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地道な努力ができるならば、カルトにはハマらない

新興宗教や高額セミナーにハマる人の特徴

私自身が、そう高額ではないものの、安くもない自己啓発セミナーや、カウンセリングや心理学といいつつスピリチュアル要素の強い講座を受講していたこともあり、身近に自己啓発、スピリチュアルにハマっている人がいる。
お恥ずかしいことに、両親も生前に自営業が傾いたときに、新興宗教にハマったことがある。
最近はそういう人たちと疎遠になり、いま連絡をとっている人はひとりもいないが、彼らには共通する特徴があるように思う。

・人生がいまいちうまくいっていないのだが、それは自分の責任ではないと思っている(とことん他責)
・自分が手に入れられなかったものを悪く言う(酸っぱい葡萄論者)
・地道にこつこつ努力することを拒む、他人のアドバイスを受け入れない
・他人に寛容でなく、上から目線になりがち

上記のような人間がうまくいくはずがない。会社にいづらくなる、人間関係はうまくいかなくなる、お金もない、だんだん精神的にも追い詰められてくる。その結果、耳障りのいいことを言う新興宗教、高額セミナー、スピリチュアルなどにハマるのであろう。
地道な努力もせずに人生が好転するような錯覚を抱くのであろう。


会社員を「毎日同じことの繰り返し」と言った彼女

大学時代のサークルの後輩に、のりこ(仮名)という女の子がいた。他大学の子なのだが、二浪して、あまりレベルの高くない大学に入学した子だった。他の一年生に比べて大人びたしっかりした考えを持っており、頭が良くないとは思えないので、どうしてその学歴なのか最初は少々不思議だった。話を聞くうちに、実力から乖離した大学に執着した結果だなという感想に至った。

彼女は、就活ではTV局や映画会社などの大手マスコミを目指していたが、ことごとく落ちたようだった。TV番組や映画の制作に携わりたいのなら、規模の小さな制作会社なども目指せばいいと思うのだが、彼女は割と早い段階で
「マスコミ向きじゃないみたいです」
と謎の発言をして、方向転換をしたようだった。
次に目指したのは、航空業界や旅行業界である。
ある日、いきなりメールが来て
「あんずさん、J〇Lの面接ってどんなスーツで行けばいいのですか?」
と聞かれた。
残念ながら、私は航空業界の会社は受けておらず、まったくわからない。就職情報のWEBサイトや雑誌、就職課などでちゃんと調べずに聞きやすい先輩に聞くのも怠慢だが、どうしてあんなにマスコミ、マスコミ言ってたのに航空業界!?というのも疑問であった。おそらくかっこいいからであろう。
ときは氷河期末期、二浪して中堅私大に行った女子が、ただ「かっこいい会社に行きたい」なんて理由で就活したところで、うまくいくはずがない。
結局就職が決まらないまま大学を卒業した。

就活の過程で、彼女に
「メーカーや保険の営業や、事務系の仕事は目指さないのか?」
と聞いたことがある。当時、私はメーカーの営業職であった。また、就活のときに同級生から、大手生保会社の営業職(生保レディ)は大量採用しているから受かりやすいという話を聞いていた。
すると彼女は
「うーん、同じことを繰り返すのってつまらないんです」
と言った。
言わせてもらうが、マスコミでは毎日新しい刺激的な仕事ができ、メーカー営業は毎日つまらないことを繰り返しているというのはとんだ勘違いである。
マスコミだって仕事の手順があるから、同じ作業を繰り返すことはあるだろうし、特に若いうちは細かい雑用もあるだろう。
メーカーの営業職も、過去に経験したのと「まったく同じ課題」が上がってくることはそうそうない。もちろん過去の経験が生きることもあるが、そのときの状況に応じて対応しなければならない。
それに、のりこは航空業界も目指してたよね?航空業界こそ、安全に、定時に飛行機を飛ばすために、同じ手順を毎日しっかり繰り返さなくてはならないんじゃないか?
そう思ったが、コメントは避けておいた。

のりこのこの意見はまったくの思い込みだと思うが、会社員として働いた経験の少ない若い人には、案外こういう考えの人もいるようである。
5~6年前に自己啓発セミナーに通っていたときに、入社数ヵ月で会社を辞めたという20代半ばの女の子に出会ったが、彼女も
「同じことばかりを繰り返す会社員が嫌だった」
と言っていた。
以前、以下の記事に書いたように、一部の若者はやっぱり「楽しそうで、なんとなくかっこいい仕事」が好きで、営業や事務の仕事には魅力を見いだせないのであろう。その考えのままだと、お金が稼げないまま年をとる恐れがあるので、注意が必要だと思う。

高額セミナー勧誘員になっていた彼女

のりこが大学卒業後はしばらく連絡をとっていなかったが、アラサーになってからまたメールをやりとりするようになった。ある日、彼女からお誘いがあった。
「いま働いているセミナー会社の社長の講演会があるのですが、チケットがあるので行きませんか?あんずさんは絶対ハマると思います!」
と言われ、暇だったし、のりことも久しぶりに会いたいので行くことにした。
講演自体はヤバい話ではなかったが、特にハマるものでもなかった。
のりこはその会社の社員として働き、会社が持っているマンションで同僚と共同生活をしており、何よりイキイキしていたので、
「とりあえず元気で、仕事が決まって住むところもあってよかったな」
と思って別れた。

その後、のりこからセミナー、講演会、ランチ会などのお誘いが頻繁に来ることになる。あまりにも頻繁に勧誘されたので、私もその会社について調べてみた。
のりこが勧誘してくるセミナーの受講料は数千円程度だが、やがて数十万円のセミナーに勧誘されるらしい。ある地方では、街でひとりでいる若者を
「ゲームしましょう!」
と誘って自分たちのアジトにつれていき、セミナーに勧誘されたという被害が相次いだせいで、自治体のSNSに「要注意団体」として団体名まで載っていた。
さらに代理店という制度があり、代理店になれば自分でもセミナーを開催できるが、それになるには数百万円を上納する必要がある。
のりこの話を聞いていると、のりこもこの代理店になっているらしかった。のりこはセミナー会社で数年働いた後に派遣社員として働いていたが、それほどお金があるとは思えない。それで数百万円も払ってしまったなら、お金にも余裕はないだろう。必死に他人を勧誘してマージンで稼ぎたいのはよくわかる。そうしないと元が取れないのだ。

私が「行かない」と言っているのにいつまでも勧誘してくるので、ある日電話をかけて
「あなたには会いたいけど、セミナーには本当に興味がないんだ」
と言ったところ、彼女は口数少なく「わかりました」と言ってくれたが、その後、連絡がとれなくなってしまった。
Facebookを見ると、いつもセミナー仲間と一緒に楽しそうに行動しているので、元気なのだとは思う。私は彼女の一番大切なもの(=セミナー)を否定してしまったので、もう会いたくないのだろう。


カルトにひっかからない生き方

ここでは、新興宗教だけでなく、高額セミナー、スピリチュアルなどもひとまとめにして「カルト」と呼びたいが、カルトに引っかからないためには、以下が大事ではないかと思う。

・自分の能力、環境に合った目標を設定し、その目標を達成するべく努力する。自分の器以上の「すごい人」になろうとしない。
・地道かつ適切な努力を積み重ねる。
・他人は自分の人生のモブではないので、都合良く何かをしてもらおうとは考えない。相手の好意には感謝する。
・自分の人生で起こることは、過去の選択の結果だと受け入れ、他人や環境のせいにしない。
・避けられる不幸は避け(病気をしないように健康的な生活をするなど)それでも避けられない不幸には冷静かつ適切に対処する。

のりこの例をあげて申し訳ないが、彼女は実力と乖離した大学、世間的にかっこいい華やかな仕事などを追い求めていた。傍目に見れば戦略ミスでしかないのだが、本人は
「自分の思い通りにならないことばかり」
と感じて、その結果、自分を受け入れてくれるセミナーにハマり、セミナーの教えこそが世の中の真実だと思ったのであろう。
自己啓発セミナーで出会った人たちも、人生ががらりと変わることを期待しているような人ばかりだった。セミナーを受講して行動や考えを変えるならば人生ががらりと変わることもあるかもしれないが、講師の
「世の中で言われていることは嘘っぱちだ!」
「会社を辞めて好きなことを仕事にした人の勝ちだ!」
「うちのセミナーに月々〇円投資すれば、いずれ月50万円の権利収入が入る」

という言葉を信じている人たちなので、現実的な努力をするつもりはないであろう。
それで人生が好転するはずがない。

幸せは、己を知り、地道かつ適切な努力を重ね、他人に感謝する延長にあるのだと思う。


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