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26番 小倉山峰のもみぢ葉     貞信公

今橋愛記

小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ 
貞信公ていしんこう
 
〔所載歌集『拾遺集』雑秋(1128)〕

歌意 小倉山の峰の紅葉よ、もしおまえに人間と同じ心があるのならば、もう一度の行幸みゆきがあるまで、散らずに待っていてほしい。

『原色小倉百人一首』(文英堂)

宇田上皇が大堰川に行幸(ルビみゆき・お出ましの意味)した際、紅葉があんまり美しいことに高揚して、息子(醍醐天皇)にも見せてやりたいと言われた。それを貞信公が歌にしたのが26番である。
 
前にも出てきたが紅葉を人のように(擬人化)して呼びかけている。
なあ小倉山の紅葉、おまえに心があるんやったら、次の行幸までどうか散らんと そのままで おってくれへんか。
 
どれだけきれいやったんやろう。と各々が脳内に広げるその色とりどりぶり。想像をかきたてる盛りの紅葉の美しさと「心あらば」と音をはみ出して呼びかけていくところ。
 
歌の中では「みゆき」とひらがなで表記されていることで、現代の言語感覚では女のひとの名前かと思う「みゆき」。ここで歌の意味がわからなくても橙色の丸いものが浮かぶ。冒頭の5,7「小倉山峰のもみぢ葉」の残像だろうか。
 
翻案は「スーホの白い馬」(赤羽末吉/大塚勇三/福音館書店)の劇の練習をしていた子どものことを思いだしてつくった。
 

 しろうまー!
 しなないでおくれよー! 
 しーろーうーまー!
 心をこめてさけびつづける   今橋 愛


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