【58歳、就活がんばる!!】 #完 がんばった!!
「人生はきっと流星群からはぐれた彗星のようなもので
行き着く場所なんてわからないのに
命を燃やし続けるんだよ
だから、だから十年後のお前は
今のお前を余裕で笑い飛ばしてくれるって
十年後の俺は今の俺を笑い飛ばしてくれるって
間違いないよ」
いよいよ初出社日が明日に迫った。緊張していないこともないが、同時に不安、諦め、後悔、妬みなど、いろんな感情が心の中で渦巻いていて、もう何がなんだか分からない状態というのが正直なところ。赤、青、黄といろんな色を混ぜていくと、最終的に黒になるみたいな感じだ。どの感情が強いというのはなく、平常心ではないということだけは言える。
根がスーパーネガティブだし、超人見知りなので、実は新しい環境になるのは嫌だったりする。
「自分が思っているような仕事内容だったらどうしよう」
「初めての人と上手く話せるかな?」
「組織に馴染めるのか?」
…と逃げ出したくなるくらい不安なのだが、そんな甘えたことを言えるのはせいぜい十代までで、内心では思っていても還暦前のジジイは弱音を吐けない。生活費を稼がないといけないわけだし。ただ、そういった諦めを何度も経験してきた人生なので、腐っている自分に気づかないふりをするという、やり過ごす術を心得ている。
じゃあ、後悔は? 30年近く携わってきた音楽業界は、中学や高校時代の少年期の自分にとって夢の場所だった。相手の目を見て話せないようなコミュ障であるにもかかわらず、大好きだったアーティストやフェイバリットなビッグネームにインタビュー取材ができたのは、間違いなく「やりたい!」という強い想いと、音楽への情熱があったからだ。まさに、好きだからこそ続けられた仕事だった。エンタメ業界なんて、世間が休んでいる時が稼ぎどきだし、それを伝えるメディア側だから、かなり過酷な状態だったのに全然苦ではなかったしね。
そんな業界から足を洗うのは、当然のことながら悲しいし、切ないし、悔しい。フリーの編集者やライターの道もあるが、知り合いのライターさん達と仕事を取り合うのも嫌だし、衰退の一途をたどる音楽メディアの中で、椅子取りゲームに参加する気持ちは湧かなかった。知り合いの編集者連中はバリバリと仕事しているけれども、そこに自分の居場所がないのなら、もうこれは仕方ないことだ。素直に受け止めるしかない。
パンドラの箱ではないけど、ちゃんと希望も持っている。ネガティブな感情の渦の深いところにそれはあって、昔話でしかない過去ではなく、がんじがらめの現在でもなく、希望的観測かもしれない明るい未来を見ている。どうにもならないようでも、最後はどうにかなる。これまでの長い人生の中で、それは何度も経験してきたし、ちゃんとどうにかなってきた。だから、今回もちゃんとどうにかなる。業界は違えど、編集の仕事だし、ライティングもする。現役続行、まだ終わっていない。何と言っても、居場所を用意してくれている。新しい世界に挑戦するんだから不安になって当たり前じゃないか。人生何度目かの新章の始まりだ。
「早くはない 遅くはない 始めたら始まりさ
何度でも 何度目でも 始めたら始まりさ」
…というわけで、58歳の就活が終わりました。タイトル通り頑張ったし、『58歳、就活がんばる!!』もこれにて終了です。文章を書くのに、いい訓練になりました。そんなリハビリにお付き合いいただき感謝しております。いただいた“スキ”やコメントが励みになっていました。ご愛読ありがとうございました!
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