパラソル.

     渡部

★歌い終わったところで、下野がセンターに出てくる
下野「それじゃあ一区切りついた所で、次のシーン行ってみよー!」
★暗転、全員集合のオープニングのBGMが流れる
19810919

★ナレ「そして、さらにさらに1週間後。…って、今日私まだナレーションしかしてないけどさ、まさかこのまま出番が無いとかないよね?せっかく制服着込んでアップまでして準備万端で控えてるんやけんさ、これじゃなんのためにここにおるかわからんやん。私の母だってさぁ、今度の劇は毎回出番があるよって話したら、『なんの役すると?』「お巡りさんよ」『お巡りさんねイイ役もらったね』「うんでもセリフが覚えられるか心配っちゃんね」『理子なら大丈夫よ私の子やけん』「ありがとう〜」『絶対見に行くけんね』「無理せんでいいよ」『なん言いようとね無理しとらんよ行けん時はDMMで毎回見るけんね』ってめちゃめちゃ楽しみにしとっちゃけん、このまま出番が無いとか、ちょっとひどくな〜、」
★マイクがブツッと切れる。しばらく間を置いて明転。カウンターに作務衣姿さむえすがたの松本と猫耳の市村と下野と本村がいて、テーブルに美久と伊桜莉と生徒たちが座っていて、お好み焼きを食べる仕草をしている。そこへ秋吉が一人で入って来る
秋吉「こんばんわー」
松本「いらっしゃい。あれ、一人なん?」
秋吉「そうッス」
松本「社長はどうしたん?」
秋吉「ああ、あれからずっと、お嬢ちゃんの母親の根性を叩き直すのに夢中ッスよ」
伊桜莉「あれからずっと?!」
秋吉「そうッス」
美久「まったく、渋てぇヤツだな。早く母親らしくなって欲しいもんだぜ」
★首を振る美久。松本がカウンターから身を乗り出す
松本「無理ちゃうか、この子にしてこの親ありって言うからな」
美久「どういう意味だよっ」
松本「そういう意味や」
美久「ぁあ〜っ?」
★立ち上がってにらみ合う美久と松本
秋吉「やめるッス。ここで二人でいがみ合ったってなんも解決しないッスよ」
伊桜莉「そうよ。ほら美久ちゃん、座って座って」
★伊桜莉の言葉に渋々座る美久
秋吉「それで、どうッスか。なにか返済の目処めどは立ちそうッスか」
美久「ぜ〜んぜん」
★秋吉に背を向けたまま首を振る美久
秋吉「そうッスか〜。こっちもそうゆっくりもしてられないんスよね。参ったなぁ…」
★宙を見上げながら頭をく秋吉。渕上が申し訳無さそうに下から見上げる
渕上「言いにくいんだけど、資金繰りが上手く行かないなら、破産や民事再生も視野に入れた方がいいんじゃないかしら?」
秋吉「それはダメっす!」
渕上「でも、気持ちはわかるけど、それが現実的じゃない?」
秋吉「いや、会社を潰す事だけは出来ないッス!」
渕上「どうして?何か、あの会社にこだわる理由でもあるの?」
★渕上の問い掛けに、秋吉がフーッと一つ深呼吸して答える
秋吉「あの会社は、もともと社長の旦那さんがおこした会社なんッス。旦那さんが亡くなって、今の社長が会社を引き継いだんスよ。社長にとって、あの会社は大事な会社なんッス」
渕上「そうなのね。…でも、経営が上手く行かなくなったのは、今の社長さんに代わってからじゃないの?だったら、」
秋吉「違うッス!」
★渕上の言葉を遮って、秋吉が続ける
秋吉「今の社長になっても経営は順調だったッス。それが狂い出したのは、アニキが別の会社を作って社員たちが引き抜かれちまって、社長と俺の二人だけになってからッス」
渕上「えっ、二人だけで会社やってるの?」
秋吉「そうッス。今までの事業が上手く行かなくなって、不動産融資に手を出した途端に、こんな事になっちまったッスよ。俺がもっと上手く立ち回っていれば避けられたかもしれなかったって、反省の毎日ッス」
★うなだれる秋吉。渕上が歩み寄って声を掛ける
渕上「あなた、どうしてそこまで、あの会社のために頑張ってるの?」
★渕上の問い掛けに、秋吉が顔を上げて答える
秋吉「社長が、亡くなった旦那さんがのこしてくれた会社を守ろうと必死だからッスよ。そんな社長を裏切る事は出来ないッス」
渕上「ふ〜ん、あなたがそこまで義理を通す程、魅力がある人なの?あの社長さん」
秋吉「あるッスよ。社長はああ見えて、カワイイ娘を持つ優しい母親なんッスよ」
全員「ええっ?」
★驚きの声が上がる中、秋吉がみんなを見回す
秋吉「社長には小学生の一人娘がいるッスけど、娘のためなら自分のお金も時間も大好物のホルモンも娘に捧げてしまうような人なんッスよ。娘が笑顔でいてくれるならそれでいいって」
美久「へ〜、そうは見えねえけどな」
★秋吉の方へ向き直り、テーブルを背にもたれ掛かる美久
秋吉「社長の、母親として娘を思う気持ちはホンモノっす。ほら、前にここで俺たちにナイフを突き立てて来たお嬢ちゃんがいたッスよね?あのあと社長が言ってたッスよ。あたしがあの子の母親だったら心配でたまらない、あんな無茶な事しないように、子を思う母親の気持ちをあの子に叩き込んであげなきゃ、って」
伊桜莉「じゃあひょっとして、お巡りさんがなっぴさんにお説教をしに来たのって、あなたたちの仕業?」
秋吉「そうッス。社長がお巡りさんに頼み込んで、配信を見ながらあのお嬢ちゃんがトイレに入るのを見てここに駆け込んでもらって、そのあと俺たちが来て、わざと俺たちにお嬢ちゃんが楯突たてつくように仕組んだッスよ」
美久「そうだったんだ!道理どうりで話が上手すぎるって思ったんだよなっ」
★一人うなずく美久。秋吉がみんなに向かって続ける
秋吉「社長は、自分を犠牲にしてでも娘を思う、母親としての気持ちを何より優先してるッスよ。俺はそんな社長のために、何があっても社長の力になろうと決めてるッス」
★力強くうなずく秋吉
美久「なんだ、二人とも、いいヤツだったんだな」
★みんなもそうだねとうなず
伊桜莉「そうね。勝手に悪者扱いしてたみたいね」
渕上「確かに。元はと言えば、お二人のお母さんが借金を返さずに逃げたりしなければ、こんな事にはならなかったハズですからね」
秋吉「そうッスよ。借りたものは返さないと」
全員「そうよね」
★ウンウンうなずくみんな
美久「あれ、なんか急にウチらに逆風になってない?」
伊桜莉「仕方ないよ。全ては母が悪いんだから」
渕上「そうよそうよ」
★突き放すような渕上
美久「そんなぁ〜。ねえ、何とか助けてよ〜」
渕上「そうねぇ。何か返済できる手立てがあるといいんだけど…」
伊桜莉「う〜ん…」
★考え込むみんなを見て、本村が下野に話しかける
本村「ねえ由貴ちゃん、あの話、してもいいかな?」
下野「えっ、あの話!?ん〜、でも〜」
★口ごもって困った顔をする下野
伊桜莉「なんですか?あの話って」
本村「あ、うん。美久ちゃんにとって、覚悟がいるんだけどぉ、いいお金になる話なの♡」
美久「お金になる話!いいじゃん!」
伊桜莉「でも覚悟がいるんでしょ?どんな覚悟か聞かないと」
美久「いいじゃんどんな覚悟だって!お金になるならさ!」
★明るく脳天気に返す美久
下野「美久ちゃん、そんな簡単な事じゃないのよ…」
★渋る下野
伊桜莉「教えて下さい。どういう覚悟がいるんですか?」
★詰め寄る伊桜莉。本村がうなずいて答える
本村「うん、アタシの東京の親友が業界で働いてるんだけど、動画配信のネットクリックでスピンオフドラマやる事になってね、主人公の親友役で急に欠員が出たから代役を探してるらしくて、もし美久ちゃんにその気があるなら、どうかなって話」
市村「スゴイじゃん!ネットクリックのドラマって、主役だったら1話1千万円もらえるって噂だよね!親友役でもかなりもらえるんじゃない?!」
美久「いいじゃん!やるやる!」
伊桜莉「でも演技経験が無いじゃない」
美久「やる気がありゃいいっしょ!」
伊桜莉「やる気だけじゃ出来ないでしょ!ですよねえ?」
★本村に問いかける伊桜莉
本村「大丈〜夫。演技経験より、グラビア映えするスタイルが重要な役だから」
美久「ヨッシャ!スタイルなら任せてよ」
下野「でもね、それだけで出来るような事じゃないのよ」
美久「え?」
下野「そのスピンオフの元になったドラマ、半裸監督なの」
全員「半裸監督ぅぅぅ!?」
★顔を見合わせるみんな
美久「ゲ〜ッ、絶対ハダカになるじゃ〜ん!」
下野「そうなのよ」
本村「でもさぁ、いいお金にはなるし、これを逃せば二度と無い、いい話だと思うんだよね〜」
あごに人差し指を当てながら話す本村
美久「そりゃそうだけど、よりによってハダカって…。やっぱ無いよね〜」
★途端にやる気を無くす美久。みんなも美久に同情する中、うつむいて考え込んでいた伊桜莉がパッと顔を上げる
伊桜莉「じゃあ、私が出ます!」
全員「ええっ!?」
伊桜莉「姉が出ないのなら、私が出ます!」
★力強く言い切る伊桜莉
本村「いいの?!」
伊桜莉「ハイッ。私も18歳だから、もう親の承諾しょうだく無しで契約も出来ます!」
下野「でも、いいの?ハダカだよ?」
伊桜莉「仕方ありませんっ。頑張ります!」
★ギュッと拳を握りしめる伊桜莉。みんながザワつく中、栗原がハイッと手を上げる
栗原「だったら私がやるよ!伊桜莉ちゃんより私の方が大人の色気があるもん!」
山下「それなら私だって!紗英には負けない色気、見せてあげるわ!」
松本「ウチだって負けへんで!浪花のボンバーガールの底力見せたるわ!」
山内「だったら私がやるよ!私のナイスバディで鼻血を出したメンバーがいるんだから!」
武田「私が出ます!みんなからグラビアを熱望されてたんですからね!」
村川「私がやる!私だって需要があるっちゃけんねっ!」
★村川が言った途端、ピタッと静まり返り、換気扇のゴーッというSE音が響く
村川「ちょっとちょっと!なんで静まり返るとっ!ねえっ!」
美久「冗談はトミヨシのバニーガールだけで十分って事だよ」
★遠くでくしゃみの音がする
渕上「ハイッ!伊桜莉さんが出るぐらいなら私が出ます。私だって負けてませんからね!」
宮﨑「ハイッ!私だって負けないわよ!」
渡部「ハイッ!私も負けません!」
石「ハイッ!私だって!」
★次々と手をあげる中、下野がこっそりと小さく手を上げる。みんながハイッハイッと競い合う中、美久がズバッと手を上げる
美久「だったら私が出るわよっ!」
全員「どーぞどーぞどーぞ」
★手を揃えて譲るみんな
美久「ちょ、ちょっとちょっと、なんなん?みんなしてさぁ〜」
★集まっていたみんなが解散して席に着く
本村「いや〜、美久ちゃんがやる気になってくれて良かった。これで解決やね」
全員「良かった良かった」
美久「良くない良くない。なんか納得いかんっちゃけど」
★腕組みをする美久。松本が両手をカウンターについて声を掛ける
松本「なんでや、良かったやんか。これを足掛かりに、世界的名女優へまっしぐらやで」
美久「世界的名女優?!」
松本「せやで。ネットクリックは世界中で見られるんやからな。上手くやれば世界中の映画関係者から引っ張りだこや。ハリウッド女優になって、セレブデビューも夢やないで」
美久「ハリウッド女優でセレブデビュー!いいね!」
★途端に目を輝かせる美久
松本「せやで!頑張ってや!輝く未来が待ってるで!」
美久「ヨッシャ!いっちょやったるわ!」
★ガッツポーズの美久の横で、したり顔でうなずく松本
伊桜莉「姉もやる気になってるし、これで母の借金は返せそうですね」
渕上「良かった。これで私も気をまなくて済みそう」
秋吉「あと問題は、いつ入金されるかッス。俺たちも長くは待てないんで」
本村「そっか〜。出演料が入るのって、数ヶ月は先になりそうやもんね」
秋吉「それじゃ〜待てないッスよ」
★困り顔で首を振る秋吉
下野「だったら、とりあえず私が立て替えるわ。私が美久ちゃんとマネージメント契約して、出演料が私の所に入るようにしとけば安心して貯金を崩せるけんね」
秋吉「そうッスか!良かった。それなら解決ッス」
本村「じゃあ出演の話進めるね」
★本村がスマホを取り出し手際よく文字を打つ
本村「速っ、もう返信が来た。了解だってよ」
秋吉「確定ッスね。社長に知らせるッス」
★秋吉がスマホを取り出し手際よく文字を打つ
秋吉「速っ、もう返事が来たッス。直接話したいからそこで待ってな、だそうッス」
下野「ここに来るの?」
★入口に松岡が現れる
松岡「来たわよ」
全員「速っ!もう来た!」
松岡「なん驚きようと?」
本村「だって、返事してから現れるまでが早すぎるやん」
松岡「別の話があってちょうどここへ向かってたんよ。それより、返済の目処がついたってホント?」
下野「ええ。お金が入る目処がついたから、とりあえず私が立て替えるって事で」
松岡「そう〜。ハァ〜、ずいぶん手こずらせてくれたわね」
秋吉「それもようやく解決ッスよ」
松岡「まったく、手間賃てまちん取りたいぐらいだわ」
★眉をしかめ首を振りながら、カウンター短辺の奥の席に腰掛ける松岡
本村「で、別の話でこっちへ向かってたって、どういう話なん?」
★本村の問いに、松岡が思い出したように答える
松岡「あ、そうそう、アンタたちの教室って、次の市民まつりのステージに出るんよね?」
本村「うん、社会人と学生とチビッコの3ステージに出るけど?」
松岡「そのチビッコのステージに、アタシの娘を出して欲しいんよ」
全員「ええっ!?」
松岡「ほら、この子。笑顔がカワイイでしょ。小学5年生、10才よ」
★松岡がスマホを差し出す。本村と下野が画面を覗き込む。
下野「あ、ホントだカワイイ」
本村「へ〜、娘はカワイイんだね」
松岡「娘は、って何よ、娘は、って」
★ピリつく松岡
下野「でも、ステージに出るなら一緒に練習しないとダメよ」
松岡「わかってるわよ。だから、あなたの教室に娘を入れてよ」
全員「ええーっ!?」
★驚いて顔を見合わせるみんな
本村「どうする?」
★聞かれた下野が本村をテーブル席のみんなの方へ連れて行き、みんなも集まって来る
下野「どうするって、あの社長の娘だよ?」
渕上「何か魂胆こんたんがあるんじゃないかしら」
栗原「でも、あの人ホントはイイ人だったじゃん」
村川「でもまだ信じない方がいいんじゃない?」
栗原「そうかなぁ」
山下「なんかこっちの動きを探りに来てる、とか?」
下野「それはあるかもね」
渕上「娘を利用して教室の内情を調べようとしてるとか?」
神志那「10才の子にそんな事出来る?」
村川「小5だからって舐めない方がいいよ、年齢ごまかしてアイドルになったツワモノがいるんだから」
全員「確かに〜」
うなずいて考え込むみんな
本村「どうする?断っとく?」
下野「そうねぇ〜」
美久「それが無難じゃね?なんかあった時、絶対ガタガタ言って来るって」
村川「そうそう」
★否定的な雰囲気のところへ、松本が来て割り込む
松本「その子捕まえとったら、なんかあった時、こっちの人質に出来るで」
★それだけを言い残してカウンターへ戻る松本
全員「なるほど〜」
下野「そういう考え方もあるかぁ」
本村「いいんじゃない、結局イイ人だったって事になるかもよ、あの二人がそうやったんやけん」
下野「そうよねぇ」
本村「受けちゃおうか」
下野「そうね」
★下野と本村が松岡と秋吉のいるカウンターに戻る
下野「あなたの娘さん、教室に受け入れますよ」
松岡「そう〜、良かったわ。ありがとう」
本村「毎週日曜日に子供たちの教室やってるけん、日曜日に連れて来てね」
松岡「わかったわ」
本村「あ、月謝払える?お金がなくて会社大変なんでしょ?」
松岡「だ、大丈夫よ心配しなくてもちゃんと払うわよ任せといてよ」
★目を合わせず答える松岡
松本「ホンマか?無理してるようにしか見えへんで」
松岡「うるさいわね、なんとかするわよ」
★顔を背ける松岡に、秋吉が向き直る
秋吉「社長、俺の給料、削ってもらっていいッスよ」
松岡「えっ、でもそれじゃ、アンタが困るんじゃないの?」
秋吉「いいッスいいッス。それで社長の娘さんがステージに出る夢が叶って、社長が喜んでくれるならお安い御用ッス」
松岡「嬉しいこと言ってくれるわね」
★微笑む松岡
美久「お前ホント、いいヤツだな!」
松本「誰かさんとは大違いやな」
美久「なんてぇ?!」
★立ち上がって睨みつける美久。松本がパッと目を逸らしてスマホを手に取る
松本「あっ、もうこんな時間や。最後に一曲歌って終わりにするで〜」
★みんなに向かって声を上げる松本。それを聞いた松岡が慌てて身を乗り出す
松岡「えっ、ちょっと待ってよ、アタシまだなにも食べてないわよ」
松本「ゴメンやけど、今日はもう終わりや」
松岡「なんでよ」
松本「今日は帰ってゆっくりナイトスクープ見るねん」
★松岡がコケる
松岡「なにそれっ。そんなの今日じゃなくてもいいじゃん」
松本「い〜や、毎週今日見るって決めてんねん」
松岡「えぇー。ねぇ、そんな事言わないでさぁ、持ち帰りでもいいから焼いてよ」
松本「アカンねん。もうタネも無いし、一から作る気も無いわ」
秋吉「だったら俺が一から作るッスよ」
松本「アカン。そんな時間あらへん」
松岡「いいじゃないのよ」
松本「アカンアカン」
松岡「ねぇいいじゃん」
松本「アカンアカンアカン」
松岡「ねえ〜、」
★渋る松岡に、松本が大きく息を吸って駄々っ子のように身震いし怒鳴り声を上げる
松本「アカンッ言うてんねんからっ、とっとと諦めたらどないやねーんっ!」
★朝日放送「あっちこっち丁稚でっち」の赤フン男登場のBGMが流れ、入口から坂口が平泳ぎの手振りと坂田師匠の足運びで入ってきて、上手から下手まで往復する途中で立ち止まる
坂口「今日の出番、これだけっ…」
★坂口が『ホワイ?』のポーズで首を振った後カウンターへ行き、松岡と秋吉の腰を左右の手で押すようにして一緒に外へ連れ出していく
宮﨑「なに?今の」
武田「お巡りさんだったよね?」
★ざわつく生徒たち。田中姉妹とカウンターの面々は見慣れた様子で見送っている
松本「ええねんええねん、気にせんどってや」
★松本がカウンターから出てテーブル席のみんなに声を掛ける
松本「ほな、最後の曲やけど、この前歌ってみていい曲やったから、『明日があるさ』でええ?」
全員「いいよ〜」
松本「よっしゃ。じゃあ、今日のセンターは舞ちゃん、やってくれへんか?」
渕上「えっ、私が?」
松本「そやで。今日一番の活躍やったからな」
渕上「ん〜、じゃあ、じーなと二人でやってもいいかしら」
松本「ええで。ほな、二人でセンターに立って歌詞確認しながら待っときや」
★渕上と神志那が自分のスマホを手にセンターの位置に行き、松本がカウンターに戻る
松本「ほな行くで〜、これが最後の曲や!」
★なぜか吉本新喜劇のテーマ「Somebody Stole My Gal」(ホンワカパッパ〜、ってやつ)が流れる
吉本新喜劇のテーマ
全員「ちがーうっ!」
松本「あれ?また間違うた」
市村「ちょっと、ワザとやってるでしょ!」
松本「ん?そんな事ないで。ないない」
市村「ホントかなぁ?」
松本「信じる者は救われるで」
市村「その言い方が信じられないのよっ」
松本「まあええやんか。ほな、今度こそちゃんと行くで〜。これがホンマの今日最後の曲や!」

M07 「明日があるさ」Re:Japan
Re Japan 明日があるさ 吉本

★(スマホをマイクのように持ち歌詞を見ながら歌う)

1番:渕上、神志那
2番:石、渡部    以下、順番に前へ出て来て渕上の左右に並びながら歌う
3番:武田、宮﨑
4番:山内、村川
5番:山下、栗原
6番:美久、伊桜莉
7番:下野
8番:本村
9番:市村      
10番:松本
11番:秋吉、坂口、松岡
12番:全員

最後の並び 肩を組んで左右に揺れながら歌う
11、9、7、5、3、1、2、4、6、8、10

★曲終わりに本村が前に出る
本村「今日はおわり〜!」

★暗転。お好み焼き屋セット撤収

★アンコール口上、明転

MC  劇の感想など

EN ザ・ドリフターズ「いい湯だな(ビバノン・ロック)」の1番の歌詞に「ドリフのビバノン音頭」と「さよならするのはつらいけど」の歌詞を足して修正した替え歌(8時だよ全員集合のエンディングの雰囲気)
全員集合エンディング
ドリフエンディング

(後列) 市村 松本 伊桜莉 美久 本村 下野 松岡 坂口 秋吉
(前列)石 渡部 山下 栗原 神志那 渕上 山内 村川 武田 宮﨑

★歌詞  (合いの手とセリフ:村川)

ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(アビバノンノン)
ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(ア〜ビバノンノン)

いい湯だな(アハハン) いい湯だな(アハハン)
湯気が天井から ポタリと背中に
つめてぇな(アハハン) つめてぇな(アハハン)
ここは百道の ど真ん中の湯

ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(アビバノンノン)
ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(ア〜ビバノンノン)

笑ったね(アハハン) 歌ったね(アハハン)
あなたの笑顔が 目に浮かぶ
カワイイな(アハハン) ステキだな(アハハン)
みんなで楽しく 笑いましょ

ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(アビバノンノン)
ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(ア〜ビバノンノン)

笑ったね(アハハン) 歌ったね(アハハン) 
笑う門には 幸せが来る
いいもんだ(アハハン) いいもんだ(アハハン) 
みんなで楽しく 過ごしましょ

ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(アビバノンノン)
ババンバ バンバンバン(アビバビバビバ)
ババンバ バンバンバン(ア〜ビバノンノン)

いいトコだ(アハハン) いいトコだ(アハハン) 
さよならするのは つらいけど
時間だよ(アハハン) 仕方がない(アハハン) 
また会う日まで ごきげんよう

ババンバ バンバンバン(宿題やったか?)
ババンバ バンバンバン(お風呂入れよ)
ババンバ バンバンバン(歯磨けよ)
ババンバ バンバンバン(また今度〜!)


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