嘉宮碧海

デザイナー・アートディレクター。現役の表現者の視点から眺めた、表現の自由、メディア論、…

嘉宮碧海

デザイナー・アートディレクター。現役の表現者の視点から眺めた、表現の自由、メディア論、フェミニズムが主なテーマ。

最近の記事

「テレビ離れ」とは言うけれど(9—完結—)

現在のテレビのデザイン  先に述べたとおり、現在のテレビは、映りが綺麗で大型画面のものの開発が進んでいます。そして今や、据え置き型ばかりでなく壁掛け型のデザインのものも現れています。いずれにせよ、こうしたタイプのデザインのテレビは、ファミリー等複数で楽しむニーズには応えられるようになっています。大きなテレビ画面を中心に、リビングにファミリーや仲間が集う、それは一つの幸せの像でもあります。  でも裏を返せば、なんと厚かましいことか。こうしたテレビがある場合、室内のインテリアの

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    • 「テレビ離れ」とは言うけれど(8)

      この発想はなかった!「ハンスプリー」のテレビ  キリンや象、ライオンもいました。カエルもいた。なんと可愛いことよ。テレビのデザインでこれをやるとは…!機能美ではない。けれども、とにかく惹きつけられる。日本のメーカーでこの種のテレビのデザインを流通まで漕ぎ付けられるとしたら、それはキャラクター商品や玩具のメーカーでしょう。それ以外で、家電を扱うこうした仕事ができるメーカーは、日本にはないだろうと予想がつきました。当時のテレビ、というか、日本の家電デザインで「よし」とされている

      • 「テレビ離れ」とは言うけれど(7)

        内閣府「消費動向調査」のカラーテレビの普及率の流れ  1990年代から現在に至るまで、テレビと情報端末デバイスの境界が次第に溶解に向かったことは、これまで述べてきたとおりです。こうした時代における、据置・壁掛けの型の「テレビ」を保有する人々の動向を内閣府の「消費動向調査」から眺めてみたいと思います。  内閣府の「消費動向調査」とは、「今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識などを把握し、景気の動向を判断するための基礎資料とすることなどを目的として、昭和32(195

        • 「テレビ離れ」とは言うけれど(6)

          「スマートテレビ」の登場  これまで見てきた、「ケータイ」やパソコンといった情報端末デバイスが「テレビ機能」を搭載するというのは、情報端末デバイスがテレビ機能を取り入れて発生するそれらの境界の溶解の形態ですが、その逆、「テレビジョン受像機」が情報端末デバイスの機能を取り入れて発生する境界の溶解の形態もあります。情報端末デバイスが担って来たインターネット接続機能を搭載する「スマートテレビ」もその一形態です。「スマートテレビ」は、インターネット接続機能搭載という点においてそれら

        「テレビ離れ」とは言うけれど(9—完結—)

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          「テレビ離れ」とは言うけれど(5)

          ポケベルが鳴らない「ケータイ」の時代に  ドラマ「ポケベルが鳴らなくて」は1993年に放送されたテレビドラマですが、国武万里による主題歌も50万枚のヒット(※24)、サビのフレーズを覚えている読者の方もおられるかもしれませんね。ともあれ、当時の「ポケベル」の勢いがうかがえます。  当初、機能といえば音によるお知らせのみだったポケベルは、1990年代には、「0840(おはよう)」などと数字によるメッセージを送ることができるようになっていました(※25)。個人が携帯できるメッセ

          「テレビ離れ」とは言うけれど(5)

          「テレビ離れ」とは言うけれど(4)

          ブロードバンド時代における「動き」「音」  本稿の冒頭に例示した、2007年8月16日「asahi.com」の「テレビ利用者3割超減 その理由は?」という記事に話を戻しましょう。  「調査担当者は「ユーチューブなどを使って映像を検索して見るというオンデンマンド化が進んでいる。通信事業者による映像の配信や、SNSなどの動画コミュニティーが増えたりすれば、テレビ離れはもっと進む可能性がある」と話している。 」「ブロードバンドの普及で、テレビ離れが加速する――。」などという論調(

          「テレビ離れ」とは言うけれど(4)

          「テレビ離れ」とは言うけれど(3)

          個人向けWebサイト黎明期  「日本のように専用回線が高価だと,なかなか自分のサーバを公開するというわけにはいかない。しかしさまざまなプロバイダーが個人用のディスク・スペースを解放したために,ネット上の個人ホームページに人気が集まっている」  これは、「WIRED(日本版)」1995年12月号の「Internetの個人ホームページ」と題する記事の冒頭の一文です(※9)。この記事では、「個人ホームページ開設数ベスト10」をまとめており、1位のリムネットが(数にして)1666、

          「テレビ離れ」とは言うけれど(3)

          「テレビ離れ」とは言うけれど(2)

          そもそも「テレビを見る」とは?  前回例示した資料や記事では、「テレビ離れ」と言っても、各々がそれぞれ「テレビ離れ」をイメージしているという面があり、そこから分析を行おうという状況がありました。こうした状況からは、「テレビ離れ」の定義の曖昧さがうかがえます。  そもそも「テレビを見る」とは何なのでしょうか? 30年前、15年前、そして現在における、「テレビを見る」ことの像には差異があるのではないでしょうか?  かつては、「テレビを見る」といったら「テレビジョン受像機でテレビ

          「テレビ離れ」とは言うけれど(2)

          「テレビ離れ」とは言うけれど(1)

          「テレビ離れ」という言葉はいつからある?  「テレビ離れ」という言葉はいつからあるのでしょうか。実はあまりはっきりしていません。「テレビ離れ」でGoogle検索すると、過去から現在にわたる複数の報道記事や資料にヒットします。その程度には浸透している言葉であるとは言えるでしょう。  「テレビ離れ」は2007年には既に少なからず普及していた言葉のようで、同年8月16日「asahi.com」の「テレビ利用者3割超減 その理由は?」という記事に登場しています(※1)。インプレスが発

          「テレビ離れ」とは言うけれど(1)

          河合幹雄先生の訃報に接し 先生を忘れない

           河合幹雄先生の訃報に接し、心から哀悼の意を表します。  今日のことを書き留めておこうと思います。河合先生は、私には特別な方でしたから。限りなく、リスペクトする方でした。  もともと、河合隼雄先生のご著書は拝読したことがありました。心理学の第一人者ですから、書店を徘徊する趣味があれば一度は手にすることになります。河合雅雄先生のご著書も拝読したことがあります。サル学の本でしたが、根本的に「文化とは何か」を考える上でとても示唆に富んだ言及もされていました。そして、サル学への興味

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          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(8/完結)

          複製技術時代は継続する  ヴァルター・ベンヤミンが「複製技術時代の芸術」を著したのは今から100年近く前のこと。「複製技術時代」は現在も継続中であり、当時にこの視点を持ち得たベンヤミンは、やはり「鋭い」としかいいようがありません。この論考の最終稿は1939年とのことで(※21)、翌年のピレネー山脈での死が惜しまれます。  大阪府の「塩漬け」保管作品に対する「デジタルで見られるなら」発言への異議として、これまで、デジタル技術が持つ問題を考察してきました。作品現物のデジタルによ

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          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(8/完結)

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          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(7)

          デジタルデータが保管対象の「資料」となる時代  高度情報化社会と言われ30年あまり。デジタルデータも美術館や博物館が保管対象とする「資料」となってきました。博物館法でも明確な位置づけがあります。同法第二条4項には次のように記されています。 「4 この法律において「博物館資料」とは、博物館が収集し、保管し、又は展示する資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。次条第一項第三号において同じ。)を含む。)をいう

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(7)

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(6)

          インターネットでも「作品」を鑑賞できる良い時代になったけれども  現在では、インターネットを通じて美術館や博物館、公的機関が所蔵作品を公開するなど、日常的な光景になりつつあります。  日本では国立国会図書館NDLイメージバンク(※15)、国外ではルーブル美術館(※16)等の美術館や博物館が、インターネットで所蔵作品の公開を行なっています。その他の美術館や博物館、公的機関も、SNSを通じて所蔵資料や作品の情報発信をしています。現在では、インターネットにつながることさえできれば

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(6)

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(5)

          「昔のデジタルデータが読めなくなる」原因  なぜ、昔のデジタルデータが読めなくなるのか。前回まで述べたことから、デバイスとブラウザ、そして外部記録メディアの変化に原因があることが判ります。  デバイスには、デジタルデータを読み込みブラウズする(=表示して読める状態にする)パソコンやスマホ等の機器、そして、外部記録メディアを読み込む周辺機器等があります。データをブラウズするアプリには、データのブラウズに特化したアプリ(※14)のほか、そのデータを作成したアプリが含まれます。外

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(5)

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(4)

          外部記録メディアは変遷し「遠く」なる  私は、前回までに述べてきたような古いCD-Rのみならず、古いMOディスクも保管し続けています。「古い」というと、軽く20年は時を経ているものも含みます。  MOは大手家電量販店なら店頭販売していたものですが、それも過去のこと。現在の外部記録メディアとしては既に主流ではなく、未使用生産終了品がMOドライブとともに細々と流通している程度です(※10)。MOは大変使いやすかったのですが、私もいつしか時々使用する程度になっていました。MOは仕

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(4)

          安直かよ 大阪府、地下駐車場保管作品をデジタル化で処分とか(3)

          「VirtualBox」で「Monterey」に「Leopard」環境を構築…できなかった  さて、前回の続きです。今回は、アプリを利用して、APFSのOS「Monterey」のMacにHFS読み書き可能のOSの仮想環境を構築し、そこでHFSのCD-Rを読み込ませるのが可能かを実験してみます。今回使用するアプリには「VirtualBox」(※9)を選びました。そして、仮想環境のOSは、10.5「Leopard」にしました。このOSは、私が以前使用していたノートの保管してあっ

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