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42番 契りきなかたみに袖を        清原元輔

今橋愛記

契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波越さじとは    清原元輔きよはらのもとすけ〔所載歌集『後拾遺集』恋四(770)〕

歌意
約束したことだったよ。互いに涙を濡らした袖をしぼっては、末の松山を波が越さないように二人の心が変わらないということを。

『原色小倉百人一首』(文英堂)

心変わりをした女性に、相手の男性に代わって詠んだ歌との事。作者、清原 元輔は あの清少納言の父である。
男のひとの未練の歌。
一音目から「契りきな」とするどく置いている。

契りきな  

この初句切れは、読者に強い印象を残すだろう。

約束しましたよね。
ああ、約束したことだった。

どうでもいい事になり果てていたのならば 想いあっていた頃の「約束」を持ちだすことはしないだろう。

約束をしたのに、あなたは。

あなたは。の「。」以降。
心がひかれ、とらわれて思いきれない。
男のひとの思いも感じられる。

「末の松山波越さじとは」は、
2人の間に心変わりのない事のたとえ。

2011年の東日本大地震。
あの恐ろしい津波も、末の松山を越すことはなかった。
  
翻案は初句切れを生かした。
「末の松山波越さじとは」に匹敵しうる関係性から、兄妹というイメージが浮かんだ。


いうたよね
一生このままでいようって
しぬるまで
あにといもうとみたいに  今橋 愛
 


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