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84番 ながらへばまたこのごろや    藤原清輔朝臣

2018年6月30日/今橋愛記

ながらへばまたこのごろやしのばれむしとみし世ぞ今は恋しき     
         藤原清輔朝臣ふじわらのきよすけあそん
 〔所載歌集『新古今集』雑下(1843)〕 

歌意 
この先生きながらえるならば、つらいと感じているこのごろもまた、懐かしく思い出されることだろうか。つらいと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく思われることだから。

『原色小倉百人一首』(文英堂)

現代の人の歌を読んだりしていても、これは何を言っているんだろう。むずかしい。わからない。
となってしまうものもあるけれど、
この歌はわからないところがない。
むずかしい掛詞や何かの知識がないと読めないところはひとつもなくって、
ただ時の河を行ったり来たりしながら ものを思う「わたし」のこころだけがある。

作者、藤原清輔朝臣ふじわらのきよすけあそん
父と長く不和であったと伝えられ、あまり明るい青春ではなかった、とある。 
だからこの歌ができたんやね。
「あまり明るい青春ではなかった」からこそ歌える歌があると思う。


生きてたらいいことがいっぱいあるって
むかしのわたしにいうてやりたい          今橋 愛
 

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