人生の転機はお芋掘りの回 ~30歳になるまでに解きたい呪い ~

人生の転機はお芋掘り



 産まれてから今日までで一番古い記憶は3歳か4歳のときに保育所に入園して自己紹介をしたときの記憶がもっとも古い。
 保育所は嫌いだった。ずっと意地悪を言ってくる男の子がいて本当にそいつが嫌だった。しかもそいつは小学生になっても私をいじめてくるから本当に今でも本名も顔も覚えているくらい嫌いだ。
 でも、いつも一つ年上の兄が私を見つけては声をかけてくれて一緒にいてくれたり遊んでくれていたから保育所で過ごす時間の全てが嫌だったわけではない。


 たくさん嫌なことがあったけど楽しいこともあった。行事で言えば運動会や歌の発表会は楽しかったけど、帰りに貰うお菓子と牛乳は本当にいらないくらい嫌いだった。(牛乳が大嫌いなんです、私)

 そんな楽しいと嫌いの連鎖が日々巻き起こる保育所にはいつも母が迎えに来てくれる。姉が迎えに来てくれることもあったけどあんまり記憶になくて、母が夜遅くに迎えに来てくれる帰り道が真っ暗で怖いのに2人きりになれるから結構好きだった。


 色々と理由があって保育所があまり好きでない私でも大好きな行事があって、それがお芋掘りと餅つき大会だった。

 お餅はいいぞ、お餅は。もちもちで。(めちゃくちゃ大好物なんです)
 ぺったんぺったんと杵と臼でつかれた餅は子供の手によって丸められて、海苔で巻いたり、きなこをつけたり、醤油で食べたり。
 私は砂糖醤油が大好きで今でも砂糖醤油で食べるのが一番好きです。
 正直に言えば、今知らぬ子どもが丸めた餅を食べれるかと聞かれたら絶対に無理なので、餅つき大会に参加して他人の子どもが丸めた餅を食べていた親たちは本当に凄いと思う。 
 無邪気にもお友だちのお母さんに自分で丸めた餅を渡した私はかなり罪深い、反省している。

 そんな無邪気な罪深さもうまれないお芋掘りは本当に平和だった。
 服や靴が泥まみれになること以外、お芋掘りで起こる害は何も無いのだ。
 ひたすら芋を掘れば良いだけだから。

 5歳のお芋掘りはとにかくたくさん掘って掘って、たくさんビニール袋に詰めたから重くて持つのが大変でそれでも楽しかった。
 あなたのお芋が一番大きいね、なんてありきたりな大人の機嫌取りの言葉に浮かれていた。

 家に帰ってから父や小学校から帰ってきていた兄たちに今日が凄く楽しくてどれだけ嬉しくて何度もサツマイモを見せてはしゃぎながらお芋の報告をした私は、本当に生まれてきて一番楽しくて幸せな日だと感じていた。

 ホットプレートに並ぶ輪切りのサツマイモ。
 バターの香り、ホットプレートから聞こえてくるジューッと焼ける音やバターの跳ねる音、塩をかける父の大きな手。


 今でも忘れられない、鮮明に覚えている。
 あの日、父が母を殴ったのだ。


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